冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Battle Mermaid 13

    トゥルルルルル …… トゥルルルルル …… トルルル  ガチャッ

  『はいはい、こちら皇国『リムドア』ギルド。店主のアデット=リデアです。
  どちらさんでございましょう?』

 聞き慣れた声。
 その声に、メディアーナは震えた自分の声を抑え、現状況を報告しようと口を開く。

  「こちら魔国『ユグドラ』ギルド店主……メディシス=アーザ。
  アデットさん……。」

  『おう、どうしたメディ。なんか暗いぜ?何なら俺が今から慰めに―――…』

  「結構です。」

  『そ、そうか……。』

 こちらの緊迫した状況など知る由もないアデットのお気楽な言葉に、
 メディアーザは少しだけ緊張が解れた。そして、落ち着いた声で言う。

  「アデットさん、よく聞いて下さい。」

  『……なんかあったのか……よし、聞こう。』

 アデットの返答を待ち、メディアーザはぐるりとギルド内を見渡す。
 そして声が漏れない様、壁を向き小さな声で噛み砕いてアデットに説明を始めた。

  「魔国『ユグドラ』ギルドが、アンデッドに強襲されています。
  現在、ギルドの魔法使い達が応戦……結果はまだ分かりません。
  ギルド一の魔法使い、フィオラがいるので、壊滅はないかと思いますが……
  アンデッドの腕次第ですね……。そして、ここは貴方に最も聞いて欲しい事。」

  『……。』

  「今、ここを襲っているのは……最強アンデットの一人、ティスタ。」

  『!?……ティ……ティスタだと……?』

  「……やっぱり御存じなのね……。
  彼は皇国『リムドア』冒険者ギルドに所属していたと言ったわ。」

  『あ、あぁ……その名前に間違いがないなら、お前らが相手にしているのは、
  ティスタ=シルベルト……凄腕の暗殺者だ。
  もしそいつが完全な自我を持つ最強アンデッドなら気を付けろ……あいつは素早い。
  力こそないものの……確実に急所を捉えてくる技術がある。
  早急に逃げることをお勧めするぞ。』

 緊張の面持ちで言うアデットの言葉に不安を感じたメディアーザは、ゆっくりと竜巻を見やる。
 額に汗を流しながら怒りで魔法を放ち続けるフィオラを前に、切ない思いに駆られた。

  「でも、私はここの店主だから。彼女らのサポートはしなきゃならない。
  怖いから逃げ出すなんて……あり得ないわ。」

  『……。』

  「そして、もうひとつ凶報の連絡よ。
  ……最強のアンデッドが一人……イルイがそっちへ向かったわ。
  恐らく密航してくるから、漁港は閉鎖する事をお勧め―――…」

  『イルイだと!!?』

  「きゃっ……」

 言葉の途中に放たれたアデットの突然の大声に、メディアーザは思わず受話器を耳から放す。
 そして、文句言いたげに不服そうな声を出した。

  「な、何よ……」

  『あ……わりぃ……。そうか……イルイがアンデッドに……か……。』

 危機的状況と言わんばかりの声を出すアデットを勇気付けようと、
 メディアーザは出来るだけ声を明るくして言う。

  「あ、あの……そっちにも冒険者一の……ううん、皇国一の凄腕剣士がいるじゃない?
  えっと……確か、ハク=リンウェイだっけ?」

  『……あぁ……ハクの仲間、ネス=シアフォードも戻ってきたな……』

  「!……なら、大丈夫じゃない♪」

 安心した様な声をアデットの耳へ届ける。
 だが、一向にアデットの声は晴れず、それどころか暗さを増した。
 アデットは深い溜息を吐き、絶望とも言える声でメディアーザに言う。

  『無理だ……』

  「え……?何故?最強の冒険者が二人もいるんでしょ?」

  『あぁ……だが……ハクとネスにイルイは倒せないだろう……。』

  「……嘘……イルイってそんなに強いの……?」

  『……ハクに匹敵するぐらいだな。』

  「……?ネス=シアフォードもいるなら大丈夫なんじゃない?」

 きょとんとして言うメディアーザに、アデットは涙声とも取れる様な声を発した。

  『無理だよ……だって、イルイは―――…』

  「?」

  『あいつらの仲間だったんだからな。』


 ―――…


 続く沈黙が重苦しく、メディアーザは声を出す事が出来なかった。
 仲間同士の殺し合いなど想像するだけで辛いことである。

  「嘘……じゃ、ハクとネスは仲間を退治しなきゃってこと……?」

  『……そうなる。
  ハクと同じ技量を持ってやがるんだ……ここの奴らが束になったって勝てやしねぇ……。
  あいつを倒せるのは、ハクとネスだけだろう。
  もう一人敵いそうな奴がいるが……いつ戻って来るかも知れねぇ放浪者だ……。
  くそっ……なんつーことだよ……。
  しかもハクとネスは辺境の地にまで行ってやがる……しばらく帰ってこねぇ……。』

  「そんな!!今すぐ連れ戻す事は出来ないの!?」

  『……無理だな。もう出ちまってる事だろう……。
  ハクなら正規ルートしか知らねぇから、連絡係を出す事も可能だが、
  今回はネスがいる……。あいつは何かと裏道に詳しいからな……。
  どのルートを通っているのか、予測もつかねぇ……。』

  「嘘……ッ。アデット!今すぐ漁港を閉め―――…」

  「お姉さん、いっぱい喋ったねぇ。もうそろそろ満足でしょ?」

  「……え?」

  『……?メディ?どうした?』

 振り返ると、くすっと笑顔を浮かべるティスタがそこにいた。
 竜巻の中にいたであろう彼は、傷一つ負う事無く、カウンターテーブルに座り、
 楽しそうにメディアーザの会話を聞いていた。

  「なん……で……?」

  『おい、メディ?……応答しろッ!無事か?!』

  「くすくすっ、その声……アデットさんか。ちゃぁんと連絡するなんて、仕事熱心だね。」

 メディアーザは震える体を押さえ、視界をきょろきょろと動かす。
 その様子に、あぁと小さく声を発し、ティスタはテーブルから降りてメディアーザに近付く。

  「フィオラってお姉さん探してるの?くすくすっ……ほら、あそこで血、流してるよ?」

 メディアーザの視界からティスタが消える。
 次の瞬間、視界に飛び込んできたのは大量の血を流すフィオラの姿だった―――…


  + 次へ
  + 前へ

スポンサーサイト

*Comment

NoTitle 

ティスタ・・・
さすが暗殺者とも言うべきか・・・
仲間が敵に変貌してしまう。。。

イルイがまさか、ハク&ネスのあの仲間だったなんてっ?!
シェリルは二人を助けてあげられるのでしょうか!!
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/16 22:48分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
ティスタはやってくれやがりましたよ……。
しかも倒したのはフィオラだけじゃなかったり……。
けれど、ティスタはティスタなりに色々な思いを抱いていたりします♪
『自我を持つアンデッド』なので、イルイにもティスタにも存分に苦しんでもらおうかと☆(ぉぃ?

そう!イルイ、ハク、ネスは仲間だったんですよ~……
これは物凄く戦い辛い状況でしょうね(´・ω・`)
でも、そんな状況に嬉々としてタイピングを進める私はきっとSっ気があるのかもしれません★
イルイも、ハクも、ネスも、もっと苦しめばいいのに!!(ヤメロ…

シェリルは第二章では大活躍♪かもしれません!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/16 23:23分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

筱

Author:筱
初めまして。
管理人の筱 - シノ - と申します。

現在

『Battle Mermaid』

を綴っています。

どうぞ、
仲良くしてやって下さい!

BlogRanking
↑もし宜しければ、
ひと押しお願いします。

最新記事

最新トラックバック

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。