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2009.12/15 [Tue]
愛しのサンタクロース 03
「皇国『リムドア』ギルド、現在新規生募集中ですッ。
一緒に冒険しませんか?皆さんとお友達になりたいですッ是非入って下さ~いッ!」
ギルド前でそう叫び続けるシェリル。
そしてその目の前には―――…
「嘘だろ……」
ハクが思わず口に出す程の行列が出来あがっていた。
その光景には、ネスも思わず目を見開く。
シェリルは一人一人丁寧に対応しながら、受付を済ませていく新規冒険者に笑顔を振りまいた。
「ありがとうございます♪」
「いやいや、全然構わないよ。
しかし冒険者ギルドにこんな可愛い女の子がいるとは思わなかったなぁ~。
そのサンタの衣装、なかなかにエロいね。」
「あはは……これしかなかったらしいので。すみません……。」
「ううん、充分似合ってる。なんならずっとそのままでも―――…」
男はそこまで言って言葉をつぐんだ。
シェリルの後方から鋭い殺気を感じたからだ。
恐る恐る視線をやると、
そこには二人の男が気安く声をかけるなとばかりに苛立った表情をして立っていた。
シェリルに声をかけた男はシェリルに促されたまま、それ以上何も言わずにギルドへと入って行く。
ネスとハクは寒い中、シェリルにさりげなく触れていく男達を睨み付けながら、
ただただ堪える時間を過ごした―――…
行列を掃けた時には時計の針は16時を回っていた。
シェリルの頭には薄らと雪がかぶり、手も肩も足も冷え切っている。
一息つくことの出来たシェリルは、大きく伸びをし、もうひと頑張りと気合いを入れた。
と、その時、ギルドの扉が開き、アデットがホットコーヒー片手に姿を見せた。
「お嬢ちゃん、コーヒー入れてきたぞ。」
「アデットさん!ありがとうございます~ッ。」
「いや、礼を言うのはこっちだ。本当にありがとう。寒ぃ中、こんな格好させてすまねぇな。
……あぁ……完全に冷え切っちまってる……いったん、中入るか?」
アデットがシェリルの肩を摩ってやり、優しく言うが、シェリルは小さく首を左右に振った。
「平気です。アデットさんの入れて下さったコーヒーと、アデットさんの手で温もったので、
まだまだ頑張れますよ♪それに、後10人です。もう少しですから。」
シェリルはアデットの温かい手を取り、自分の頬に当てる。
人間の体温がシェリルの頬にじんわりと伝った。
「アデットさんの手、あったかいです♪」
「ッ……お、俺はそろそろ戻るぞ……。が……んばってくれ……。」
シェリルの無邪気な顔にアデットは珍しく赤面し、慌ててギルドへと戻って行った。
シェリルはアデットの慌てる様に首を傾げながらも、
『頑張ってくれ』の言葉に気合いを入れ、再び叫ぶ。
「皇国『リムドア』ギルド、現在新規生募集中ですッ。
一緒に冒険しませんか?皆さんとお友達になりたいですッ是非入って下さ~いッ!」
可愛らしいサンタクロースの声に耳を奪われ、ちらほらと集まる男達。
寒さなど感じていないかの様な満面の笑みと、丁寧な対応に、
男達は文句ひとつつけることなくギルドへ足を運んだ。
そして、残すところ三人となった時―――…
「は……くしゅんッ……くしゅんッ!」
時刻は18時を回り、日はだいぶ暮れ、次第に辺りはライトアップされていく。
昼間より温度は格段に下がり、冷たい風と雪が冷え切ったシェリルの体をさらに冷やした。
「くしゅんっ……」
そんな後ろ姿を見ながら、シェリルと共に外での時間を共有したハクとネス。
ネスは心配そうにシェリルを見つめていた。
が、ハクはおもむろに立ち上がり、小さな欠伸を浮かべてネスに言う。
「飽きた。ちと散歩してくるわ。」
「はぁ?シェリルが頑張ってんのに飽きたはねぇだろ。」
あまりにも理不尽な発言にネスは鋭い視線をやった。
だが、ハクはその視線をさらりとかわし、冷たく言い放つ。
「こんなつまらねぇことに昼から今まで付き合ったんだ。少しくらい自由にさせろ。
俺はお前と違って気が長くねぇんだよ。」
「……ちっ……好きにしろ。」
ハクに何を言っても無駄だと悟っているのか、ネスはそれ以上ハクを引き留める事はなかった。
ハクは礼ひとつすることなく、その場から離れて行く。
ネスはハクの後ろ姿から目を逸らし、シェリルへと視線を移した。
「ありがとうございます♪」
屈託のない満面の笑みで接客するシェリルは小さく震え、
時折冷え切った手に自分の息を吹き掛けていた。
いたたまれなくなったネスは、人がいなくなった頃を見計らい、シェリルに声を掛ける。
「……シェリル、後何人だ?」
シェリルはネスの声に振り向き、笑顔で言った。
「後一人です!……でも、人が全くいなくなっちゃいました……。」
辺りには昼と違い人の全く通らなくなった道が広がる。雪が少しずつ足跡を消していった。
ギルドのあるこの道は夜になると、皆、粗野な冒険者を恐れ、近付かないのだ。
シェリルは悲しそうな顔を浮かべ、誰もいない道に小さな声で言う。
「後お一人様、入ってくれませんか~……?」
誰にも届かない、あまりにも切ない声に、
ネスは壁にもたれ掛かっていた体を立ち上がらせ、ゆっくりとシェリルに近付いた。
「どなたか……後お一人様でいいんです……。ギルドに入っ―――…て?」
疲労も重なりつつある小さなシェリルの体を、ネスは自分の胸に引き寄せ、
収まると同時に優しく抱きしめた。突然の出来事に、シェリルは目を見開いて固まる。
「頑張り過ぎだ。……誰か来るまで……俺の腕の中にいろ。……少しはあったけぇだろ。」
「ネ……ネス……?私、大丈夫だよ……ッ。あ、あの……恥ずかしぃ……から……。」
優しく、愛おしむ様に抱きしめられたシェリルは、顔を赤らめて上目遣いにネスを見る。
その表情に、ネスの顔も赤く染まった。
「こんなに冷えちまって、何が大丈夫なんだよ……。
ってかさ、その服ずるいよな……可愛過ぎだろ……。」
「ふぇ……?どっ……どうしちゃったの??ネスらしくないよ……?」
シェリルはネスの行動や発言に戸惑い、赤らめた顔のまま困惑した表情を表す。
ネスは少しだけシェリルを抱く手を緩め、シェリルと視線を合わせ、
少し甘えた様な、寂しそうな声を発した。
「……こんな俺は嫌いか……?」
その声に、シェリルは大きく首を左右に振る。
「えっ?!ちっ、ちがッ……突然の事だったから、驚いただけで……」
ネスの金色の瞳はしっかりとシェリルを捉え、
優しく、そしてどこと無く切ない表情を浮かべた。
「正直、我慢の限界だった……」
「え……?」
「シェリルがそんな格好で外にいるのも、他の男達と楽しそうに話してるのも、
体を触られてるのも……見ててマジで切れそうだった……。」
「ネス……?ほ、本当にどうしたの……?落ち着いて……。」
ネスは赤ら顔のシェリルから一切目を離そうとせず、
困惑するシェリルを少し強めに抱きしめて言う。
「シェリル……お前、無防備過ぎ。もう少し、警戒するって事を覚えろよ……。」
その言葉に、シェリルは赤い顔のまま小さな笑みを見せて言う。
「それは無理だよ……?」
「……何でだ?」
「だってハクとネスがいつも、どんな時も、どんな状況でも守ってくれてるんだもん。
警戒なんて無くなっちゃったよ。ハクとネスが傍にいてくれると凄く安心しちゃうの。」
「……シェリル……」
恥ずかしそうに顔を伏せたシェリル。
だが、ネスはシェリルの顎を軽く持ち上げ、低く心地好い優しい声で言った。
「そんな事言われると……我慢出来ねぇんだけど……。」
「え……?ねっ……ねす?!」
ゆっくりとネスの顔が近付いてくる。
シェリルは優しく輝く金色の瞳に捉えられ、体を凍らせたかの様に動けない。
ネスの近くなる顔に恥ずかしさのピークを迎えたシェリルは思い切り目をつむった。
だが……
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一緒に冒険しませんか?皆さんとお友達になりたいですッ是非入って下さ~いッ!」
ギルド前でそう叫び続けるシェリル。
そしてその目の前には―――…
「嘘だろ……」
ハクが思わず口に出す程の行列が出来あがっていた。
その光景には、ネスも思わず目を見開く。
シェリルは一人一人丁寧に対応しながら、受付を済ませていく新規冒険者に笑顔を振りまいた。
「ありがとうございます♪」
「いやいや、全然構わないよ。
しかし冒険者ギルドにこんな可愛い女の子がいるとは思わなかったなぁ~。
そのサンタの衣装、なかなかにエロいね。」
「あはは……これしかなかったらしいので。すみません……。」
「ううん、充分似合ってる。なんならずっとそのままでも―――…」
男はそこまで言って言葉をつぐんだ。
シェリルの後方から鋭い殺気を感じたからだ。
恐る恐る視線をやると、
そこには二人の男が気安く声をかけるなとばかりに苛立った表情をして立っていた。
シェリルに声をかけた男はシェリルに促されたまま、それ以上何も言わずにギルドへと入って行く。
ネスとハクは寒い中、シェリルにさりげなく触れていく男達を睨み付けながら、
ただただ堪える時間を過ごした―――…
行列を掃けた時には時計の針は16時を回っていた。
シェリルの頭には薄らと雪がかぶり、手も肩も足も冷え切っている。
一息つくことの出来たシェリルは、大きく伸びをし、もうひと頑張りと気合いを入れた。
と、その時、ギルドの扉が開き、アデットがホットコーヒー片手に姿を見せた。
「お嬢ちゃん、コーヒー入れてきたぞ。」
「アデットさん!ありがとうございます~ッ。」
「いや、礼を言うのはこっちだ。本当にありがとう。寒ぃ中、こんな格好させてすまねぇな。
……あぁ……完全に冷え切っちまってる……いったん、中入るか?」
アデットがシェリルの肩を摩ってやり、優しく言うが、シェリルは小さく首を左右に振った。
「平気です。アデットさんの入れて下さったコーヒーと、アデットさんの手で温もったので、
まだまだ頑張れますよ♪それに、後10人です。もう少しですから。」
シェリルはアデットの温かい手を取り、自分の頬に当てる。
人間の体温がシェリルの頬にじんわりと伝った。
「アデットさんの手、あったかいです♪」
「ッ……お、俺はそろそろ戻るぞ……。が……んばってくれ……。」
シェリルの無邪気な顔にアデットは珍しく赤面し、慌ててギルドへと戻って行った。
シェリルはアデットの慌てる様に首を傾げながらも、
『頑張ってくれ』の言葉に気合いを入れ、再び叫ぶ。
「皇国『リムドア』ギルド、現在新規生募集中ですッ。
一緒に冒険しませんか?皆さんとお友達になりたいですッ是非入って下さ~いッ!」
可愛らしいサンタクロースの声に耳を奪われ、ちらほらと集まる男達。
寒さなど感じていないかの様な満面の笑みと、丁寧な対応に、
男達は文句ひとつつけることなくギルドへ足を運んだ。
そして、残すところ三人となった時―――…
「は……くしゅんッ……くしゅんッ!」
時刻は18時を回り、日はだいぶ暮れ、次第に辺りはライトアップされていく。
昼間より温度は格段に下がり、冷たい風と雪が冷え切ったシェリルの体をさらに冷やした。
「くしゅんっ……」
そんな後ろ姿を見ながら、シェリルと共に外での時間を共有したハクとネス。
ネスは心配そうにシェリルを見つめていた。
が、ハクはおもむろに立ち上がり、小さな欠伸を浮かべてネスに言う。
「飽きた。ちと散歩してくるわ。」
「はぁ?シェリルが頑張ってんのに飽きたはねぇだろ。」
あまりにも理不尽な発言にネスは鋭い視線をやった。
だが、ハクはその視線をさらりとかわし、冷たく言い放つ。
「こんなつまらねぇことに昼から今まで付き合ったんだ。少しくらい自由にさせろ。
俺はお前と違って気が長くねぇんだよ。」
「……ちっ……好きにしろ。」
ハクに何を言っても無駄だと悟っているのか、ネスはそれ以上ハクを引き留める事はなかった。
ハクは礼ひとつすることなく、その場から離れて行く。
ネスはハクの後ろ姿から目を逸らし、シェリルへと視線を移した。
「ありがとうございます♪」
屈託のない満面の笑みで接客するシェリルは小さく震え、
時折冷え切った手に自分の息を吹き掛けていた。
いたたまれなくなったネスは、人がいなくなった頃を見計らい、シェリルに声を掛ける。
「……シェリル、後何人だ?」
シェリルはネスの声に振り向き、笑顔で言った。
「後一人です!……でも、人が全くいなくなっちゃいました……。」
辺りには昼と違い人の全く通らなくなった道が広がる。雪が少しずつ足跡を消していった。
ギルドのあるこの道は夜になると、皆、粗野な冒険者を恐れ、近付かないのだ。
シェリルは悲しそうな顔を浮かべ、誰もいない道に小さな声で言う。
「後お一人様、入ってくれませんか~……?」
誰にも届かない、あまりにも切ない声に、
ネスは壁にもたれ掛かっていた体を立ち上がらせ、ゆっくりとシェリルに近付いた。
「どなたか……後お一人様でいいんです……。ギルドに入っ―――…て?」
疲労も重なりつつある小さなシェリルの体を、ネスは自分の胸に引き寄せ、
収まると同時に優しく抱きしめた。突然の出来事に、シェリルは目を見開いて固まる。
「頑張り過ぎだ。……誰か来るまで……俺の腕の中にいろ。……少しはあったけぇだろ。」
「ネ……ネス……?私、大丈夫だよ……ッ。あ、あの……恥ずかしぃ……から……。」
優しく、愛おしむ様に抱きしめられたシェリルは、顔を赤らめて上目遣いにネスを見る。
その表情に、ネスの顔も赤く染まった。
「こんなに冷えちまって、何が大丈夫なんだよ……。
ってかさ、その服ずるいよな……可愛過ぎだろ……。」
「ふぇ……?どっ……どうしちゃったの??ネスらしくないよ……?」
シェリルはネスの行動や発言に戸惑い、赤らめた顔のまま困惑した表情を表す。
ネスは少しだけシェリルを抱く手を緩め、シェリルと視線を合わせ、
少し甘えた様な、寂しそうな声を発した。
「……こんな俺は嫌いか……?」
その声に、シェリルは大きく首を左右に振る。
「えっ?!ちっ、ちがッ……突然の事だったから、驚いただけで……」
ネスの金色の瞳はしっかりとシェリルを捉え、
優しく、そしてどこと無く切ない表情を浮かべた。
「正直、我慢の限界だった……」
「え……?」
「シェリルがそんな格好で外にいるのも、他の男達と楽しそうに話してるのも、
体を触られてるのも……見ててマジで切れそうだった……。」
「ネス……?ほ、本当にどうしたの……?落ち着いて……。」
ネスは赤ら顔のシェリルから一切目を離そうとせず、
困惑するシェリルを少し強めに抱きしめて言う。
「シェリル……お前、無防備過ぎ。もう少し、警戒するって事を覚えろよ……。」
その言葉に、シェリルは赤い顔のまま小さな笑みを見せて言う。
「それは無理だよ……?」
「……何でだ?」
「だってハクとネスがいつも、どんな時も、どんな状況でも守ってくれてるんだもん。
警戒なんて無くなっちゃったよ。ハクとネスが傍にいてくれると凄く安心しちゃうの。」
「……シェリル……」
恥ずかしそうに顔を伏せたシェリル。
だが、ネスはシェリルの顎を軽く持ち上げ、低く心地好い優しい声で言った。
「そんな事言われると……我慢出来ねぇんだけど……。」
「え……?ねっ……ねす?!」
ゆっくりとネスの顔が近付いてくる。
シェリルは優しく輝く金色の瞳に捉えられ、体を凍らせたかの様に動けない。
ネスの近くなる顔に恥ずかしさのピークを迎えたシェリルは思い切り目をつむった。
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し、しししししし篠さんっ?!!!!(〃口〃ノノ
ネスめぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
このこのこのっ、と肘でつつき倒したいくらいありますよ?!
ハクがいない間にっ!!
萌え死にしたのはいうまでもありません^^
ちょっ、シェリルちゃんの言葉にも、キュンキュンきちゃうじゃないですか><
素敵過ぎるゼ★な感じです
言動が限りなく壊れているのは、大目に見てください_(_)_
「だが」って!!
すっごい気になります~!!