冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 17

 辺りは完全に沈んだ日のおかげで暗闇となり、昼間でも冷たい風は一層冷たく感じ、
 静かな森は不気味さを増す。
 そんな中、しばらく歩いていると、小さな木で出来たログハウスの様な物が視界に入った。
 シェリル、ハク、ネスの三人はやっと着いたとばかりにログハウスへ向かう。
 中に入ると、大きなベッドがひとつだけぽつんと置かれ、
 数本の溶け掛けたロウソクが床に散らばるだけの簡素な部屋だった。

 ネスとハクは荷物を置き、大きく伸びをする。

  「はぁ……疲れた。さっさと飯にしようぜ。」

 開口一番、そう言ったのはハクだった。
 慣れない山道で体力を消耗したハクとしては、
 早急にご飯を食べ、眠りたいという欲求を叶えようと、ネスを急かす。

  「ちょっとは待てってば……シェリル、どっか怪我とかしてねぇ?
  痛いとことか無いか?靴ずれとかは?」

 ごねるハクを置き、ネスはシェリルに問う。
 が、ネスが手を引いていたおかげで、コケそうになった時でも支えを得たシェリルは、
 怪我ひとつなく、良く眠っていた事も重なり、今もなお元気だった。

  「平気だよ。ネスのおかげでコケなかったし、元気ッ。」

 その言葉に安心したのか、ネスは柔らかい笑みをシェリルへ向け、よかったとだけ言い、
 次はハクの欲求を満足させてあげる為にご飯の準備に取り掛かる。
 シェリルは手伝えることがあるかと聞いたが、休んでいろと返され、
 ネスの後ろにぽつんと座っているだけであった。

 数分後、無事にご飯も完成し、三人は空腹を満たすべく食料を胃へとかき込む。
 そんな中、シェリルだけはキャベツを兎か何かの様にポリポリと食べていた。
 ハクがシェリルに聞く。

  「お前、そんなんで足りんのか?」

  「え……あ、はい。」

  「……ふぅん……変な奴。」

  「あぅ……」

 ハクに一瞥されたシェリルは軽くうつむき、ひたすらキャベツをかじった。
 そんなシェリルに、ネスは苦笑を浮かべ、小さな可愛らしいトマトを差し出す。

  「ほら、野菜なら大丈夫なんだろ?」

  「あ……ネス……ありがと。」

  「いえいえ、ベジタリアンだって事は分かってたからな。」

 にっかりと笑ったネスに、ハクが呆れたように言った。

  「いつもより荷物が重いと思ったら野菜か……。
  ったく……本当にこいつに甘いんだから……。」

  「別にいいだろ?腹は減ってはなんとやら~ってな。
  シェリルが肉や魚を食えないのは承知してんだから、野菜持ってくるしかねぇだろうが。」

  「腹減りゃあ人間何でも食うんだよ。甘やかすな。」

  「んじゃ、今後荷物は俺が持とう。それでいいよな?
  その代り、ちゃんとシェリル引きつれて山登りしろよ?怪我させたら許さねぇからな。」

  「なんでそうなるんだよ……っち……本当こいつは面倒くせぇな……。
  だから女は嫌いなんだ……弱いし、鬱陶しい……。」

 苛立ったハクの口から放たれた無意識の台詞は、見事にシェリルの心を射抜く。
 だが、シェリルはそれを悟られまいと懸命に言った。

  「ごめんね……?明日は一人でも歩くからッ。……本当に……ごめんなさい。」

 明るく言ったつもりだったのだが、傷付いた心では無理があり、部屋の空気が重くなる。
 それを感じ取ったシェリルはいてもたってもいられなくなり、すくりと立ち上がった。

  「あ、あの!ちょっと外の空気吸って来る!!」

 必死に笑顔を作り、止めるネスの言葉を聞かずに外へと出て行ってしまった。
 残されたハクとネスの間に、先程よりも暗く、そして殺気すらも帯びた空気が包み込む。
 ネスがハクに冷たい瞳を向けて言った。

  「お前、言い過ぎ。」

 その言葉に、ハクは深く溜息を吐く。

  「……すまねぇ……さっきのは無意識だった。」

  「無意識であったとしても、言っていい事と悪い事がある。
  シェリルはちゃんと歩いただろうが。女が山道歩くなんざ、疲労は相当なもんなんだぞ?
  ……それにな、お前に言ってなかったが、シェリルはどうも歩き方がおかしいんだ。」

 ネスは金色の瞳でハクを睨み付けて言う。
 そんなネスの言葉がよく解せず、ハクは首を傾げた。

  「……は?」

  「気付かなかったか?
  今でもそうだが、なんか歩くのに慣れてない感じがするんだ。
  やけにつまずくし、手を離せばふらふらと一直線に歩けやしない。
  歩くスピードだって普通の女で考えりゃ、かなり遅い。
  初めて会った時だって、産まれたての小鹿みたいな千鳥足してた。
  障害でもあるのかと思うくらい歩き方が下手だったんだよ。
  最初の頃に比べりゃ、だいぶマシになったが……
  もし何かあるなら、無理やり歩かせるべきじゃねぇんだ。」

  「……。」

  「それにシェリルは右目が無い。
  何をどうやってあぁなったのか知らねぇが……片目だと距離感も測れない。
  それにプラスであの足だ。……俺に言わせりゃ、よくついてきた方だと思うがな。」

 ご飯を食らいながら、ハクはネスの話に耳を傾ける。

  「ちょっと甘いくらいでいいんじゃねぇの?
  ……てか、甘くないとシェリルはこれから先、泣き言ひとつ言わず、
  必死についてくる気がする。……厳しいまま、無理させ過ぎると、壊れちまうよ。
  ま、お前が厳しくても俺が甘やかすけどな。」

 にひひと笑うネスを前に、夕食を食べ終えたハクは無言で箸を置いた。

  「…………外、行って来る。」

  「行ってらっしゃい。」

 特に止めることもせず、不機嫌に立ち上がるハクへ向けてやる気なく手を振る。
 無音の空間がネスを包み込んだ。

  (ハクも少しは素直になったもんだな。シェリルの効果か……。
  ……う~ん……何だ、このもやもやする気持ちは……。
  何か、納得いかねぇんだよなぁ……。)

 心にわだかまりを持ち続けるネスは、晴れない気持ちを胸に、
 ちびちびと夕食をお腹の中に片付けていった―――…


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*Comment

NoTitle 

ハクは、ずっと素直じゃないほうが、僕は好きかも知れないww


素直じゃないキャラも、必要ですょ~

欠かせない存在かと。



たまに正直だったりすると、うれしいわけですww

そういう、たまぁ~に がすきですw


  • posted by そのちー 
  • URL 
  • 2009.12/21 21:28分 
  • [Edit]

NoTitle 

こんにちは!
コメントありがとうございます。

トラブル吸引体質に反応嬉しいです。
主人公だからなにか一癖~、と思って考えたのがこれでした…♪

わたしも今から書くのが楽しみです。
筱さんの自前キャラも楽しみにしてます!
  • posted by 秋野白亜 
  • URL 
  • 2009.12/22 19:14分 
  • [Edit]

こんばんわ! 

ネス~~~~~っ、シャリルとハクの仲を全力で取り持っちゃってる! そりゃもやもやしちゃうよネス!! でもそんなところが好きっ(*ノωノ)キャー❤

それにしても、シェリル、省エネでヘルシー…卯月は野菜があまり好きではないので、一緒にいたらいくらでもサラダをあげちゃうのにっ>< Σおいっ;

  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.12/24 21:51分 
  • [Edit]

NoTitle 

2012年に何が起こるか並みに重要なおしらせがあります。小説にコメント、すいません・・・。
ブログ存続に影響する大事なおしらせなんで、園田文庫までお手数ですがご訪問お願いします。
1月7日の記事に掲載されておりますので、よろしくお願いします。
  • posted by √†そのちー†Σ 
  • URL 
  • 2010.01/08 00:05分 
  • [Edit]

 

体調でも崩されたのでしょうか?

最近更新がないので心配しております。

復活待っておりますのでゆっくりとマイペースに更新してくださいね。
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2010.01/11 20:15分 
  • [Edit]

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