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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 02

  「こんにちは。えっと……シェリルちゃん……だっけ?」

 ハクとネスが消えるのを待っていたかの様に、二人の男がシェリルの傍へと近付く。
 恐持てともとれる無口な男と、軽薄そうにへらへらと笑う男。
 シェリルは見知らぬ男達を前に不思議そうな顔を浮かべ、小さく首を傾げた。

  「そうですが……何か?」

 純粋無垢な美しい青色の瞳はしっかりと二人を捉える。男達の不審な笑顔さえも。

  「……あの……?」

 まるで値踏みするかの様な男達の視線に悪寒を走らせ、シェリルは固く身構えた。
 軽薄な男は怯えるシェリルに優しげな口調で言う。

  「あぁ、怖がらないで。別に取って食うわけじゃないんだしさ。
  ねね、シェリルちゃん……今から一緒に冒険行かない?
  自分でお金稼ぎたいとか、強くなりたいとか思うでしょ?」

  「まぁ……」

 男の熱弁に、シェリルはそれとなく返事を返す。
 すると、何を思ったか、男はシェリルの細い腕を掴み、無理矢理立ち上がらせた。

  「ふぁっ?!」

  「……ごめん、ごめん。シェリルちゃんがあやふやな返事しかくれないからさ。
  この返事はちゃんと貰いたいなぁ?一緒に冒険行こ?」

 男が優しい笑顔をシェリルへと見せた瞬間、聞きたくない声が耳に届いた。

  『お断りだ。』

 男の背後から冷たく殺気立った声が重なって聞こえる。男は頬に嫌な汗を流し、ゆっくりと振り向く。
 そこには案の定、氷の様な目で男を睨むハクとネスの姿があった。
 シェリルに近付く男二人を確認し、注文途中で戻ってきた様である。
 ネスは男に黒い笑みを浮かべて見せた。

  「なぁ……お前さ、シェリルが俺らの連れって知ってるよな?
  知っててナンパしようなんざ、いい度胸じゃねぇか。」

  「同感だな。その女の何が気に入ったか知らんが止めておけ。足手まといが増えるだけだ。」

 ハクの言い方に、ネスが不機嫌そうな顔を浮かべ、抗議する。

  「何が足手まといなんだよ。シェリルは立派に俺らを守ってくれただろうが。
  てか、何が気に入ったって……お前にゃ分からんかもしれねぇが、シェリルはかなりの美人だぞ?」

  「美人は認めるが、足手まといは譲らない。
  ……おい、貴様。その女には手ぇ出すな。お前の為だ。」

 あくまでもシェリルを認めず男の為だと言い張るハクに、ネスは深い溜息を漏らした。
 二人を前に、緊張した面持ちで黙り込む軽薄な男をフォローするかの様に、無口な男が口を開く。

  「足手まといが増えても構わない……そう言えばこの女を貰っていいのか?」

  「……。」

 無口な男の言葉に、ハクは眉間にシワを寄せた。無口な男とハクの睨み合いが続く。
 そんな中、二人のやり取りなど全く関係ないと言わんばかりに、ネスは軽薄な男に近付き、
 シェリルの腕を取る軽薄な男の手首をこれでもかと握り絞めた。骨のきしむ音が聞こえる。

  「いっ……!!」

  「てめぇが握ったら、シェリルの腕が折れる。触んな。
  大体、てめぇらは何でシェリルに声掛けたんだよ。
  マジでナンパ目的なら……病院送りにさせてもらうぜ。」

  「ぐっ……は、離せ!!本気で折れる!!!」

  「本気で折るつもりなんだよ。……返答によっちゃな。」

 ネスの威圧的な瞳を前に、完全に萎縮した軽薄な男は、シェリルからゆっくりと手を離す。
 ネスも男から手を離し、シェリルを狙った理由を黙って聞いた。

  「……魔法使いが欲しかっんだよ……。強力な魔法使いがな……。」

  「ほう?何故?」

 獰猛な金色の瞳は一瞬たりとも緩まず、まるで獲物を追い詰めていくかの様に鋭さを増す。
 ネスは自分の背にシェリルを隠し、軽薄な男の視界に入れない様努めた。

  「……最近アンデッドの数が増えてきてるのはお前らも知ってるだろ?
  どうにも、単体や二匹なんかじゃない……常に数十匹くらいが固まって出現しやがる。
  あいつらも知性を備えた奴を台等に、力を付けてきてやがんだよ。
  こっちもそれに対応しなきゃならねぇ。武器は単体には向くが複数には手が足りない。
  そんな時に魔法使いがいりゃこっちが有利になる。……だからだ。」

 軽薄な男の言葉に続く様に、無口な男も口を開いた。

  「お前らは強い。ネスとハクがつるめば大体のアンデッドなんざゴミも同然だろう?
  なら、一人くらい貰ってもお前らには何の支障もないよな?」

 当り前とでも言うかの様な無口な男の言葉に、ハクの眉がぴくりと動く。
 ネスも明らかに不機嫌そうな表情をしていた。
 一触即発の雰囲気の中、シェリルはどうしたらいいのか分からず、
 おろおろと四人の男達を見やる。続く沈黙の中、ハクが面倒臭そうに言った。

  「支障がないと誰が決めた?それを決めるのは俺らだ。
  その女は………………まぁ、足手まといは足手まといなりに少しは役に立つ。
  貴様らにやるつもりはない。」

 その言葉に、ネスは素直じゃないなと思いながらも、
 それを言の葉に乗せればまた言い合いになることを察し、言葉をつぐむ。
 無口な男はハクを睨み付けながら言った。

  「……お前はその女が嫌いなんだろう?」

  「あ?いつ誰がそう言った?」

  「雰囲気がそう言ってる。女なんて面倒臭い……ってな。」

  「……まぁ……女は弱いし、すぐ泣くし、我が儘だし、そのくせビビって動かなくなる。
  物凄くうざったいな。」

  「なら、お前はその女は不必要なわけだ。」

  「……ふん、それは普通の女の話だ。そいつは違う。
  弱くて泣き虫だが、我が儘じゃねぇし、ビビって動かなくなるわけでもねぇ。
  だから…………まぁ……その……不必要……ではないな……。活用出来る用途はある。」

 つっけんどんだが、シェリルを手放す気はないと告げたハクを前に、
 無口な男は面白くなさそうな表情を浮かべ、シェリルへと向いた。
 ネスの背に隠れて見えないシェリルに向かい、言う。

  「なぁ、シェリルさん。君はこんな男の傍にいて幸せなのかい?
  ネスは……まぁ、分かる。女にゃ優しいと評判だしな。……だが、ハクは違う。
  散々利用するだけ利用して、簡単に捨てることのできる人間だ。
  君がこいつについて行ったところで、こいつは何も感じないし
  ……身代りにする可能性だってある。」

 その言葉に反応したシェリルは、ひょこんとネスの背から少しだけ顔を出す。
 無口な男は顔を出したシェリルに向かい、優しく微笑んで見せた。

  「そんな奴らより、俺らの方がいい。こいつは軽い男だが、芯はしっかりとしてる。
  さっきはちょっと乱暴なことしちまったが……どうしても君が必要だったんだ。
  俺らは君を身代りになんてしないし、君の願いなら最大限尽くそうと思う。
  どうすれば君はこっちに来てくれる?何が欲しい?どうして欲しい?ほら、言ってごらん。」

  「……。」

 シェリルは遠慮がちに無口な男を見、その視線をハクへとやる。視線がばっちりと交った。
 だが、ハクはふいッと視線を逸らし、シェリルを突き離す。
 その光景に、無口な男は勝った様な笑みを浮かべた。

  「女にこうまで優しく出来ねぇ男ってのも珍しいな。
  こんな可愛い女の子に、どうしてそんな冷たい態度がとれる?」

  「……うるせぇよ。てめぇにゃ関係ねぇだろうが。」

  「ふん、ごもっともだな。ほら見ろよ、シェリルさん。こんな男なんだぜ?
  こっちにおいで。ね?君の望む物なら、何でも叶えるよ。一緒に冒険しよう。」

 優しく微笑む無口な男と、ネスに思い切り握られた手を擦りながら現状を黙って見守る軽薄な男。
 シェリルは二人の男を交互に見やり、ネスの背からその身を現す。

  「……シェリル……?顔出す必要ねぇよ。ほら、隠れて―――…」

 ネスの言葉をシェリルは笑顔で遮る。そして、一歩、また一歩と、男達の下へと歩いた。


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