冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 05

 ハクと別れ、シェリルとネスは12時までの予定を立ててギルドを出た。
 まずは薬品を買い出し、次に一日分の食料。
 後は適当に過ごして12時に正門へ……といった内容で、5分と掛からずに予定は決まった。



 予定通り、シェリルとネスは薬屋に向かう。
 そこそこ値の張る商品を何の躊躇いもなく値段すら見ずにネスはカゴに放り込んでいった。
 シェリルはそのカゴすら持たせてもらえず、ただ大人しくネスの後ろを付いて行く。

  「よし、こんなもんかな。さ、精算済まして食料買いに行くぞ。」

  「あ、はい!」

 暇そうに商品棚を眺めていたシェリルは、突然のネスの呼び掛けに驚き、びくりと体を震わせる。
 そんなシェリルの様子に、ネスは苦笑して言った。

  「暇そうだな。」

 見事に見抜かれ、シェリルは恥ずかしそうに地面へと目を伏せる。
 苦笑を浮かべていたネスは、懐から中くらいの麻袋を取り出し、その中に適当にお金を詰め込み、
 シェリルの前に差し出した。シェリルは不思議そうに首を傾げる。

  「ハクは自分で買うだろうから、携帯食料を二人分買ってきて。
  後残った金はシェリルの好きな様に使いな。
  12時に正門で待ってるから、それまで皇国の観光でもするといい。
  ただし、東のスラム街にだけは近付かない事。
  ……危ない目に合いそうになったら、ギルドかどっかの家に駆け込んで大声で叫べ。いいな?」

  「……観光してていいんですか?お仕事があるのに……。」

 申し訳なさそうに言うシェリルを見、ネスは相変わらずの優しい表情を浮かべる。

  「ハクといたらギルドと仕事場の往復しかしねぇからな。
  必需品は俺が揃えてるから、シェリルは羽伸ばしてこい。」

 大きな手でくしゃくしゃと髪を撫でられ、
 シェリルは気持ち良さそうにネスの手に頭を擦り付けて甘える。

  「……。」

 まるで猫の様なシェリルの行動と愛らしい顔に、ネスの顔が徐々に赤みを帯びていった。

  「シェリル……」

  「?」

  「あんま……知らねぇ男にそんな顔見せんなよ……?」

  「??……はぁい?」

 ネスの言う意味がよく分からず、とりあえず返事だけを返した。
 シェリルの頭から手を離し、ネスは麻袋を手渡す。
 行っておいでの声と共に、シェリルは薬屋から出て行った。一人残ったネスはレジへと並ぶ。

  (……擦り寄るのは卑怯だよな……………………可愛かった……。
  はっ?!何考えてんだよ、俺……。シェリルはハクが好きなのに……。
  ……馬鹿らし……なんか調子狂うな。さっさと終わらせて正門行こ……。)

 ネスは自分の心に出来たわだかまりを深い溜息でごまかし、
 レジを通っていく商品達をずっと見ていた―――…



 ネスと別れ、シェリルは言い付けを守るべく携帯食料を探しに奔放していた。
 だが、なにぶん道が分からず、行き当たりばったりに進む。

  (あっちかなぁ?)

 うろうろとしているうちに、気が付くと人気が消え、シェリルは路地に一人ぽつんと立っていた。

  (あ……あれ……?おかしいなぁ……。)

 まだ朝だというのにどんよりとした空気が辺りを包む。
 恐怖を感じたシェリルは一旦戻ろうと身を翻した。
 その瞬間―――…

    ドンッ

  「きゃっ!」

  「っ!」

 何かと衝突し、シェリルはコロンと尻餅をつく。
 痛むお尻を摩りながら、シェリルはぶつかったものを見上げた。
 そこには見慣れた人物が不機嫌そうな顔で立っていた。

  「ハク……」

  「……何でお前がここにいる?ネスはどうした?
  ……まさか、抜け出して来たんじゃねぇだろうな?」

 紺色の瞳が鋭さを帯び、シェリルに敵か何かを見やる様な視線を送る。
 シェリルはぶるりと体を震わせ、懸命に言った。

  「ちがっ……ネスに携帯食料買ってきてくれって頼まれて……
  でも、道が分からなくて、適当に歩いてたら……」

  「……ここに辿り着いたってわけか……。
  お前、すっげぇ方向音痴だな……食料店はこっちじゃない。
  ……はぁ……案内してやるから、ちょっとここで待ってろ。」

  「は、はい……」

 落ち込んだシェリルは、とっとと歩いて行くハクの背を大人しく見つめる。
 が、不意にハクは足を止め、ちらりとシェリルを見やった。
 ハクと視線が合い、シェリルは小さく首を傾げる。
 と、同時に、大人しく待つシェリルの下へハクは戻ってきた。

  「お前も来い。」

 少し離れた位置でハクはシェリルを呼ぶ。シェリルはその言葉に従い、ハクの下へと走った。
 不思議そうな顔をするシェリルに、ハクは面倒臭そうに言う。

  「ここはスラム街だ。お前みたいな女がうろつくとこじゃねぇ。
  ……まぁ、お前が取って喰われ様が俺の知ったこっちゃねぇが、ネスが五月蝿そうだからな……。
  大人しく出来るならついて来い。」

 ハクの辛辣な言葉にも係わらず、シェリルは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうにハクの後ろにつく。
 が、突然腕を握られ、真横に引っ張られた。

  「……後ろは気付かねぇことがある。横にいろ。」

  「はぃっ!」

 シェリルの嬉しそうな顔とは裏腹に、ハクは鬱陶しそうな表情を浮かべている。
 それに気付いたシェリルはおずおずとハクに聞いた。

  「あの……私、邪―――…」

  「黙って歩け。」

  「はぃ……」

 ろくに言葉も発する事も出来ず、シェリルは大人しくハクの真横を歩く。
 会話を交わす事もなく、ただ建物と建物の間をすり抜ける風の音を聞き、足音だけが響く中、
 だんまりで歩いていたハクの足がぴたりと止まった。

  「?」

 シェリルは不思議そうに首を傾げる。
 ハクは小さく溜息を吐きながら振り返り、シェリルを庇う様に自分の背へと隠した。


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