冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 52

 嬉しそうに自分の髪に付いた髪飾りを触りながら、
 シェリルはリンゴジュースへ口を付ける。
 そんな様子に、ハクはちらりと視線をやり、シェリルの満面の笑みを盗み見た。

  (髪飾りひとつでそんなに喜ぶもんなのか……。
  女って単純なんだな…………そういや、こいつの名前って何だっけ?
  ネスが何か言ってたな……シェルターだっけ?……いや、違うな……。
  まぁ、今更聞くのもあれだしなぁ……ネスが戻ってくるまで待つか。)

 そんな事を考えていると、不意にハクの横に影が出来る。
 それに気付いたハクはゆっくりと視線を動かし、影の主を見た。
 そこには気持ちの悪い笑みを浮かべている男が一人。

  「……何だよ。」

 男はにやにやと笑いながら、ちらりとシェリルを確認し、ハクへと視線を戻して言う。

  「冷血非道なハクも、女には弱いんだなぁ?」

 見下した瞳でハクを見、嘲笑う男。
 ハクは嫌悪を感じる声と、虚ろで生気のないアンデッドに似た瞳を持つ男に、
 不快感を感じていた。

  「……こいつには命を助けられた礼があるからだ。
  ってか、てめぇには関係のねぇ事だろうが。気持ちわりぃんだよ。失せろ。」

  「ほぉ~?それだけねぇ?お前、その女の事、気に入ってんじゃねぇの?」

  「……何が言いたいんだ?口が過ぎる様なら燃やしてやるよ。」

 ハクは朱色の剣に手を掛ける。
 それを見た男は引き攣った笑いを浮かべ、慌てて言った。

  「ま、まぁまぁ、落ち着けよ。
  んじゃさっきの髪飾りでお前の礼は済んだわけだよな?
  ……だったら、その女、俺が貰ってもいいよな?実は、一目見た時から気に入っちまってな。
  いいだろ?くれよ。」

  「……。」

 ハクは朱色の剣に手を掛けたまま、何も答えなかった。
 男はにんまりと黒い笑みを浮かべ、ゆっくりとシェリルに近付く。
 突然の出来事に脅えるシェリルへと、男は手を伸ばした。

  「無言は了承と取るぜ?さ、お嬢ちゃん、俺と一緒に―――…」

  「おい、お前。そいつに触んな。」

 殺気を含んだ声に、男の手が止まる。
 男はゆっくりと振り返りハクの視線を捉えて言った。

  「ほぉ?一匹狼が女とつるむのか?」

 男の言葉に、ハクは少しだけ考える。そして、何の感情も込めず、淡々と返した。

  「そいつは俺らの仲間だ。共にアンデッドドラゴンを倒す事になってる。
  俺は別に構わねぇが、そいつに手ぇ出すっつー事は……
  その女の仲間でもあるネスを敵に回すぞ。
  あいつはその女に何かと親身だからな。」

  「……ネスか……。」

 口から少しだけ出まかせを述べたハク。
 だが、ネスがシェリルを大切にしているのは明らかに見て取れた。
 友人の為だと言い聞かし、男がシェリルを奪おうとするのを防ぐ。
 男は鬱陶しそうな表情を浮かべて言った。

  「……はぁ~……残念。ネスが相手なら諦めるわ。」

  「そうした方が安全だろうな。」

 さして興味なさ気にハクは男へと答えた。
 男は自分の席へとすごすごと引き下がって行く。

  「……。」

  「……。」

 シェリルとハクの間に訪れる沈黙。先に口を開いたのはシェリルだった。
 ハクの顔を覗き見しながら、おずおずと聞く。

  「あ……あの……ありがとうございます……えっと……私、付いて行っていいんですか……?」

 ハクの出まかせの言葉を真剣に受け取ったシェリルは、少しだけ嬉しそうな表情を浮かべていた。
 ハクはしまったとばかりに右手で顔を覆う。

  「……阿呆、あれはその場しのぎの―――…」

  「嘘なんて言わねぇよなぁ?」

 後方から聞こえた聞き慣れた声。
 その声にハクはびくりと体を震わせ、渋い顔で振り返る。
 そこには案の定な人物がいた。

  「ネス……」

  「いやぁ、良かったなシェリル!ハクから直々に許可が下りたんだ。
  何の遠慮もなくハクの傍に入れるじゃねぇか♪」

 悪魔が最高の黒い笑みを見せるとしたら、きっとこんな笑顔なのだろう。
 ハクはその時、そんなことを考えていた。

  「髪飾りはプレゼントするは、許可は下ろすは……ハクも素直になったもんだな?」

  「……ネス……勘弁してくれ……女なんてマジで連れて行け―――…」

  「よし、シェリル!これからは俺ら三人仲間だな。
  仲間になったからには、敬語とか無しにしよーぜ?よそよそしいのは苦手なんだ。」

  「ネ……ネス……人の話を聞―――…」

  「ハク。……いいじゃねぇか。お前が守らねぇなら俺が守るから。
  お前の復讐の邪魔はしねぇよ。」

  「……。」

 訪れた静寂の中、シェリルは頭を下げてハクの言葉を待つ。
 ハクはシェリルとネスを交互に見つめ、深く長い溜息を吐いた。シェリルを鋭い瞳で見つめ、言う。

  「……足手まといになる様なら、即行で切り捨てるからな。」

  「は……はいっ……」

  「そんときゃ俺が守ってやっからな♪」

 ハクの言葉を容赦なく打ち消すネスが可笑しくて、シェリルは小さく笑った。
 ハクは不機嫌そうな視線をシェリルへと向け言う。

  「……ハク=リンウェイだ。宜しく。」

 自分なりのけじめとして、ハクはシェリルに短い自己紹介をした。
 ハクに続き、ネスもにっこりと笑って言う。

  「ネス=シアフォードだ。宜しくな!」

 二人の自己紹介に、シェリルも微笑みを浮かべて返す。

  「シェードアディ=リーンフォードリューカス=ルールゥアウンレイドです。
  宜しくお願いします!」

  「…………ちょっと待て。名前、長くねぇ……?」

 何とも形容しがたい表情を浮かべるハクに、シェリルは慌てて訂正を加えた。

  「あっ、えっと……シェリルです!!宜しくお願いします!!」

 恥ずかしかったのか、シェリルの顔が真っ赤に染まっていた―――…


 駒は揃った……。

  運命という名のチェス板で繰り広げられる、
   男二人と人間に恋した人魚物語の、本当の幕が今……

    音を立てて開いた―――…


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*Comment

NoTitle 

さぁいよいよ本格的に、
三人が動き始めるんですね★
駒がそろったぁああああああああああああ(T▽T/
と、感動しつつww

いいですねっ!私、こういう雰囲気大好きなんですよ~
ワクワクが止まらないです^^
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/03 21:25分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
やっと三人揃って行動ですよ~!!
長かった……すんごい長かったぁあぁぁぁぁぁっ!!
やっと第二章に……(´っд;`)

二章は切ない展開が多いですが、生暖かく見守っててやって下さい!!

ハクやネス、シェリルが、燈様のわくわく要員になっているのであれば、
作者として、これほどの幸福はありませぬ♪
いつも温かいコメント、ありがとうございます!!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/03 22:13分 
  • [Edit]

NoTitle 

こんばんはー!遅読ながら一章読ませて頂きましたー!前の話のハクのツンデレっぷりに萌えすぎて吐血しそうになりましたゲフゲフゴハァっ!

ああもう、シェリルちゃんは相変わらず可愛すぎるしネスもハクも何だかんだでシェリルちゃんのこと大好きで可愛すぎます!
ハクは最初冷たい人なのかと思っていましたが、何だかもう最近ツンデレで愛し過ぎて(笑)
でもシェリルちゃんの名前は覚えてあげて……!^^
シェルターって!(笑)まあ、そんなところもハクらしくて好きですが^^

次は二章ですね~♪これから三人のどんな物語が広がってゆくのか、じっくりたっぷり読ませて頂きます!♪
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.12/30 18:14分 
  • [Edit]

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