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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 37

 残されたシェリルは、ネスの出て行った扉をじっと見つめる。
 そんな様子に、シェリルの心を汲んだアデットは苦笑しながら言った。

  「ほら、お嬢ちゃん、こっちにおいで。ネスの金でジュースを奢ってやろう♪」

 その声に反応したシェリルはアデットへと視線を移し、再びじっと見つめる。

  「……?お嬢ちゃん、どうしたんだ?」

 不思議そうに首を傾げたアデットに、シェリルはゆっくりと近付き、にんまりとした笑みを見せた。
 アデットの背筋に嫌な汗が伝う。

  「……何を……企んでるんだ、お嬢ちゃん……。」

  「企むだなんて。……アデットさん、ハールウェンまでの地図、下さい。後、森の中の地図も。」

 シェリルの言葉に、しばらくの沈黙が流れた。
 だが、言葉を解したアデットは目を見開いて叫ぶ。

  「………………はぁっ!?何言ってやがる!待ってるって言ったろうが!」

  「私は言ってません。」

  「なっ!」

  「ネスが勝手に聞き間違えただけです。私はネスを追います。地図を下さい。」

 あまりにも単刀直入な言い方に、アデットは驚愕し、二の句が継げない。
 だが、そんな時間も勿体ないと思ったのか、シェリルは大きな目を鋭くてアデットに言う。

  「地図を下さい。」

  「……ッ……脅しても駄目だぞ。地図なんて渡せねぇ……ネスの思いもある。
  俺にネスは裏切れねぇんだよ。」

  「……分かりました。ならいいです。」

  「へ……?」

 あまりにもあっさりと引いたシェリルに、アデットはぽかんと口を開く。
 だが、次の瞬間、シェリルの綺麗な声に乗せられた言葉は、非道なものだった。

  「今から私はネスを追います。ですが、今からではネスの姿は確認出来ないでしょう。
  私は皇国を出、ハールウェンの森目指して歩くことになるでしょう。
  ……運よく辿りついたとしても、道の分からない私は迷子になり、
  森の中でアンデッド達の餌食となって死んでしまうのでしょうね。」

  「…………。」

  「ですが、それはアデットさんのせいじゃありません。
  お気になさらず。では、行ってきます。」

 黒い笑みを浮かべたシェリルに、アデットは深く長い溜息を吐いて言った。

  「……脅しじゃねぇか…………ったく……分かったよ……渡すよ……。
  はぁ……なんつーお嬢ちゃんだ……。あぁ……ネスに殺される……。」

 ぶつぶつと言いながら棚から地図を取り出すアデットに向け、シェリルは優しく微笑む。

  「悪いのは私です。
  アデットさんを脅したからって言えば、ネスはアデットさんを責めませんよ。」

  「……分かってないねぇ……お嬢ちゃんは……。
  理由はどうあれ、地図を渡しちまうんだ……怒られるのは俺なんだよ……。」

  「なら私も一緒に怒られます。」

  「……ネスがお嬢ちゃんを怒るわけないだろ……。
  逆に俺が半殺しだよ……ったく……ほらよ。
  ……地図渡したんだから、ちゃんと生きて帰れよ。」

 二枚の地図をシェリルへと手渡し、アデットは不安そうな表情を表す。
 だが、それとは裏腹にシェリルの表情は満面の笑みだった。

  「ありがとうございます、アデットさん!」

  「はぁ……強敵だって聞いて何で向かおうとするかねぇ……。
  ネスに言われたとおり、のんびり見物でもしてりゃいいのに……。」

  「……私だって、冒険者ですもの。」

 嬉しそうに地図を抱き締めるシェリルに、アデットは苦笑を浮かべ、棚から小さな瓶を取りだす。
 そして、その小瓶をシェリルへと手渡した。

  「?」

  「お嬢ちゃんには敵わねぇな……。……これは怪我を癒す聖水だ。
  多少の傷なら瞬間的に治っちまう。危なくなったら使いな。」

  「アデットさん……」

  「……高いんだからな?それ。
  でもまぁ、命は金じゃ替えられねぇ……。
  お嬢ちゃんの命の代わりになるなら、安いもんだ。……ちゃんと帰って来るんだぞ。」

  「はいっ!ありがとうございました!!」

 シェリルはめいいっぱいの感謝の気持ちを込め、アデットへと一礼する。
 そして、元気な足取りでギルドを後にした。
 シェリルの出て行った扉を確認しながら、アデットは複雑そうな表情を浮かべる。

  (……渡してよかったのかねぇ……?
  このまま、お嬢ちゃんを押さえ付けてでも行かせない方が良かったのかも……。
  ……でももう遅いわな……。はぁ……マジでネスに殺されちまうぜ……。)

 アデットの深く吐いた溜息は、ギルドの喧騒に消された。
 その時―――…

   ジリリリリリ ジリリリリリッ

 壁に立てかけてある電話がけたたましい音を立てて鳴る。
 アデットはちらりと電話に目をやり、面倒臭そうに受話器を取った。

  「はいはい、こちら皇国『リムドア』ギルド。どちら様ですか。」

 やる気のない声のアデットとは違い、電話の主は緊迫した声で言う。

  『……魔国『ユグドラ』政府機関の者だ。
  緊急事態発生……自我を持つアンデットの誕生を確認。
  ……一人は15程の少年、もう一人は20歳は超えていそうな青年だ。
  命からがら逃げて来た者達の情報だ。信用に足る。
  皇国『リムドア』行政機関はまともに取り合ってはくれなかった為、
  こちらのギルドに連絡した。魔国『ユグドラ』は緊急体制を敷く。皇国も気を付けろ。』

 ただならぬ雰囲気に、アデットの表情が曇る。

  「……自我……?喋れるアンデッドとは別物か?」

  『別物だ。アンデッドは本能の赴くままに……力のままに戦う。
  だがそのアンデッド二体は……確かな技術を持っているらしい。……気を付けろ。』

  「……了解。情報、感謝する。
  後……皇国の上層部が腐れてて、マジですまねぇな……。」

  『いや、端から分かっていることだ。
  冒険者ギルドの店主であるお前がしっかりしているから問題はない。……ではな。』

 チンッという音を立て、受話器を本体に掛ける。
 アデットは何かを考え込むようにうつむき、険しい表情を浮かべた。

  (……自我を持つアンデット……。また性質の悪いもんが生まれたな……。)

 口から無意識に溜息が漏れる。
 アデットは今後の予定を立てようと、今ある仕事の整理を始めた―――…


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*Comment

 

ああ、アデットさん後で、ネスに相当怒られるでしょうね~
 
シェリルがあんな
黒笑みをするとは思いもしませんでした(゚□゚;)
素直で頑固なそんなシェリル大好きです^^

リレー小説お疲れ様でした!
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.11/20 19:20分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
アデットは怒られるだけで済むとは思ってないですよ(*´д`)
半殺し覚悟です(笑)

シェリル、ネスやハクの為ならちょっとくらい脅す覚悟はついたようです(笑)
ネスの影響でしょうかね(´っω・`)
素直が故に、頑固……。
そんなシェリルを気に入って頂けてうれしいです♪

リレー小説終わりましたよ~!
続きが楽しみですね♪
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/20 21:48分 
  • [Edit]

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