冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 09

 肌寒いスラム街。
 家に設置されていたであろう窓など、どの家も破壊され、壁は崩れ穴が開く。
 そんな荒れ果てた場所の一角でシェリルとハクは仲良さげに眠っていた。
 ハクは壁にもたれかかり、シェリルはハクの膝の上で惰眠を貪る。
 だが、そんな気持ちの良い睡眠は、一人の男のせいで崩れる事になった。

  「……。」

 男は眠る二人の前に立ち、じっと見つめ、ゆっくりと膝を落とす。
 そして―――…

   むぎゅッ

 ハクのほっぺたを容赦なく、一欠けらの思い遣りすら持たない状態で、思い切りひねきった。

  「!!?」

 突然の激痛で目を覚ましたハクは、即座に剣を抜こうと腰に手を掛ける。
 だが、剣は老人に預けていた為、剣を掴もうと延ばした手は空気を掴む結果となった。
 まずいと思ったハクはとりあえず相手の顔を確認する。

  「……ぁ……」

 確認した瞬間、ハクは胸を撫で下ろした。そこにいたのは、敵ではなくネスだったからだ。
 ネスは不機嫌全開の顔でハクを睨み付けていた。

  「……ぁ、じゃねぇんだよ……。お前、いつまで俺を待たせりゃ気が済むんだ?え?」

  「いつまでって……今何時だ?」

  「13時半だ。」

  「……。」

  「……。」

 冷たい風がハクとネスの間をすり抜ける。
 ハクは初めて見せる様な引き攣った表情を浮かべ、ネスから視線を逸らした。

  「わ……わりぃ……。」

  「悪いと思うなら目ぇ見て謝れや。」

  「…………はぁ……本当にすまねぇ……。こいつ見てたら眠くなってきちまって……。」

 次はしっかりとネスの顔を見て謝ったハク。
 そしてそのまま目線をシェリルへと移す。
 いつ寝返りをうったのか、気持ちよさそうにハクの腰に手を回して爆睡していた。

  「……へぇ、この光景は珍しいな。」

 ネスは楽しそうに笑いながらハクに言った。ハクは勘弁しろよと言わんばかりに顔を歪める。

  「からかうな……。」

  「だってそうだろ?お前が誰かのいる傍で寝ること自体珍しい。
  大体、こんなとこで寝るなんてお前らしくもない。」

  「……まぁ……。」

 ネスにからかわれ、
 スラム街という危険区域で眠ってしまった自分の甘い危機感に苛立ちを感じたハクは、
 無償に八つ当たりしたくなり、眠ってるシェリルの頬を軽くつねった。
 その光景に、ネスは苦笑を浮かべる。

  「お前なぁ……自分が悪いんだろ?」

  「そーだけど、こいつが寝てなけりゃ俺は寝なかった。」

  「どんだけ俺様なんだよ……。ったく、そんな事ばっかしてるとシェリルに嫌われるぞ?」

  「…………。別に。」

  「……今、間があったけど?」

  「……。」

  「お前……意外と正直者だよなぁ……。」

  「うっせぇよ。……あぁ、いらつく……おい女!!いい加減起きろ!!」

  「……ん……ぅ……」

 何とか苛立ちを抑えようと、ハクは八つ当たりと分かりつつシェリルを揺する。
 それをネスが慌てて止めた。

  「馬鹿、起こすな。疲れてるから寝てんだろうが。」

 そう言うと、ハクからシェリルを奪うかの様に軽々と抱き上げ、
 少し起き掛けていたシェリルの頭を優しく撫でてやり、再び眠りの世界へ誘った。
 シェリルのいなくなったハクの太ももは風が通り、少しだけ冷たさを感じさせる。

  「……その女は寝てていいのに俺はひねきって起こされんのかよ……。」

 不服そうなハクに、ネスはにんまりと笑って言った。

  「あぁ。お前を起こすのには何の躊躇いもないな。」

  「疲れてたらどうすんだよ?」

  「んなの知るか。」

  「相変わらず男にゃ冷てぇんだな……。」

  「まぁーな。優しくしてやる意味がねぇだろ?同じ男なんだからな。」

  「……全員が全員お前みてぇに強くねぇだろうが……。
  大半の男はひ弱なもんだぞ?」

 溜息交じりにそう言い、ハクはゆっくりと立ち上がる。
 軽く太ももとお尻をはたき、煉瓦を蹴り、壁へと押しやった。

  「そんなの知らねぇよ。強くなれる性別に生まれて、強くなろうと努力しなかった奴が悪い。
  女は戦う種族じゃねぇだろ?」

  「……だがその女は魔法が使える。守ってやる必要はねぇんじゃねぇの?」

  「例えそうだとしても、シェリルを野山に放り出す事は出来ねぇな。
  ……なんつーか、アンデッド達に殺されることは無くても、孤独死しそうだ。」

  「……それはありそうだな。」

  「だろ。」

 ネスのにんまりと笑った顔に、ハクは小さく溜息を吐く。

  「武器、研いでもらってたんだ。貰って来る。
  ここが最後だから、貰ったら行こう。本当に待たせちまって悪かったな。」

  「おう、大丈夫だぜ。お前が今日の分の荷物持ってくれるならな?」

  「……。」

  「な?」

  「……分かったよ……持つ。……だから許せ。」

  「にっひひ、やりぃ♪」

 楽しそうに笑ったネスに、ハクは思わず苦笑を浮かべる。
 待ってろと言い残し、ハクは老人の家へと入って行った。
 取り残されたネスはシェリルの頭を撫でながら空を仰ぐ。
 そこには雲ひとつない青空が広がっていた。

  (ハクが誰かの傍で寝る―――…か……俺とあいつの傍以外考えられなかったのにな。
  ……シェリルは不思議な子だな。)

 青空からシェリルへと視線を落とす。
 何も知らずに、すやすやと気持ちよさそうな寝息を立て、ネスの肩に甘えるシェリルが見えた。
 ネスは優しげとも、切なげともとれる笑みを浮かべていた―――…


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*Comment

NoTitle 

やばいです。
愛があふれています。

ネスもハクもかっこいい!

男なのにどきゅーんときましたw
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.12/13 00:19分 
  • [Edit]

NoTitle 

ネスとハクの会話が可愛くみえるのは
私の気のせいではありませんよねっ?!!
こんな会話いいですね~
ハクもすきがあるところがまたいいです~(><
  
シェリルちゃんの可愛さが倍増したぁああああああああ?!

ネスが切ないぃいいいいいいいいいい
こっちが切ないよ!!ネス~

もう、騒ぎっぱなしです★
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/13 20:21分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
おおぉぉ、どきゅーんときていただけましたか!!
ハクとネスも喜んでいると思います!

これからも、ハクはシェリルをけなしながらもチラリとデレを見せ、
ネスはシェリルに優しさを注ぎながら、旅していくと思います!
生温かく見守っててやって下さいッ♪
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/13 20:30分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
ハクとネスはもともと物凄く仲良しさんですからね~♪
シェリルがいなければ、二人で仲良く喧嘩しながらさっさとアンデッドドラゴン倒しに行ってたでしょう(笑)
でも、シェリルがいなければネスはハクの下に戻り辛かったでしょうし……
ネスもハクも素直じゃないですね★

ハクは信頼する人間以外に隙は見せません。
が、シェリルの寝顔はそんなハクにすら眠気を催させたようですね(笑)

ネスは切ないですねぇ……。
本人は気付いていない様ですが、大好きなくせにね☆
んもう、書いている作者としては、このもじもじ加減がイライラしますよ!!
さっさと告白しろよこらぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!みたいな?(ぇ?

ツンデレと優し過ぎる男達を、生暖かく見守ってやって下さいまし~!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/13 20:46分 
  • [Edit]

むぎゅっ 

 ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノこんばんわ♪
 ご無沙汰してすみませんヾ(_ _。)ハンセイ…
 w( ̄o ̄)w オオー!いつの間に、ハクとシェリルは…。
 未だに「女」と呼んでますが、シェリルの事がまんざらでもなくなってきてますね(⌒-⌒)ニコニコ...
 おもいっきり、ハクをむぎゅぅぅぅぅとしたネス。
 微笑ましい(?)です。
  • posted by 蘭陵邑 
  • URL 
  • 2009.12/13 22:00分 
  • [Edit]

蘭陵邑様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
いやいやいやいや!!
こちらこそ、ご無沙汰してしまってすみません(汗)

出会って一度も名前呼んだ事無いなんて、ある意味凄いですよね(笑)
女が二人いた場合はどうなるやら(*´人`)

ネスのつねきった後はさぞや痛かったでしょうねぇ……。
眠気なんて一瞬でぶっ飛んでいったと思いますよ(笑)
ハクとネスだから成立する起こし方な気がしますが!!
……微笑ましいですよね☆
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/14 18:42分 
  • [Edit]

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