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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 11

 充分過ぎるほど魔国『ユグドラ』を歩き回ったティスタは、
 木造で出来た落ち着きあるカフェテラスでのんびりとティータイムを過ごしていた。
 肌寒さは否めないが、柔らかく降り注ぐ太陽の光が気持ち良い。
 アンデッドと化したティスタにとっては丁度よい気候であった。

  「はぁ……美味しい。ふふっ……今頃イルイは大変なんだろ~なぁ♪」

 可愛らしい顔で、苦労しながら密航するイルイの姿を思い浮かべる。
 心の底からの楽しそうな笑顔だった。
 だが、その愛らしい笑顔は一瞬で消え、カチャリと音を立ててティーカップを置く。
 ティータはきょろきょろと辺りを見回し、一人の女性店員を呼び止めた。
 女性店員はにこやかな笑顔をティスタへと向き、何でございましょうかと問う。
 ティスタも笑顔を店員へ向けて言った。

  「あのね、僕今から、魔国『ユグドラ』ギルドに行こうと思うんだけど、
  ギルドで一番強い人とかって……知ってる?
  知らなかったら全然いいんだけど、もし知ってたら教えて欲しいなぁ~?」

 甘える様な声で言うと、女性店員は少しだけ頬を赤らめ、それならと言って切りだした。

  「魔国『ユグドラ』ギルドの最強魔法使いはフィオラさんですね。」

  「ふぃおら……?」

  「えぇ、フィオラ=ルディシスさん。
  魔国きっての凄腕の魔法使いですよ。風魔法を主体にお使いになられる方でして、
  いつも元気で優しい人なんです。魔国のアイドル的存在ですね!
  怒っちゃうと周りが見えなくなるみたいですけど……その時の力も凄いんですよ♪」

 女性店員は充分過ぎるほどの情報をティスタへと与えた。
 ティスタは女性店員の話しに笑顔で頷きながらも、
 心の中でまだ見ぬ最強魔法使いへ思いを馳せる。

  (ふぅん……フィオラ……ね。どんな顔してるのかなぁ……。
  ……店員のお姉さん……アイドル殺しちゃうけど……ごめんね。)

 少しだけティスタの顔に影が落ちる。
 だが、女性店員はそんなティスタに気付かず、嬉々として我が国が誇る魔法使いの話をしていた。

 女性店員の話を散々と言っていいほど聞き、ティスタは勘定を済ませた。
 カフェから少しだけ歩き、大きく伸びをする。

  「さて、面倒な事はさっさと終わらせなきゃね。
  暇だったらイルイを手伝いに行ってやって恩を売るのもいいかも。」

 まるで悪戯を企む子供の様な黒い笑顔を作り、目指すべき場所へと歩いて行った―――…



 しばらく歩くと、まるで植物と一体化しているかの様な建物が見えた。
 壁には蔓が巻きつき、木造の茶色い建物のはずが緑色と化している。

  「……みぃ~っけ。」

 ティスタは、これから起こる惨劇に思いを馳せ、
 楽しそうに、けれども切なそうともとれる笑顔を浮かべた。


 ―――…


 ティスタが蔓の巻き付いた建物に入る少し前、丁度ティータイムをしている頃。

  「メディアーザさぁぁぁぁんっ!!」

 大声と共に蔓の巻き付いた建物の扉をこじ開け、入ってきた少女。
 さらさらの亜麻色の髪を振り乱し、赤みを帯びた茶色の瞳を
 カウンターで一服している女性へと向けた。

  「あら、フィオラ。どうしたの?ってか、ギルドのドアをそんなに力一杯こじ開けないで?
  壊れたらフィオラが直してくれるんでしょうね?」

 メディアーザと呼ばれたこの女性。本名はメディシス=アーザ。
 省略してメディアーザと呼ばれている。
 肩甲骨付近まであるウェーブのかかった赤い髪に
 緑の鋭い瞳が特徴的な女性で、この蔓の巻き付いた建物―――…
 魔国『ユグドラ』ギルドの店主である。

 そして、このメディアーザに呼ばれたフィオラという少女。
 本名はフィオラ=ルディシス。冒険者達の中ではアイドル的存在かつ、一流の冒険者である。
 そんなフィオラが、メディアーザの前にずかずかと歩み寄り、カウンターを叩き叫ぶ。

  「なんなのあの依頼!!!
  喋るアンデッド!?確かに喋ったわよ!!強くもあったわ!!
  でも、依頼と違って、技術の欠片も無かったわよ!?即行で沈んだわ!
  どこが最強のアンデッドなわけ?!
  大体……二匹とも容姿は至って美麗って書いてたけど……
  ぐっちゃぐっちゃだったわよ!!!!!!!!!!!

  「おうおう……ご立腹ねぇ……?可愛らしい顔が崩れてるわよ~?
  依頼の敵とは違ったのかしらね……喋るってどんな感じ?しっかり喋ってた?
  一人は、15程の男、一人は20越えの男……短刀と刀を持ってるって言ってたけど……」

  「はぁ!?刀?短刀!?んなの持ってなかったわ、爪でひたすら狙ってきたわよ!
  きっもち悪い顔でニチャニチャしやがってぇぇぇぇっ!!!
  うら若き乙女になんちゅー卑猥な笑顔向けてんのよぉぉぉぉぉっ!!!」

 フィオラは先程戦ってきたアンデッドの顔を思い浮かべ、かなりご立腹である。
 彼女は、最強のアンデッドを討伐を任せられ赴いたのだが、
 そこにいたのは、ただの『喋るアンデッド』だけで、最強とはかけ離れていたのだ。

  「はぁ……はぁ……」

 叫び疲れたフィオラは、とりあえずとカウンター席に座り、水をがぶがぶあおる。
 一息ついたフィオラにメディアーザは優しく言った。

  「まぁまぁ、たまにはいいじゃない。魔国ギルド一の魔法使いも、
  たまには軽くウォーミングアップしとかなきゃ、突然の事態に対応できないわよ?」

  「う~……まぁそうなんだけどさぁ……。
  どうせどんだけ練習したって、精霊や小人みたいな強さは手に入らないんだもん。」

  「あれは別格よ。人間じゃないんだもの。それにもう……あの子達は消えたわ……。
  ……私達のせいで……。」

  「……。」

 二人の間に重苦しい空気が流れる。
 戦争を経て失った精霊や小人。彼等の悲痛な叫び声や、泣き声がフィオラの脳裏に浮かんだ。

  「……戦争なんて……アンデッドドラゴンなんて……なくなっちゃえばいいのに。」

 少しだけ目を潤ませるフィオラに、メディアーザは微笑を浮かべて言った。

  「そうやって誰かが望んでさえいれば……きっと叶うわ。」

  「そうかな……?」

  「えぇ。」

 メディアーザの微笑みにつられ、フィオラも小さく笑顔を浮かべる。
 そんなフィオラを挟むように、二人の女性が座った。

  「フィオ♪ど~したの暗い顔して~……お姉さん悲しくなっちゃうな?」

  「エディ……」

  「そうそう、フィオラは笑ってる顔が一番なんだから!」

  「シーファ……えへへ……二人とも、ありがと♪」

 暗い表情をしていたフィオラを見兼ね、友人が励ましにきたのだ。
 二人の優しい心遣いに、フィオラの暗く沈んだ心が温かい思いに包まれる。
 と、その瞬間、ギルドの扉がこんこんと小さくノックされた―――…


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