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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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幸福ナ家庭 06

 ―――…

 全て話し終えた俺はゆっくりと結衣へと視線をやった。
 ぼろぼろと涙を流す結衣にかけてやる言葉が無かった。
 ……俺だってどうしたらいいのかが分からないのに、気休めの言葉なんて言えない。

  「穂……ッごめ……ごめんね……
  そんな大変な時に、一度も会いに行けなくて……ひっく……」

  「結衣……結衣が気にする事じゃないよ。そう……気にする事じゃないんだ……」

 結衣の涙につられ、俺の瞳からも涙が溢れた。
 今まで我慢してきたものが全て流れる様に……全く止まらなかった……。
 懸命に涙を拭う俺に、結衣は無理やり笑顔を作って言う。

  「穂!私……犯人見付ける!!」

  「は……?」

  「無実の穂がそんなとこに居るなんて考えられない!!
  絶対嫌!!穂は私の傍じゃなくちゃ駄目!!だから……私……ッ犯人捕まえる!!」

  「馬鹿っ!!んな危ない事―――…」

 意気込む結衣を止めようとした矢先、ガチャリと白い簡素な扉が開く。
 入ってきたのは無愛想な看守だった。

  「時間だ。行くぞ。」

 そう言う看守を、俺は無視して言った。

  「結衣、危ない真似だけはしちゃ駄目だ……お前まで死んだら俺……ッ
  発狂する……もう自分を保っていられなくなる……お願いだから……」

  「私は穂を守るんだもん……!」

 そう言ってガッツポーズを浮かべる結衣。
 不意に、腕に巻かれている包帯が俺の目に付いた。

  「結衣……?その包帯は……?」

  「ん?あぁ、これはちょっと擦りむいちゃって。」

 照れくさそうに笑う結衣。
 今の俺はこんなことすら……心配になってしまう。
 怪我をしないで……傷付かないで……俺の腕から落ちていかないで……
 もう失いたくない……何もかも……もう……もう―――…

  「ゆ―――…」

  「さっさと来い!!」

  「ッ!」

 手錠を引かれ、俺の言葉は出ぬまま終わった。
 無理やり部屋から出され、扉が閉められていく。
 俺は閉められていく扉の隙間から結衣を見た。
 結衣はただ……泣き腫らした目で、優しく笑って俺に手を振っていた―――…



   終身刑



 そんな不吉極まりない言葉が俺に突き付けられた。
 残虐?非道?人間性を疑う?情状酌量の余地なし?
 ……お前らが俺の何を知ってるんだ?俺はやってないのに?
 あぁ……もう何でもいいや……死刑でも終身刑でもいい……
 何をしたって凪は戻ってこないんだ……何をしたって……もう家族は戻ってこない……
 あの幸せな日々は……もう……

 罰を与えられてからというもの、俺は無気力に生きた。
 死んでるのも同じと言わんばかりに。一日中体を動かさなかった事だってある。
 ただぼーっと……格子の向こうから見えるオレンジ色の光を見つめながら、
 凪と母さんと、父さんの顔を思い浮かべる。

 どうして壊れたんだろう。俺らは何か悪い事をしたんだろうか?
 何かいけない事を望んだんだろうか?……笑って暮らせたら……それでよかったのに……。

 あの階段から落ちた凪を助けてくれたのが神だというのなら、
 凪を殺したのは悪魔か?神は……悪魔には敵わないのか?
 それとも……助けてくれるのは一度だけなのか……?
 あぁ……もう、訳わかんない―――…


 考えるのは意味の分からない事ばかり。
 無意味な事ばかり。もういっそ死んでしまおうかと何度も思った。
 でも、それは凪が許さない気がして―――…

 看守の聞くラジオで俺の事が流れる。
 妹を殺した凶悪な殺人犯として。

 母さんは悲劇のヒロインとでも言うかの様に、泣きじゃくりながら俺の事を語る。

  いい子だったのに とか
   妹思いな子だったのに とか
    優しい子だったのに とか ―――…

 ねぇ、母さん……何で全部過去形なの……?
 今は違う?……あぁ、違うよね……殺人犯だもんね……。
 だって……母さんが…………一番最初に疑ったんだもんね―――…



 一ヵ月 二ヵ月 三ヵ月 ―――…



 もう、考えることすら無くなった。
 泣きわめく隣の囚人、ぶつぶつと小言を呟く囚人……正直五月蠅い。

 じろりと睨み付ければ静かになる。
 さして根性も無いくせに何の犯罪を犯してきたんだろう。
 まぁ―――…どうでもいいか。


 俺が刑務所に入れられて丁度半年後―――…牢獄の扉が開いた。
 俺はやつれた瞳を扉へと向ける。
 無愛想な看守が俺に黙って手錠をかけ、引いた。
 抵抗する事無く、引きずられる様に連れて行かれる。

 一体何なんだろう……ついに死刑か?……そんな事を考えてた。
 けど、俺が連れて行かれたのは―――…

  「穂!!!」

  「―――…ゆ……い……?」

 愛しい人の側だった。
 結衣は泣き腫らした瞳を俺に向けて言った。

  「私、頑張った!私、超頑張った!!」

  「え……?」

 俺に抱きつく結衣の後ろで、一人のごっつい警察官が深々と頭を下げて言った。

  「今まで、すまなかった。君は無罪……釈放だ。」

  「は……??」

 精神が壊れる寸前で告げられた『釈放』の一言。
 わけが分からなかった。だって、半年も閉じ込められていたのに……。

  「穂、喜びなよ!!釈放だよ?!って、悪いことしてないから釈放もないけどさ……。」

 結衣がこの上ない程に嬉しそうな顔で言ってくる。
 でも俺は納得が出来なくて、結衣を優しく抱き締めたまま、警察官に聞いた。

  「犯人……見つかったんですか……?」

  「……あぁ。」

 その頷き方に違和感を感じ、俺は結衣の体をそっと離して警察官へ近付いた。

  「誰……?凪を殺したのは誰ですか……?」

 警察官は顔を伏せ、苦々しい顔を浮かべて、たった一言―――…
 俺が一番聞きたくない言葉を呟いた。

  「お前の、母さんだ。」


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*Comment

 

えぇぇ

まさかのお母さんですか・・・・。

穂への精神的ダメージがきつすぎるっ・・・。
  • posted by そのちー 
  • URL 
  • 2009.11/22 01:51分 
  • [Edit]

そのちー様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
そうなのですよ~穂のお母さんが犯人です!
妹失って、その犯人がお母さんなんて、
私だったら絶対に耐えられないお話です(´・ω・`)
穂はきっと発狂間近なのかも知れませんが、
横に結衣がいるから、きっと自分を保っていられるのでしょう。

もうすぐ終わってしまうお話ですが、
最後までお付き合い頂けると嬉しいです~(*´ω`*)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/22 10:37分 
  • [Edit]

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