冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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愛しのサンタクロース 04

  「……ちっ……」

 口付けの交わされ様とした瞬間、ネスは小さく舌打ちし、シェリルの体を離した。
 ネスによってせき止められていた風が、シェリルの体を撫でる。
 困惑するシェリルに、ネスは先程と同じ立ち位置に戻り、壁に背を預けて言う。

  「誰か近付いて来る足音が聞こえた。最後の客になるといいな。」

 いつも通りのネスの声。
 シェリルは何も言えず、ただ首を縦に振り、弾け飛びそうな心臓を押さえた。
 寒かったはずの体は一気に熱くなる。動揺する気持ちを押し込み、落ち着かせていると、
 シェリルの耳にも足音が聞こえてきた。

 期待を込め振り返ると、まだ少し遠かったが、ネスと同じ黒髪に、ハクと同じ深い青色をした
 25歳前後の男が近付いてくるのが見えた。
 凛々しい顔立ちや清楚な服装から、それなりのいい身分である事が知れる。
 シェリルは近くまできた男に声を掛けた。

  「あっ、あの!冒険者に興味はありませんか?
  もし宜しければ、ギルドに加入してみませんか?
  気に入らなければ脱退する事も可能です。……どうでしょう……?」

 祈る様な気持ちでシェリルは男を見つめる。
 男は少し驚いた様な表情を作り、そしてそのまま視線を壁に寄り掛かるネスへと移した。

  「……?」

 深い青色の瞳は感情を読み取る事が出来ず、どこと無く危険な予感を感じさせる。
 だが、その予感に反して男は慈愛に満ちた優しげな笑みを浮かべ、シェリルの瞳を捉えた。

  「これはこれは……なんて美しいお嬢さんだ。まるで精霊の様だね。
  いや……『クリスマスの妖精』……の方が正しいのかな?」

  「……はぃ?」

 男の声は透明で、柔らかく、優しいものであった。
 だが、シェリルは男の言っている事が理解出来ず、首を傾げる。
 そんなシェリルに男は小さな笑みを浮かべて見せた。

  「ギルドも人員不足なのかい?ふふ……いいよ、ギルドに入ってあげる。ただし―――…」

 男はシェリルの白く華奢な肩に手を置き、笑みを崩す事無く言う。

  「今から私とデートしてくれるならね。可愛らしいサンタクロースさん。」

  「え……っそれは……困ります……」

  「じゃないと、ギルドには入らないよ?」

  「ッ……」

 男の非道な提案に、シェリルは顔をうつぶせ、切なげな表情を作る。
 そして、意を決した様に顔を上げ、真っ直ぐに男を見据えた。

  「分かりま―――」

  「シェリル、駄目だ。」

 了承の言葉はネスに遮られた。
 ネスはシェリルの肩を優しく持つ男の手を払いのけ、目の前に立ちはだかる。
 金色の瞳で容赦なく男を睨み付けて言った。

  「傍に俺がいると分かっていてナンパとはいい度胸だな。」

  「くすっ……ごめんよ。あまりにもその子が可愛かったから、つい。」

 楽しそうに笑う表情とは裏腹に、目は笑みを作らず、ネスの体や顔を舐める様に見ていた。
 その視線にネスは軽い悪寒を覚える。

  「お前、なんか気持ちわりぃな……。
  まぁいい、こいつはお前とデートはしない。変な勧誘して悪かったな。さっさと消えろ。」

 そう言うと、男は少しだけ目を見開き、考え、ネスに聞く。

  「君は何故その子を守るの?
  ギルドの連中って、野蛮で自己中で、他人を殺す事に抵抗がないんだろう?
  そんな人種も、やっぱり女の子は守るの?」

 男のあまりにも偏った考え方に、ネスは深い溜息をついて答える。

  「お前、ギルドをなんだと思ってんだ……?ここは殺人集団の集まりじゃねぇんだ。
  ここにいる奴らは確かに荒い奴らが多い。喧嘩好きもいるし、狂人もいる。
  だが、お国が争いばっか起こして生まれたアンデッドドラゴンを殺す為に命賭けてんだよ。
  まぁ、名誉や金が欲しくてって奴もいるがな。」

  「……君は?君は何の為にアンデッドドラゴンと戦うんだい?」

  「……お前に言う必要があるのか?」

  「ないね、興味本位だ。」

 飄々と言う男に、ネスは訝しげな顔をしながらも、
 言わなければ絶対にこの場から動かなさそうな男を睨み付けて返す。

  「……守る為だ。仲間をな。俺の仲間はアンデッドドラゴンを殺すと息巻いてる奴だ。
  だから、そいつを、そして仲間であるこの子も守る。それだけだ。」

  「……へぇ……そういう奴もいるんだ…………ったく、あいつら、嘘吐きやがって……。

  「……?」

 ネスは男の言った最後の言葉がよく聞きとれず、首を傾げた。
 男は右手をパタパタと振り、なんでもないよと返した。

  「いいねぇ、ギルドの為に懸命にメンバーを集める女の子。
  そして、仲間の為に命を賭ける事の出来る男―――…最高だね。」

  「……何が言いたいんだよ?」

 楽しそうに笑う男は、ネスと、ちょこんと顔を出すシェリルを見て言った。

  「登録する。ギルドに。……それに、その女の子とのデートなんて、はなから興味ないしね。」

  「……は?」

 へらりと笑った男は、冷めた目でシェリルを見た後、ネスに熱い眼差しを向ける。
 ネスの背筋が一気に逆立った。

  「俺は女の子に興味はない。
  その娘を口説けば君が出てきてくれるかなぁって思ったんだよ。
  あぁ……君、物凄く素敵だ……。とてもカッコいい……。」

  「は……?ちょっ……な……ッ?!」

 そう言うと、身の危険を感じ逃げようとしたネスの腕を取り、思い切り引き寄せる。
 見かけの細い体からは想像出来ないほどに強い力だった。
 完全に油断していたネスは腰に腕を回され硬直する。
 男はネスに顔を近づけて熱烈と語った。

  「この金色の鋭い瞳……獣の様な獰猛さと、宝玉の様な美しさを兼ね備えているね。
  あぁ……何て綺麗なんだ……。サラサラの黒髪……褐色の肌……鍛え上げられている肉体……
  全てが魅力的だ……何て男らしい―――…」

  「きっ……気持ちわりぃんだよ、死に晒せッ!!!!!」

 自分の髪や顔を這う男の細い指に耐え切れず、ネスは背から槍を引き抜き、手加減などなく、
 むしろ殺すかの勢いで思い切り男目掛けて振り下ろした。
 だが、男はその槍を見切り、後方にひらりと跳び、かわす。
 避けられたことにも驚いたが、それにも増しておぞましさが勝った。
 ネスは鳥肌の立った両腕を摩る。そんなネスを見ながら、男は楽しそうに笑った。

  「ふふ……照れ屋さん♪」

  「うゎぁぁ……男色かよ……初めて見た……お前、マジで俺に近付くな。」

  「嫌だ。俺は君に惚れた。」

  「お断りだ!」

  「ふむ……はっきり言われてしまったね……でもいいさ。
  俺はギルドに登録するし……君とはいつでも会える♪
  あぁ、俺はテディエトール。テディでもテディルでも、好きな様に呼んでくれたまえ。」

  「ぜってぇ呼ばねぇ……。」

 テディはくすくすと笑いながら、紙とペンの置いてある机まで歩き、
 軽く雪を払って登録をした。
 ネスは背に槍をなおし、げんなりとした顔を拭い、優しい表情でシェリルに言う。

  「ったく……まぁ何はともあれ、これで目標達成だな。
  シェリルのおかげでギルドの支援金が守られた。本当にお疲れ様、シェリル。」

  「う、ううん!最後はネスのおかげだし……私何もしてないよっ。」

  「んなことねぇよ。……アデットが散々な格好させてすまなかったな。
  すぐギルドに入って温まろう。風呂にでも入ってくるといい。」

  「うんっ!」

 シェリルは寒そうに手を擦りながらも、満面の笑顔をネスへと向ける。
 すると、テディがシェリルとネスを引き裂くかの様に割り込み、シェリルへ紙を渡した。

  「はい、これでいいよね?んじゃ、俺と……ネス……だったね?を二人きりにしてくれない?
  これから大人の時間が―――…」

  「さ、シェリル行くぞ。」

  「えっ?は、は~い……?」

 うっとりとネスを見つめるテディの視線を一切無視し、
 ネスはシェリルの手を引いてギルドへと入って行った。
 テディは小さく笑いながら、誰に言うでもなく呟く。

  「いいなぁ、ネス……最高だ。っと……それどころじゃないな。
  ……全く……あいつら、俺が知らないからって好き放題いいおって。
  これのどこが、優しさの欠片も存在しない化け物の集団だ……。
  ったく、すぐ訂正案を出さなければな。はぁ……面倒だ……仕事ばかりが増えていくな……。」

 テディはギルドには入らず、そのまま暗闇の街道を抜けて行く。
 外には出しっぱなしにされた机がひとつ、寂しそうに雪に埋もれていくのだった―――…


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*Comment

NoTitle 

ぐふぇあああああああああああああああああああああああああ
ネスぅうううううううううううううううううううううううううううううううっ

ぐふぁああああああああああああああああああああああああ
ごほごほっスミマセンっ
毎回の如く叫んでしまいました~
ま、ネスはカッコいいから男の人にも人気あるんだね、ウン!!
テディ、あんたナイスだよ~さすが50人目
ホント面白いです!!
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/16 22:14分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
み、見てしまわれましたね……?
叫び過ぎて喉を壊さぬよう、ご注意下され(汗)

テディはネスを気に入ってしまったようですねぇ……
目の前に絶世の美女がいるというにも関わらずネスとは……
相当な物好きのようです(´゚д゚)
テディは男らしい男が好きなようで、たくましい体をした精悍な顔を持つネスは、思い切り獲物でしょうね!!
テディの毒牙にかからない様祈るばかりです★

シェリルと良い雰囲気だったにもかかわらず、
最悪な気分となったネスの心境をお察しせざるを得ないです(笑)

面白いだなんて!
そんな風に褒められちゃうと、調子乗っちゃいますよ!?
とりあえず、嬉し過ぎて目から透明な液体が出てるのを止めて下さい(´っ∀;`)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/16 23:18分 
  • [Edit]

NoTitle 

ふがぁああっ!

なんかいるぅ!

ネス、気をつけて!

危ないよ、夜道とか!
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.12/16 23:36分 
  • [Edit]

こーんばーんわー! 

うわあ卯月好みのヘンなひとがぁあああああああああああ~~~~~~~~~~っ(*´∀`)σσσσ)´Д`*) ドルルルルルル・・・❤❤❤

しかもたぶん、テディって…めちゃくちゃイイご身分のあの方なんじゃ…!とか、思ってみたりして(*゚∀゚)どうかなー?ドキドキ
卯月の読みがあたっていた場合――皇国ほんとうに大丈夫なのか!? さまざまな意味で!(笑)

前話でのネスの強烈なアプローチといい、クリスマス企画バンザイです(ノ≧▽≦)ノ❤ 
それにしても、どこに行っちゃったんだ、ハク(笑)
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.12/17 21:12分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
この男は、ネスの攻撃をかわすくらいの奴ですから、なかなかの腕前ですよ……ッ!
もしかしたら、ネスも夜道は危ないかも知れませんね(笑)

しかし……変な奴に好かれたものですね(*´д`)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/17 21:24分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
う、卯月様好みの変な人に認定されてしまいましたか(笑)
テディは綺麗な顔してるんですけど、おなごに興味がないようです(*´д`)

おぉっ……卯月様、分かってしまわれましたか……!?
ふふふ……どうなのでしょうね♪
卯月様の読みは当たっているのか否か!!

サンタ衣装に魅了されたネスが、
シェリルのあまりの可愛さに暴走を起こしてしまいましたよ……。
ホント、ハクは何処に行っちゃったんでしょうねぇ……。

おぉぉぉっ!クリスマス企画万歳していただけますか!
そう言って頂けると、とてもうれしいですッ!
ありがとうございます!!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/17 21:30分 
  • [Edit]

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