FC2ブログ

冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

+ ある所に… + あなたのお役に立てるなら +

 『 ある所に… 』 シリーズ第二話


  + あなたのお役に立てるなら +



 ある所に、死体がありました。
 その死体はスキンヘッドで、高級そうな腕時計やネックレスをし、
 綺麗なスーツに身を包んで倒れていました。
 明らかに暴力団組員のそれと分かる男の死体でした。



 そんな死体の真横を、一人の老婆が通りがかりました。
 老婆は死体を見るなりその場で両手を合わせ、南無阿弥陀仏と唱え始めます。

  「お兄さん、こんな寒い所で死んでどうするんね……。
  大丈夫やからね、死体でも、誰かの役に立つことすりゃあ天国に逝けるんやから。」

 老婆はスキンヘッドの頭を数回撫で、死んだ男に言います。

  「お兄さん、わたしゃあ……お兄さんに天国に逝ってもらいとう思う。
  やからね……凍える寂しい老婆にお洋服をおくれ……。
  神様にちゃ~んと言っとくからね。」

 くしゃくしゃになった顔で微笑み、老婆はおもむろに死体になった男の服を脱がし始めました。

  「ふぉっふぉっ……これでしばらくは温かく過ごせそうじゃわい。」

 誰に言うでもなく老婆は呟き、その場から消えて行きました。



 素っ裸になった死体の真横を、四人の男達が通りがかりました。
 男達は素っ裸の死体を見るなり、にんまりとした黒い笑顔を浮かべます。

  「おいおい……こいつ、ぜってぇ暴力団関係者だろ……?」

  「死んでんぜ?つか、すっげぇ高級そうな腕時計じゃねぇ?」

  「うわぁ……このネックレス、もしかしてダイヤじゃね?」

  「なぁ、所詮暴力団関係者も、死んじまったらこんないい物いらねぇよなぁ……?」

  「……だな。」

  「同感」

  「……ってことは~?」

  『いっただっきまぁす♪』

 男達は、素っ裸になった死体の首や腕にかかる装飾品をひとつ残らず全て奪っていきました。
 戦利品を獲得した男達の、とても楽しそうな声が辺りに響いていました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になった死体の真横に、
 一匹のカラスが舞い降りました。

  「……」

 カラスは口にくわえる不味そうな生ゴミをその場に投げ飛ばし、
 真っ裸になり、装飾品も全て取り外され、
 産まれたままの姿になっている死体の周りをぐるぐると歩きます。
 そして、カラスはある一点に目を付けました。

  「……カァー!」

 カラスは新鮮な死体を前に、嬉しそうな声を上げ、死体の目玉を突き、食べ始めました。
 真っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、
 目玉すらも失った死体を置き、カラスは不味そうな生ゴミを加え、
 満足そうに飛び立っていきました。



 真っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、
 目玉すらも失った死体の真横を、
 六匹の犬達が通りがかりました。
 犬達は痩せこけ、ギラギラとした獰猛な目を光らせ、死体を舐めまわすように見つめます。

  「グルルルルル……」

  「ウォ~ンッ!!」

  「ハフッ……ハフッ……」

 犬達は、死体とそれに群がるであろうライバル達を交互に見つめています。
 そして―――…

  『ギャルルルルルッ!!!!!』

 ある犬はライバルを阻止しようと、鋭い牙を立て他の犬達に食らいつき、
 ある犬は一口でも肉を口に入れようと、他の犬達を出し抜き、
 ある犬は脅え、その場を退き、
 ある犬は共倒れを願い、その場で待機します。

 醜い争いの末、残った傷だらけの三匹の犬達は、まるで半分こするかの様に、
 別々の位置から死体を食らい始めました。
 死体を食べ終えた犬達は、満足そうに闇夜へ消えていきました。



 真っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなった死体の真上を、羽音を立てながら幾匹もの蚊が舞っていました。

  ブーン―――…

    ブーン――――…

                      ブーン―――…

          ブーン―――……

 蚊達はアスファルトに染み込む鮮血に狙いを定め、一気に急降下を始めました。
 真っ赤だったはずのアスファルトは一気に黒に染まり、
 その姿はまるで、うごうごとひしめく、どでかい化け物の様でした。
 食事を終えた蚊達は、満足そうにその場を離れ、各々次の獲物を求め飛び立っていきました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなり、滴る血の一滴も無くなった骨の真横を、一人の老婆が通りがかりました。

 老婆は骨に気付く事無く、骨の真上を歩き、
 ぺきぺきと音を立ててその場から消えていきました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなり、滴る血の一滴も無くなり、軽くひび割れた骨の真横を、
 自転車に乗った四人の男達が通りがかりました。

 男達は骨に気付く事無く、骨の真上を自転車で通り、
 めきめきと音を立ててその場から消えていきました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなり、滴る血の一滴も無くなり、ほとんど割れてしまった骨の上を、
 十匹のカラスが止まり木にしました。

 カラス達は骨に気付くと、その骨を楽しそうについばみ、砕き、踏みつけて遊びます。
 骨遊びに満足すると、カラス達は次の止まり木を目指して飛んでいきました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなり、滴る血の一滴も無くなり、骨か何か分からなくなった細かい破片の上を、
 六匹の犬が通りがかりました。

 犬達は骨に気付く事無く、その元骨の上を喧嘩しながら通って行きました。



 素っ裸になり、装飾品も全て取り外され、産まれたままの姿になり、目玉すらも失い、
 肉すらも無くなり、滴る血の一滴も無くなり、
 骨か何か分からなくなった細かい粉の様になった物の真横を、
 工事現場のおじさん達が通りがかりました。
 工事現場のおじさん達は不思議そうな顔をして白い粉を見ます。

  「ここは確か亀裂が入ってたはずなんだが……誰かが埋めたのか?」

  「ほんとだ、白い粉が埋められてる……こりゃ結構綺麗に踏み固められてますねぇ。」

  「以前子供がつまづいたからって、俺らが直しにきたのに……無駄足じゃねぇか。」

  「まぁまぁいいじゃないですか。世の中、気付いたらちゃんとこうやって直してくれる、
  奇特で優しい人がいるもんですよ。」

  「っち、まぁ……無駄足だったが、確かにこういうのもいいもんだな。
  埋めた奴の顔が見てみたいぜ。」

  「優しい人なんでしょうねぇ!」

  「さぁな。んなの、埋めた奴にしかわかんねぇさ。」

  「だな。ほら、皆!今日はひとつ仕事が減った!早めに帰るぞ~!」

  『うおぉぉ!!マジっすか!!やったぁぁぁっ!!!』

 仕事の減った工事現場のおじさん達は、亀裂の無くなった地面に満足し、
 満面の笑顔でその場を去っていきました。



                                                   - 完 -

スポンサーサイト

*Comment

なるほど… 

最初のお婆さんのセリフが一番最後の鍵になってるような感じがしました。

結局は土に戻った事になるのでしょうが、その経緯は誰にも分からないままなんですよね。
とっても深い作品だと思いました。

あんなに惹き付けることのできるファンタジーも書けて、こういったしっかりオチが付いている作品までも書ける筆力にはただただ感服致します。

これからも書かれるのを楽しみにしていますね♪

  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/26 22:35分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

もうちょっとオブラートに包めればいいかなとも思ったのですが、
私の言葉のキャパシティが少なく、前回に続きえぐくなっちゃいました(汗)

老婆の言葉!おぉぉ……それを覚えていて下さるとは!
そうなのですよ~、結局ひとつ残らず男の死体は消えてしまうのですが
結果として、善くも悪くも【誰かの役に立った】のです!
男は、神様に迎えられたのでしょうかね~?(*´д`)

最後、男の一言があったのですが、
それを入れてしまうと物語が綺麗にまとまってしまったので、
あえて消してみました(笑)
人それぞれの解釈って、素敵だと思います!
鷹の爪痕様の解釈も、とても参考になりました!

ファンタジーも、短編も、まだまだ未熟者ですよ…(汗)
でも、そう言って頂けると明日の励みになります!
やっとある所に…も、ふたつ出てシリーズっぽくなったので
これからも頑張っていこうと思います_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/26 23:18分 
  • [Edit]

 

誰もかもが役に立てるってことですねw

でも、なんで道に人が死んでるのに・・・

誰も警察よばなかったんだろw

と、考えちゃいましたw
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.10/26 23:38分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

生きている間で、人の役に立ってこなかった男は、
死んで役に立つのでした(*´д`)
それはそれで切ない気もしますが……(汗)

ある所に… は、細かい設定は全て外してあります。
なので物凄くおかしい所や、矛盾点なんかもあるかもしれませんし、
いや、まず警察だろ(笑)って思うのも分かります!
事実、この小説の始まりは、青年が警察を呼びに行くところからでした(´゚д゚)
ですが、それじゃ当たり前過ぎな気がしたのでッ!
突拍子が無くて、あり得なくて、絶対無理なんだけど、
お話として繋がってればいいかなと思ってます(笑)
+ 本当の願い +では、研究者が生身で車のドアひっぺがしますからね!

ですが、そう突っ込まれながら読んで頂けるのも嬉しいですっ!
私だったら即行で卒倒してますね(笑)
これからもどんどん突っ込みながら読んでやって下さい_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/27 05:18分 
  • [Edit]

待ってました 

このシリーズ大好きなので、待っておりました。笑。
前回もそうですが、とても考えられていますね。
「次は何が来るのか?」と推理しながら読んでます。

最期に人の役に立てて良かったね。といった気分です。
あっ、すでに最期の(死んだ)後か。笑。
  • posted by ヒロハル 
  • URL 
  • 2009.10/28 21:40分 
  • [Edit]

ヒロハル様へ 

いらっしゃいませ!

大好きだなんて、嬉し過ぎるお言葉を有難う御座います!!

死ネタ満載なシリーズですが、
そう言って頂けると至福のいたりです(*´д`)

死んで役に立つってどうなのでしょうね(笑)
しかも、役に立つというか、さんざん利用されまくっただけな気も…(汗)

まだ数少ない短編小説ですが、
楽しみながら読んでいただけたなら、幸いです!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/29 19:29分 
  • [Edit]

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

筱

Author:筱
初めまして。
管理人の筱 - シノ - と申します。

現在

『Battle Mermaid』

を綴っています。

どうぞ、
仲良くしてやって下さい!

BlogRanking
↑もし宜しければ、
ひと押しお願いします。

最新記事

最新トラックバック

月別アーカイブ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。