冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

Category [+ Battle Mermaid + 長編 + ] 記事一覧

スポンサーサイト

Battle Mermaid 22

  「狂鬼(キョウキ)の魔女―――…」 ガドットの絶望的な予感が一層強まる。 静まり返った洞窟に、ガドットの生唾を飲む音がやけに響いた。 狂鬼の魔女と呼ばれた老婆は、にたりと黒い笑みを浮かべて素知らぬ顔で言う。  「おやおや、海王ガドット様ともあらせられる御方が、  こんな老婆を覚えて下さっていたとは……嬉しいかな嬉しいかな……。」 ふぉっふぉっと笑う魔女に、ガドットの怒りが爆発した。 椅子の肘掛けを、壊れる...

Battle Mermaid 23

 ガドットの洞窟から無事に脱出する事が叶った魔女は、なんとも怪しげな笑みを浮かべ、 自宅である洞窟に体を滑り込ませる。 相変わらずの異臭と、不気味な液体や道具達のお出迎えである。 魔女は最奥の部屋へ赴き、小さな小さな瓶を手に取った。  「ふぉっふぉっふぉっ……時は満ちた……。  あぁ、何と素晴らしき魔力だ……触れているだけで気が狂ってしまう……。  さっきはガドットを前にひやりとしたが……殺されずに済んだわ...

Battle Mermaid 24

 そこには20人を超える人間の群れがアンデッドドラゴンを囲っていた。 イルイが刀を抜き、構える。続いてティスタも短刀を両手に一本ずつ持ち、構えた。  『行くぞ、ティスタ。』  『はぁい。』 険しい表情のイルイ、ぼんやりとした瞳のティスタ。彼等はどう見ても普通の人間だった。 腐敗ヵ所が少なく、臭いも薄い。 アンデッドドラゴンを倒そうと意気込んで向かった兵達は、 人間と見間違うた二人に見るも無惨に切り倒...

Battle Mermaid 25

 皇国『リムドア』 ―――… ネスは賑やかなその大国に到着していた。 東門から入り、武器や防具、薬品等の店が立ち並ぶ、皇国一賑やかな場所の一角、 別空間かという程、全く人気のない公園で、シェリルと二人で座っていた。 シェリルは今起きたばかりなのか、大きな目は虚ろで、カクカクと船を漕いでいる。 そんなシェリルを隣で小さく笑いながらネスは見ていた。  (面白ぇなぁ……あぁ目が潰れてる……あ、起きた。……あぁぁま...

Battle Mermaid 26

 麦藁帽子に白のタートルネック。 大きめの紫色したぼんたんの様なズボンに黄色のスニーカー。 統一感の欠片も、センスすらも見えないコーディネートに溜息を漏らしたのは、 後方で見ていた店員だった。ネスは至って真剣に選んだのだが、最悪のセンスである。 彼女と喧嘩勃発か……店員はそんな風に考えていたのだが。  「ありがとう、ネス!似合うかな?」 シェリルは満面の笑顔でそう言った。 後方で目を見開く店員を尻目...

Battle Mermaid 27

 人間達が集中するピーク時を過ぎ、だいぶ人の減った東通り。 ネスのおかげで洋服を手に入れたシェリルは、 歩きやすい靴と、ずり落ちないスカートに大満足だった。 ひらひらのスカートを深緑の髪と共に揺らす。 無邪気に喜ぶシェリルに、ネスの顔が思わず緩んだ。 だが、恥ずかしさを隠す為か、心なしつっけんどんにシェリルへ言う。  「シェリル、あんまはしゃぐとこけるぞ。  ただでさえ危なっかしい足取りしてんだか...

Battle Mermaid 28

  「これは魔国『ユグドラ』の品……。  魔国の連中はこれをまるで羽根の様に軽い代物だと言っていたんだ。  事実、魔国の上層部連中はこれを使ってひらひらと舞う蝶か何かの様な戦い方をしていた。」  「……まじかよ……。」 こんな重たい物を持って戦っていた事実に、ネスは驚愕する。 だが、驚くのはまだまだであった。 男は奥から鉄のプレートを持ちだす。 そして何を思ったのか重たい短剣を手に取り、鉄のプレートに向...

Battle Mermaid 29

 男の子はシェリルから少し離れた所で編み物をしている女の下へと走った。 シェリルはその光景を目で追う。  (お母さんなのかな……?) 仲睦まじそうに話すふたりを見、シェリルの心がちくりと痛んだ。  (……私のお母さんって、どんな人魚だったんだろう……。  一目でいいから、会いたいなぁ……。) 無理だと分かっていながら願う自分が馬鹿らしく、シェリルは自嘲の笑みを浮かべた。 と、その瞬間、聞き慣れた低い声が聞...

Battle Mermaid 30

 しばらくベンチで寛いでいると、先程の男の子が左手に何かを持ち、 右手で母親であろう女の手を引きながらシェリルの下へ走ってきた。  「こんにちは。」 女は優しげな笑みを浮かべ、柔らかい声を発した。 シェリルは慌てて立ち上がり深々と頭を下げる。  「こんにちは!」 シェリルの綺麗な声が辺りに響く。女は優しい笑みを絶やすことなく言った。  「休憩中にすみません。この子がお邪魔してしまった様で……。  私...

Battle Mermaid 31

  「椿の花です。」 小さな小さな声。今にも消えてしまいそうなその声をシェリルはしっかりと聞き届けた。  「つば……き?」 初めて聞く花の名前に、シェリルは首を傾げる。 ミュカルは切なげな表情を浮かべ、一言一言噛み締める様に言った。  「椿とは、ここより遥か彼方……東洋なる場所に咲き誇る赤い花のことです。  ティータの兄は、この椿の花が大好きで、よく愛でていました。」 シェリルはティータに兄がいること...

Battle Mermaid 32

 それからしばらく武器屋前で座り込んでいると、隣にある木製で出来た扉がゆっくりと開き、 聞き慣れた声がシェリルの耳をついた。  「おう、ありがとな。あぁ、おやっさんも風邪とかひくなよ?  ―――…あっはは、まぁ、おやっさん前だと細菌もウイルスも逃げ出すわな。  ―――…ぉぁっ、怒んなって!!―――…あぁ、また来る。んじゃあな。」 にこにこ顔で武器屋から出、新しい槍を片手にネスは静かに扉を閉めた。  「いい武器...

Battle Mermaid 33

 【来たれ、若人!!来たれ、武人!!!我等が皇国を守る為!己の欲望を満たす為!! その両手に武器を持ち……戦え!最強の戦士達!!】 そんな看板を表に掲げている皇国『リムドア』ギルド。 赤い煉瓦で作られているその建物は頑丈で、大きく、広い。 窓を除けば屈強な男達が楽しく笑い合い、酒を交わしていた。 そんな中に単身入って行ったシェリルを追い、ネスがギルドの中に入ると、そこには……  「だから、私も冒険者に...

Battle Mermaid 34

  「いい加減にするのは貴方の方です!!!!!!」 そう大声で言い放ち、ネスとディードリッヒの耳に大ダメージを与えたのはシェリルだった。 突進を止め、キンキンする耳を押さえるディードリッヒを前に、完全に怒った表情を浮かべ、 両手を思い切り広げ、ネスを守る盾となる。 シェリルはディードリッヒを睨み付け、沸々と湧き出る怒りをぶつけた。  「さっきから聞いてれば……酷いこと言い過ぎです!!  けなされる人...

Battle Mermaid 35

 受付用紙を記入しながら、ネスとディードリッヒの戦いをちらりと確認するシェリル。 よもや勝敗は決したも同然だと言うにも係わらず、 ディードリッヒは諦めることなくネスに向かっていった。  (なんであんなにネスを敵視するのかな……。) 悲しい気分になりながらも、シェリルは受付用紙の空欄を埋めていく。 不意に、シェリルの視界に何者かの姿が映る。 ゆっくりと顔を上げると、そこには店主アデットの姿があった。 ...

Battle Mermaid 36

 紙は正常に受理され、シェリルは晴れて冒険者となった。 小さな袋に入った支度金を受け取り、その支度金をそのままネスへと受け渡す。  「これだけじゃ足りませんよね。いっぱい働いて返しますからッ!」  「正直マジでいらないんだけど……。」  「駄目です。こういうのはキッチリしなきゃ駄目だってお父様が言ってました。」  「……お父様?シェリルはいいとこの出なのか?」 ネスの言葉に、シェリルはしまったとばかり...

Battle Mermaid 37

 残されたシェリルは、ネスの出て行った扉をじっと見つめる。 そんな様子に、シェリルの心を汲んだアデットは苦笑しながら言った。  「ほら、お嬢ちゃん、こっちにおいで。ネスの金でジュースを奢ってやろう♪」 その声に反応したシェリルはアデットへと視線を移し、再びじっと見つめる。  「……?お嬢ちゃん、どうしたんだ?」 不思議そうに首を傾げたアデットに、シェリルはゆっくりと近付き、にんまりとした笑みを見せた...

Battle Mermaid 38

 ネスは皇国を出た後、道なりにしばらく走る。 ハールウェンの森まで時間にして約1時間ほど。 だが、ネスの知る近道を行けば、30分ほどで着くのだ。  (ったく、あの馬鹿。腕は認めるが一人で行って勝てる保証なんてねぇだろうが。  あいつの二の舞になったらどうするんだっつの。) ネスはハクの顔を思い浮かべながら渋い表情を浮かべる。 しばらく走ったネスの目に、別れ道が見えた。ネスは迷う事無く左に進む。 しば...

Battle Mermaid 39

  「え~っと……こっち……かなぁ……?」 シェリルは二つに分かれた道の前で地図を広げ、小さく首を傾げていた。  「ぁぅぅ……地図の見方が分からないよぉ……。」 地図を貰いはしたものの、肝心の読解力がなく、シェリルは呆然と立ち竦んでいた。 左は綺麗に舗装された道。右は土がむき出しになった荒れた道だった。  (えっと……確かネスは女が歩くには~って言ってたから……右……かなぁ……?) シェリルは左右の道を交互に見比べ...

Battle Mermaid 40

  「ハクッ!!」 ハクは自分の耳を疑った。 声のした方向を恐る恐る見やる。そこには、懐かしい友人の姿があった。  「ネ……ス……?」  「ハク!大丈夫か?!って……お前、腹怪我してんじゃねぇか!!  っち……出血の量が酷いな……お前は少し休んでろ。俺に任せていいから。」 目を丸くするハクに構う事無く、ネスは槍を構える。 だが、その光景を見たハクは慌ててネスを止めた。  「馬鹿!!お前でもこの数は無理だ!!...

Battle Mermaid 41

  「いったぁぃ……あぅぅ……傷だらけだ……服破いちゃった……。」 木々がクッションになり、シェリルは死にこそしなかったが、 体には無数の傷が付き血を滴らせた。加えてスカートは破け、袖も引きちぎれている。 ネスに申し訳ない気持ちになりながらも、シェリルは状況を確認すべくゆっくりと辺りを見渡した。 何の変わり映えもない景色。上を見上げればそびえる崖。 そして今いる場所の真横も崖。崖から一段下の崖に落ちた様で...

Battle Mermaid 42

 戦況は一転した。 優位だったはずのアンデッド達は、突然の水攻めに成す術なく身を砕けさせられる。 そんな状況を、ただぼんやりと見ているハクとネス。 アンデッド達は最後の力を振り絞ってハク達に襲い掛かろうとするものの、 その前に体が水圧に耐え切れず、朽ち果ててしまう。 その光景を前に、ハクがネスに聞いた。  「……魔法……ってやつか?お前、いつ魔法使える様になったんだ?」 その言葉に、ネスは一瞬きょとん...

Battle Mermaid 43

 白銀の長髪を適当に下の方で結わえ、 深海の様な青色をした鋭い瞳を携えた一人の男がいた。 まさにシェリルが捜し求めていた人物、ハクで=リンウェイある。  「あ……」 出会えた感動からか、シェリルは思わず泣きそうになった。 だが、シェリルの事を知らないハクを前に突然泣く訳にもいかず、懸命に堪える。 無意味な沈黙が続いた。目の前に連れてこられた女を前に、ハクは小さく首を傾げる。  「……?何だこいつ……ネス...

Battle Mermaid 44

  「どうした?!大丈夫か!!?」 ハクの絶叫を聞き付けたネスが、草木を押し退け慌てて戻ってきた。 ネスの瞳に映るのは、涙目で小さく怯えるシェリルと、腹部を押さえて激しく悶えるハクの姿。 ネスは急いでシェリルの傍へと寄り、涙を拭ってやる。  「シェリル!何があったんだ?!!」 怯えるシェリルにそう聞くと、シェリルは震える体を押さえて言う。  「こ……この薬……かけたら……ハクさんが急に苦しみだして……!」...

Battle Mermaid 45

  「つまり、全ての元凶はその女にある……と、そういう事か?」 皇国『リムドア』を目前にし、ハクはシェリルを睨み付けながら言った。 シェリルの体がビクリと震える。ネスはやれやれと、深い溜息を吐きながら呆れた様に返した。  「まぁ、シェリルがいなけりゃ俺はまだ漁師してたろうな。  だが……遅かれ早かれ、冒険者に戻る気ではいた。それが早まっただけに過ぎない。  お前が良けりゃ、また一緒にタッグ組んでくれや...

Battle Mermaid 46

  「ふぇ……?」 見ると、少し汚れている真っ黒なコートがシェリルの体を包んでいた。 シェリルは無意識にコートを掛けてくれた主を見やる。  「ハク……さん……?」  「風邪は確かに迷惑だからな。ネスのを奪うな。俺のコートで我慢してろ。」  「あ、ありがとうございますッ!」 シェリルは恥ずかしそうに、けれども嬉しそうにハクに満面の笑みを見せる。 ハクは、ふんっと鼻を鳴らし、じっとシェリルを見つめた。 冷め...

Battle Mermaid 47

 皇国『リムドア』。 武器や防具、薬品や装飾品の並ぶ商店街の様な東門に、三人は到着した。 幾分気まずさのとれたネスは、シェリルに向かい言う。  「今からギルドに行って、仕事が終わりましたっていう報告をする。  今日からギルドの宿をとろう。んで、もう仕事はないからのんびりするといい。  シャワーも大浴場もあるから、好きな様に使っていい。  少し離れた位置にプールがあるんだが……あそこは男だらけだから行...

Battle Mermaid 48

 ハクが小間物屋に入り込んで少し経った頃、 シェリルはハクと少しでも打ち解け様と、後ろを振り返る。 だが、そこにハクの姿は無かった。慌てたシェリルはネスの服を掴み、早口で言う。  「ハ……ハクさんが神隠しにッ!!!!」  「へ?」 シェリルの焦った言葉につられ、ネスも振り向く。 当然見えないハクの姿に苦笑を浮かべ、ネスはシェリルを落ち着かせた。  「あいつ、突然ふら~っと消えちまうんだよ。どっかの店...

Battle Mermaid 49

   カラン カラン ―――… 小さな鈴の音を鳴らし、ギルドの扉が開く。 入ってきたのはネスとシェリルだった。 二人の顔を確認したギルドの店主アデットは、二人の帰りを心待ちにしていたかの様に 満面の笑みで出迎える。  「ネス!お嬢ちゃん!!無事だったんだな!いやぁ、よかったよかった!!」 楽しそうなアデットに、シェリルは『ただいま』と返し、ネスも同じ言葉を発する。 だが、ネスはアデットの傍に寄るなり、...

Battle Mermaid 50

 地下。 閉鎖された空間。 窓ひとつなく、埃にまみれた薄暗い部屋に、ネスとアデットがいた。 アデットは埃を軽く払い、ネスに椅子を差し出す。 ネスはその椅子を受け取り、深々と腰を掛けた。  「……で、ここに来るって事は何か聞かれたくない話でもあるのか?」 埃っぽい部屋を見渡しながら言うネスに、アデットは少しだけ考えて口を開く。  「……お前、あのお嬢ちゃんと何処で知り合ったんだ?魔国か?」 緊迫した雰囲...

Battle Mermaid 51

 ネスが地下から上がってくる、少し前―――… カランカランと鈴の音を鳴らし、扉が開く。 開いた扉から吹き込む風と共に、白銀の髪を揺らしながらハクがギルドへと入った。 リンゴジュースを飲んでいたシェリルは、ギルドの空気が一転するのを感じる。 不思議に思い辺りを見回すと、談話こそしているものの、 警戒する様な視線で何人もの男達がハクを盗み見ていた。  (……?……空気がピリピリしてる……。)  「……おい。」  ...

左サイドMenu

プロフィール

筱

Author:筱
初めまして。
管理人の筱 - シノ - と申します。

現在

『Battle Mermaid』

を綴っています。

どうぞ、
仲良くしてやって下さい!

BlogRanking
↑もし宜しければ、
ひと押しお願いします。

最新記事

最新トラックバック

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。