冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 45

  「つまり、全ての元凶はその女にある……と、そういう事か?」

 皇国『リムドア』を目前にし、ハクはシェリルを睨み付けながら言った。
 シェリルの体がビクリと震える。ネスはやれやれと、深い溜息を吐きながら呆れた様に返した。

  「まぁ、シェリルがいなけりゃ俺はまだ漁師してたろうな。
  だが……遅かれ早かれ、冒険者に戻る気ではいた。それが早まっただけに過ぎない。
  お前が良けりゃ、また一緒にタッグ組んでくれや。言っとくけど、引く気はねぇからな。
  それと、女って言うの止めろよ……。シェリルにはちゃんと名前があんだからさ。」

  「……引く気がねぇなら、『組んでくれや』って聞くのおかしくねぇか?
  まぁ……お前を突き離したのはちょっと悪いと思ってたし……組むのは構わねぇ……。
  だが、俺は仲間でもねぇ女の名前なんざ、覚える気にもなんねぇし、
  傍に置く気もねぇよ。消えてくれた方が清々する。」

  「お前ねぇ……ったく……一度も感謝の気持ちすら伝えてねぇだろ?
  そんな事ばっか言ってると、罰が当たるぞ。」

  「……ふん……。」

 助けてくれた事も、激痛を見舞わされはしたものの傷を癒してくれた事も、
 ハクとて本当は心の隅で感謝はしていた。
 だが、それを伝える言葉を吐く事に躊躇いを持ち、シェリルと一切会話する事無く今に至る。
 そんなハクの様子に、ネスは更に深い溜息を漏らした。

  「……はぁ……シェリル、ほんと……こんな奴ですまねぇな……。
  せっかく助けてくれたのに……。がっかりしたんじゃねぇか?想像と違ったりしてない?」

 ネスが心配そうにシェリルに声を掛ける。
 だが、シェリルは満面の笑顔をネスへと向け、楽しそうに言った。

  「全然!あの時と同じ……本当に綺麗な人だなって思います。
  綺麗な紺色の瞳……透き通る様な声……背も高くて、凄くカッコいいです!」

  「そ、そう……シェリルがいいならいいけど……。」

 めげない子。
 ネスはシェリルをそう印象付けた。
 熱烈と語るシェリルに、ハクはすこぶる面倒臭そうに言う。

  「……外見かよ。」

  「ハク!そういう言い方すんなつってんの。所詮最初は見た目だろうがよ。」

  「じゃ、皇宮の女共と一緒だな。あいつらは見た目でしか判断しない。」

  「内面は後からしか分からねぇだろ。」

  「ふん、どうだか。まぁ、俺はこの女を好きになる事はないし、仲良くするつもりもない。
  おい女。それでいいんだよな?嫌いだって構わない……って言ったもんな?」

 鋭い刃物の様な視線がシェリルの瞳を捉える。
 シェリルは少し影を帯びた笑顔で、気付かれない様に明るく言った。

  「はいっ。ただお傍に置いて頂ければ、それで結構です。」

 本心を言えば好かれたかった。
 だが、それをハクに求める事は無理だと悟ったシェリルは譲歩する。
 好きな人の傍にいられれば……
 好きな人の役に立てれば……
 そんな思いがシェリルの心を埋めていった。
 だが、それはおかしいのだと言わんばかりにネスが食い下がる。

  「シェリル。言いたい事があるなら言え。
  好かれもしねぇのに、傍にいる必要なんざないだろ?
  このままだと、シェリルは幸せになれねぇぞ?今すぐ故郷のユグドラシア大陸に戻って、
  お前を心から愛してくれる人と寄り添った方が―――…」

  「……故郷にはもう、戻れません。
  私は全て捨てて来ました。だから、これでいいんです。」

 初めて見せる様な苦しみを帯びた表情。
 その表情にネスは目を見開き、眉根をひそめた。
 だが、シェリルは数度深呼吸した後、いつも通りの笑顔を浮かべる。

  「嫌だなぁネス。そんな辛気臭い顔しないで下さいよ!私なら全然平気です。
  大好きなハクさんの傍にいられれば、それで幸せなんですから!」

 まるで自分に言い聞かす様にも聞こえる言葉に、ネスはそれ以上何も言わなかった。
 シェリルもそれ以上、語らなかった。
 ただ、ハクだけが不服そうな表情を示し、シェリルに言う。

  「ばっかじゃねぇの?」

  「ふぇッ?」

  「……女は家で好きな事して、のんびりしてりゃいいじゃねぇか。
  何でわざわざ戦場に出ようとすんだよ。
  俺の事が好きだとしても、ギルドで待ってりゃ会えるだろうが。」

 その言葉に、シェリルは少しだけ考え、確かにと頷く。
 だが、決してそれを実行しようとはしなかった。

  「もし、好きな人が危なくなったら助けてあげたいんです。
  ギルドにいても、死ぬ様な危険なんてありません。
  貴方の盾でいいんです。貴方の道具でだって構いません。ただ、お傍にいたいんです。」

 満面の笑みのつもりだったのだが、その笑みには陰りが窺え、切なげに映る。
 ネスはその笑みに一抹の不安を覚えた。

  (自虐的だな……。
  シェリルの今までの行動から考えれば、本当にハクの為に命を捨てかねない……。
  ……たかだか一人の男の為に、何でここまでするかねぇ……?
  まぁ、俺が守ればいいだけの話なんだが……。)

 知らず知らずのうちに漏れる溜息。
 その溜息を聞いたか聞かずか、ハクがチラリとネスを見て言う。

  「おい、ネス……。」

  「ん?」

  「女ってこんなに馬鹿だったっけ?」

  「……人それぞれだろ。
  それに、馬鹿って言うなよ……お前の為に命張るっつってんのにさ。」

  「頼んでねぇよ。」

  「命張って下さいって頼む奴の方が馬鹿だろうが。」

  「……まぁ……。」

 口でネスに勝つことは難しいのか、ハクはすごすごと引き下がる。
 言葉を失った三人に、静寂が訪れる。
 響くのは三人の足音だけ―――…だったのだが、その静寂をシェリルが打ち破った。

  「……くちゅんっ!」

 可愛らしいくしゃみが辺りに響く。
 崖から落ちた際に木々に切り刻まれた洋服は防寒の機能を果たさず、
 時折激しく吹き付ける冷たい風はシェリルの長い髪を舞い上がらせ、白い肌を直接刺激した。
 そんなシェリルの姿に気付いたネスは自分の服でも着せていようと裾に手を掛ける。
 だが、その行動をシェリルが止めた。

  「あっ、平気です!!」

  「へっ?」

 ネスの手にひんやりとした柔らかく冷たい感触が。
 自分の視線を手に移すと、そこにはシェリルの小さな手が触れていた。

  「うわっ!?」

  「ふぇっ?!!」

 ネスは慌ててシェリルから数歩退く。
 ネスの慌て様に、シェリルも驚き、数歩退いた。
 きょとんとするシェリルにネスは慌てたように言う。

  「あっ、いや、ほら……そのままだと風邪ひくだろっ……て……手も冷たかったし……」

 散々抱きかかえたりしておきながら、手が触れただけで過剰反応を起こしてしまった自分が
 少しだけ恥ずかしく、ネスは右手で口元を覆った。

  「冷え性なんです。……多分……。

  「……だったらなおさら……」

 ネスが顔を赤らめながらそう言うのと同時に、
 シェリルの体を人間の体温とひどく似た、温かい物が覆った。


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*Comment

 

 ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノこんばんわ♪
 三度目~( ̄▽ ̄~)(~ ̄▽ ̄)~
 ネス「…罰あたるぞ」
 もう当たってます。思いっきり。傷に飲み薬掛けられました(o ̄∀ ̄)ノ”ぁぃ
 それでも「女」と名前を呼んでくれないハク。
 いつの日かシェリルと呼んであげて。
 
  • posted by 蘭陵邑 
  • URL 
  • 2009.11/27 23:45分 
  • [Edit]

蘭陵邑様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
そ……そうですね……思い切り罰受けちゃってますね(笑)
シェリルから無意識に下された罰は相当堪えた様ですが、
そんなに反省はしてないようです(笑)

ハクはなかなか名前を呼んでくれないですよ~……。
「おい」「お前」「女」ぐらいでしょうか……。
本当、いつの日か読んであげて欲しいですね……ッ!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/28 19:23分 
  • [Edit]

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