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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 04

 賑やかな朝食を終え、シェリル、ハク、ネスの三人はカウンターに座っていた。
 ハクが酒をあおりながらアデットへ聞く。

  「仕事ないか?」

  「……お前は、飯か仕事かしかねぇのかよ……。
  たまには『いい天気だな』の一言でも言ったらどうだ?」

  「あいにくの曇り空ですね。って事で、仕事。」

  「ほんっと可愛くねぇ奴……。」

 相手にする気すらないハクの態度に、隠すことなく深い溜息を漏らす。
 アデットは依頼の書かれた紙の束をぺらぺらとめくりながら、
 ちらりとシェリルを確認し、再び紙の束へと視線を移した。
 束をめくり終えたアデットは顔をしかめて言う。

  「いいのはねぇなぁ……」

 その言葉に、ハクは訝しげな表情を浮かべた。

  「は?仕事がないだと?んなわけねぇだろ。」

  「まぁ、あるはあるんだが、辺境ばっかなんだよなぁ……」

  「なら、それでいいじゃねぇか。」

 不思議そうな顔をするハクに、アデットはやれやれと呆れた表情を作った。

  「お嬢ちゃんの事も考えてやれよ。女の子がそんな遠くまで歩けるわけねぇだろ。」

  「……構わねぇ。こいつが勝手に付いてきてんだよ。
  ついて来れようが来れまいが、俺の知ったこっちゃない。」

  「お前ねぇ……何でそんな冷たいんだよ。
  そのお嬢ちゃんはお前を慕ってんだろ?もうちょっと優しくしてやっても―――…」

  「うるせぇよ。店主には関係ねぇだろ。」

  「……はぁ……こんな可愛い子に告白されて、そこまで無下に出来るのはお前くらいだぞ。」

  「それが嫌なら離れればいい。俺は一切止めやしねぇ。むしろ、離れて欲しいくらいだしな。
  で、そんな話はどうでもいいんだ。仕事くれよ。」

 アデットは深い溜息を漏らしながら、ちらりとシェリルを見やる。
 今の言葉で傷付いているのではないかと少し心配していたのだが……

  「おぉ、すげぇ!」

  「えへへ、イルカさんで~っす。」

  「……。」

 アデットの心配など、どこ吹く風といったかの様に、シェリルは水で様々な形を作り、
 嬉しそうにネスへ見せていた。
 シェリルの手から作り出された小さな水のイルカが、まるで生きているかの様に宙を泳ぐ。

  「魔法って遊ぶことも出来んだな。」

  「うん。……こんな事する人、見たことないけど……。」

  「あっはは、子供あやすのには最適なんじゃねぇ?」

  「そうかな?」

 ハクを置き、和気あいあいと喋るネスとシェリルに、アデットは躊躇いながら声を掛ける。

  「な、なぁ……いいかい?お二人さん。」

  「ん?」

  「はい?」

 仲良く遊んでいた二人はアデットの声に反応し、顔をあげる。
 アデットは邪魔したのを少しだけ申し訳なく思いながらも、
 ハク相手では話にならないと悟り、聞いた。

  「仕事が辺境の地しかねぇんだよ……。
  お嬢ちゃんもいるし、今日の仕事は止めておいた方がいいんじゃねぇかな?
  ハクは冷た過ぎて話にならねぇ。」

 その言葉にネスはちらりとシェリルを確認し、優しく頭を撫でて言った。

  「辺境で構わねぇよ。」

  「……ネス、お前まで……。」

 ネスの返答がハクと同じものだったことに軽くショックを受けたアデットは深く溜息を吐く。
 そんなアデットに、ネスは苦笑を見せた。

  「勘違いすんなよ。俺はハク程冷たくねぇよ。
  辺境だろうが何だろうが、シェリルが疲れりゃ俺がおぶって行くだけだ。何の問題もねぇ。
  ついて来れなかったって言って、道中放り出す真似は絶対しねぇさ。」

 な?と言わんばかりにネスはハクへと視線を向ける。
 だが、ハクはその視線を一切無視し、無言を貫き通した。
 心優しいネスの言葉に便乗するかの様に、シェリルもアデットへと言う。

  「私、頑張るって決めてます。そりゃ……女だし、体力ないし、ひ弱なのも自覚してますけど……
  二人に迷惑かけない様に頑張るって決めたんです。どんなとこだって行きますッ。」

 無邪気な笑みを見せ、気にしないでと言わんばかりの言葉をアデットへと向ける。
 シェリルの言葉に負け、ネスを信じたアデットは何度漏らしたか分からない溜息を吐き、
 紙の束から一枚抜き取り、三人の前に差し出した。

  「んじゃ、これが一番近いし……頼むわ。」


  南国の地より、アンデッドの大量発生が確認された。
  早期対応を望む。

                                 依 頼:皇国『リムドア』

                                 場 所:アティスの海岸

                                 報 酬:2.000.000G



 その依頼を確認し終えたハクは、げんなりとした表情をアデットへと向ける。

  「近いって……これ、行くだけで一日は掛かるじゃねぇか……。
  それに、また大量アンデッドかよ……冗談きついぜ……。」

 不服そうなハクに、アデットは苦笑しながら返す。

  「複数出現するアンデッドは出来るだけ腕利きに頼みてぇんだよ。
  新人なんかに任せたあかつきにゃ、確実にアンデッドの仲間入りだ……。
  それに、お前らにはお嬢ちゃんがいるだろ?だいぶ楽なんじゃねぇか?」

 その言葉に、ハクは鋭い視線をシェリルへと向ける。
 視線に気付いたシェリルは、ハクへ小さく首を傾げて見せた。
 ハクは面倒臭そうな表情を浮かべて言う。

  「楽になるわけがねぇ。むしろ、道中はこいつのお守しなきゃなんないんだから疲労が増す。」

  「シェリルの面倒を見るのは俺だ。お前にゃ関係ねぇだろ?どの道見る気もねぇくせに。」

 アデットに言った言葉に即座に反応したのはネスだった。ハクは鋭い視線をネスへと送る。
 だが、その視線にひるむことなくネスも威嚇する様な視線をハクへと送った。

  「……あ……あの……?」

 殺伐とした空気が流れる中、シェリルはどうしていいのか分からず、困惑の色を浮かべる。
 その様子に見兼ねたアデットは即座に仲裁に入った。

  「はいはい、喧嘩すんならお嬢ちゃんの見てないとこでしな。
  お前らの喧嘩は普通の喧嘩じゃすまねぇからな。お嬢ちゃんがびびっちまうだろうが。」

 アデットの忠告でハッとしたのはネスだった。
 慌てて普段の表情へ戻し、シェリルへ言う。

  「わりぃ……怖かったか?」

  「あ……ッううん、平気!ごめんなさい……。」

  「シェリルが謝る事じゃねぇよ。悪かった。ごめんな?」

 そう言ってくしゃくしゃとシェリルの頭を優しく撫でてやる。
 喧嘩の危機が去った事に、シェリルは心の底から安堵していた。
 そんな中、二人のやりとりなど全く関係ないといった態度で、ハクは依頼の書かれた紙を取り、
 適当に折りたたんで懐へ入れる。

  「この依頼、受けてやる。そいつの面倒はネスが見てくれるらしいしな。……おい、女。」

  「は、はい!」

  「……ネスに迷惑かけんなよ。」

  「はい!!」

 ふんっと小さく鼻を鳴らし、ハクはカウンター席から立ち上がる。
 そしてネスへ向かい言った。

  「12時に正門で落ち合おう。一日はかかるから食糧の準備も忘れんなよ。」

  「りょ~かい。」

  「お前はネスについて行け。」

  「は、はぃ……」

 それだけ言うと、ハクは見放されて落ち込むシェリルなど関係ないとばかりに、
 さっさとギルドから出て行った―――…


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*Comment

NoTitle 

ネス、君って奴は~
意外に裏表ある子だったんだね。。。
とまぁ、こんな感じで、一触即発状態を見物させていただきました。
シェリルちゃん、かなり可哀想な位置に座ってますね(^^;
私だったら、逃げてますよ(笑)
一匹狼的なハクは相変わらずww可愛いですね~
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/07 20:54分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
ネスはハクとの喧嘩は好きな様です(笑)
ハクも強い奴と戦うのは好きなので、いっそ戦わせてみようかとも思ったのですが、
シェリルがあまりにも可哀想な事になりそうだったので、自重して頂きました(*´д`)

おろおろしてるシェリルも好きなので、もっともっとおろおろすればいいと思います★
ネスに押し付けるだけ押し付けて自分はさっさと消えるなんて、
なんていい加減な男なのでしょう(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/08 06:10分 
  • [Edit]

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