冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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愛しのサンタクロース 06

 シェリルはアデットと共にカウンターに入り、冷蔵庫から綺麗にラッピングされた紙袋を取り出す。
 アデットは嬉しそうなシェリルの顔に思わず頬を緩ませ、楽しそうに言った。

  「ほら、行って来い。」

 そう言ってシェリルの背を押そうとした瞬間、シェリルは振り返り、アデットに笑顔で紙袋を差し出す。
 きょとんとしているアデットに頬を赤らめて言った。

  「いつも美味しいお料理、ありがとうございます。
  今日だって忙しかったのに、これの作り方教えて下さって……本当に感謝しています。
  メリークリスマス!アデットさんッ。」

 少し恥ずかしかったのか、シェリルは呆けるアデットの手に無理やり紙袋を持たせ、
 赤い顔のままネスの下へと走って行った。
 アデットは手渡された紙袋を開けながら、嬉しそうな笑顔を浮かべる。

  「まさか俺の分まであるとは……。ははっ……嬉し過ぎだろ……これは。」

 アデットの瞳には、沢山入った色とりどりの綺麗な手作りクッキーが映っていた―――…



 シェリルはスカートを揺らしながらネスの下へと戻る。
 戻ってくるシェリルに気付いたネスは、小さく溜息を吐きながら言った。

  「だからシェリル……走るな。……その……見えるから……。」

 恥ずかしそうにそう言うものの、シェリルは全く聞こえていないのか満面の笑顔を振りまく。
 その笑顔に気の抜けたネスは、苦笑しながら言った。

  「さっきハクが帰って来たぞ。
  ここの空気が苦手みてぇで外に出ちまったが……多分、路地にいるんじゃねぇか?」

  「あ、そうなんだ。んじゃ後で行かなきゃっ。
  でも、その前に~……はい、ネス!いつも守ってくれてありがとう!メリークリスマス♪」

 シェリルは紙袋をネスに手渡した。
 訳の分からないネスは首を傾げながらそれを受け取り、
 次の瞬間、今日がクリスマスだということを思い出し、焦って言う。

  「えっ……あっ……クリスマスプレゼント……か……?」

  「うんっ!初めて挑戦してみたのっ!よければ食べてね。」

 ニッコリと笑ったシェリルを前に、
 ネスは自分がクリスマスプレゼントの存在を忘れていた事に気付いた。
 申し訳なさそうな表情を作り、シェリルの頭を撫でて言う。

  「わりぃ……俺、何も用意してねぇや……。」

  「ううん!こうやって、ネスと一緒にクリスマス過ごせただけで嬉しいよ。
  …………来年も、再来年も、ずっとずっと一緒にいてね。」

  「ッ……」

 頬を赤らめ、無邪気な笑顔で幸せそうに言うシェリルを見、ネスの顔が一気に赤くなる。
 えへへと笑い、シェリルは恥ずかしそうにネスの横をすり抜け、外へと出て行った。
 ネスはシェリルの幸せそうな笑顔を思い出し、騒がしい店内でぽつりと呟く。

  「……やっぱキスしときゃよかった……。」

 真っ赤に染まった顔を伏せて言った言葉は誰の耳にも届かなかった―――…



 外に出ると、雪は一層激しく振っていた。
 空を見上げれば満天の星に、大きな白い月。何処となく幻想的な雰囲気だった。
 シェリルは紙袋を大切そうに抱え、ギルドと隣家の隙間に入り込む。
 しばらく進むと―――…

  「ハク!」

 目的の人物を見つけた。
 ハクは煉瓦の上に座り、ぼんやりと空を仰いでいる。
 シェリルの声に反応し、視線だけ向けた。

  「なんだ?」

 相変わらずの感情の読み取れない声。
 シェリルはそれでもハクの傍により、紙袋を手渡した。

  「いつも迷惑かけてごめんなさい。いつも守ってくれてありがとう。
  メリークリスマス!ハクッ!」

 満面の笑顔を見せると、ハクは面倒臭そうな顔をしながらも紙袋を受け取った。
 礼ひとつ言わず、小さな音を立てて紙袋を開ける。
 様々な形をした、色とりどりのクッキーがハクの視界に飛び込んできた。

  「……。」

 何も言わないハクに、少しだけ不安になったシェリルは慌てて言う。

  「あ……甘い物苦手だったかな……?あのっ……不味かったら食べなくていいから!
  捨ててくれても、全然構わないからッ!!」

 そう言うものの、ハクはシェリルの声など全く聞こえていないかの様に、反応ひとつ返さない。
 しばらくクッキーを見つめたハクは、紙袋の中に右手を突っ込み、市松模様のクッキーを取った。
 そのクッキーは一口でハクの口の中へ収まる。
 ぽりぽりとクッキーを砕く音が辺りに響いていた。

  「……あ……の……美味しい……?」

 不安そうな顔で言うと、ハクは視界にシェリルを入れ、座れと指示を出す。
 シェリルはその指示に従い、雪の積もる煉瓦の上へ腰をかけた。

  「ほら。」

 そう言うと、ハクは一枚シェリルにクッキーを手渡した。
 シェリルはおずおずとそれを受け取り、ハクを見やる。
 ハクは紙袋からもう一枚手に取り、口へと運んだ。

  「……?」

 ハクの行動の意味が分からないシェリルは小さく首を傾げる。
 そんなシェリルに、ハクは面倒臭そうに言った。

  「……自分で食えば美味いか不味いか分かんだろ。」

 つっけんどんに言われた言葉に、シェリルは困惑気味に視界を泳がせ、
 顔をうつ伏せて言った。

  「あ……で、でも、ハクの口から聞きたい……かな……?」

 うつ伏せた顔を真っ赤にして言うシェリルに、ハクは小さく溜息を吐き、
 クッキーの握られているシェリルの右手を掴む。
 突然掴まれた腕にきょとんとするシェリルを置き、ハクはそのクッキーへ口を付けた。

  「ッ!」

 一瞬、自分の指にハクの唇が触れ、シェリルは驚きのあまり固まる。
 だがそれに気付いていないハクはシェリルの顔間近で、相変わらずの表情で言った。

  「不味かったら、俺は遠慮なく捨ててる。こんなに食わねぇよ。」

  「あ……。」

 あまりの近い顔にシェリルはハクを直視する事が出来ず、再び恥ずかしそうに顔を伏せる。
 しばらく微妙な沈黙が続き、ハクのクッキーを食べる音だけが辺りに響いた。
 その間も、サンタクロースの服を着たままのシェリルの体は、どんどんと冷えていく。

  「……くしゅんっ!」

 寒くなってきたシェリルは自分の右肩を擦り、温もりを得る。
 そんな様子に、ハクは感情のない声で突き放すように言った。

  「寒いなら戻れ。」

  「……ハクは戻る……?」

  「あの騒々しい中に戻るのはごめんだ。……戻るならお前だけで戻れ。」

  「……なら……ここにいる……。」

  「……。」

 突き離された言葉をもろともせず、寒さに耐え、シェリルはハクの傍に座り続けた。


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*Comment

NoTitle 

ああっ、ネスがかわいそうですよぉ。

報われない恋みたいになってますよぅ。

せつなよな、ネス。

ハクに負けるなよ~↑
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.12/19 00:11分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
ネスは不遇担当の子なのでいいのです☆
「か……可哀想……」って思わせるのがネスの狙いです!!(ぇ?

シェリルに思いを馳せるものの、一歩が出ず悲しい思いをしていまが、
自業自得です(笑)

シェリルの目を自分に向けさせることが出来るのか……。
作者も、いつの日か、ネスがハクに勝てると信じています♪
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/19 17:50分 
  • [Edit]

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