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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 35

 受付用紙を記入しながら、ネスとディードリッヒの戦いをちらりと確認するシェリル。
 よもや勝敗は決したも同然だと言うにも係わらず、
 ディードリッヒは諦めることなくネスに向かっていった。

  (なんであんなにネスを敵視するのかな……。)

 悲しい気分になりながらも、シェリルは受付用紙の空欄を埋めていく。
 不意に、シェリルの視界に何者かの姿が映る。
 ゆっくりと顔を上げると、そこには店主アデットの姿があった。
 アデットは何も言うことなく、ただじっとシェリルの顔を見つめている。

  「……あの……何か……?」

 訝しげな顔でシェリルを見る店主に、シェリルは少し怯えた表情を返した。
 店主は小さな溜息を吐いて言う。

  「可愛らしい顔に綺麗な声。
  座ってりゃお人形さんみたいなお嬢ちゃんが何で冒険者になりたがるんだ?
  功績や金がなくても、その面なら何の不自由もないだろうに。
  ちょっと男に優しくすりゃすぐ金出してくれるぜ?」

  「…………はぃ?」

 突然何を言い出すのかと、シェリルは目を見開く。
 そんなシェリルに構うことなくアデットは続ける。

  「金持ちな男落として楽な将来を選べばいいのに。勿体ねぇやなぁ……。」

 感慨深げに双眸を潜めるアデットに、シェリルは凜とした表情を作り、きっぱりと言う。

  「そんなの、男性に失礼です。それに、私にはやりたいことがあるから冒険者になりました。
  何か問題でもあるのですか?」

 あまりにも厳しい表情で言われた為か、
 アデットは罰の悪そうな顔を作り小さく首を左右に振る。

  「いや、冒険者になるかならねぇかは自由意思だ。問題はない。
  だが……皇国ギルドで女冒険者は初めてだ。
  昔は女も何人か来たりはしてたんだがな……
  ギルドに入るなり男共の気迫に負けて帰っちまうんだよ。
  こんな中にずかずか入って来て俺に食いつき、
  ディードリッヒを前に手ぇ広げた女は初めてだ。
  驚くのも無理はねぇだろ?……でもまぁ……ちぃと期待してるのもあるんだぜ?
  頑張ってくれよな。お嬢ちゃん。」

 ぽんぽんとシェリルの頭を軽く叩いたアデットに、満面の笑顔で返す。

  「はい!頑張りますっ!!」

  「いい返事だ。ってことで、そろそろ紙書き終えてくれないか?
  このままじゃディードリッヒに店潰されちまうぜ。」

 アデットのげんなりとした顔を向ける先へ、シェリルも顔を向ける。
 そこには悲惨な光景が広がっていた。

  「…………ぅゎぁ……。」

 思わずあげた声。
 シェリルの目に映ったのは、切り刻まれ細切れになったテーブル、
 真っ二つになった椅子、割れて散乱するガラスコップ達。
 散々な状況にアデットは深い溜息を吐いた。
 シェリルは早く事態を収拾させようと、紙へ向かう。

 だが不意に、ネスをぼんやりと見つめていたアデットが口を開いた。

  「お嬢ちゃん、ネスが冒険者だったこと、知ってたかい?ハクと組んでたこと、知ってるかい?」

 突然の質問に、シェリルは少しだけ思案し小さく首を振る。
 アデットは、そうか……と小さく呟き、シェリルの瞳を見つめて言った。

  「昔、皇国には最強の冒険者が三人いた。ハクとネス……そして……いや、名前は控えよう。
  英雄の名前はここで軽々しく言っていいもんじゃないな。そうだな……名無しでいいか。」

  「……。」

 シェリルは紙を書きながら、アデットの話しに耳を傾ける。

  「こいつらは仲が良くてな。
  いつも三人で酒を飲み、仕事に行き、必ず成功を得て帰ってくる。
  三人は皇国の英雄だったんだ。……だがな……」

 アデットの表情が一気に曇り、寂しそうな顔を作り出す。

  「名無しが……あいつらを置き去りにして、
  一人でアンデッドドラゴン退治に行っちまったんだ。
  俺に……絶対に帰って来るって伝言だけ残してな。」

  「……仲良しだったのにですか……?」

 シェリルが鉛筆を止め、アデットの顔を大きな瞳で捉えながら聞く。
 アデットはコクリと頷き、苦笑して言った。

  「名無しの唯一残された家族に、妹がいたんだがな。その妹がアンデッドに殺されちまった。
  名無しは我慢の限界だったんだろうな……。
  これは私情だからって……単身ユグドラシア大陸へ行って―――…帰らぬ人になった。」

  「……。」

 シェリルは紙に視線を戻し、力なく冒険者受付用紙に記入していく。

  「その訃報が届いた時、ハクは余程衝撃的だったんだろうな……。
  ハクの家族もアンデッドに殺されてたし、ハクに頼れるのはネスと名無しだけだった。
  その名無しが死んだんだ。……ハクにはもう、ネス以外頼れるものが無かった。」

  「……。」

  「だからあいつはネスを突き離したんだ。
  冒険者止めろって言って……アンデッドドラゴンは一人で倒すって言って……。
  ネスだって意地もある。絶対に嫌だと言い張った。
  でも……無理だと悟ったんだろうな。
  ……ネスは優しい奴だから……ハクの思いを汲み、引いた。」

  「……あの……私……もしかして……ネスに酷な事をしてますか……?」

 シェリルは紙から顔を上げ、アデットを見、不安そうな表情を作る。
 冒険者を辞めたネス。それを自分の我が儘で再び冒険者にさせようとしているのだ。
 シェリルは一気に罪悪感に駆られる。が、アデットは優しげな微笑みを見せて言った。

  「ネス、多分嬉しいんじゃねぇかな。」

  「……ぇ?」

  「また冒険者に戻れることが……さ。
  名無しは国の為に、ハクは復讐の為に、そしてネスは……守る為に戦ってた。
  守れる対象が出来たのは、多分あいつにとっては嬉しい事だと思うぜ。
  だから、お嬢ちゃんが気にすることじゃねぇよ。」

  「……そうだと……いいんですが……。」

 カチャリと音を立て、シェリルは鉛筆を置く。
 そして書き終えた紙をアデットへと手渡した。

  「宜しくお願いします。」

 少し元気の無くなったシェリルからアデットは紙を受け取り、小さく溜息を吐いた。

  「今の話聞きゃ、ビビって引くかとも思ったんだが……
  どうにもお嬢ちゃんの決意は固そうだな。ったく……絶対に死ぬんじゃねぇぞ。」

  「はいっ!」

 アデットの言葉に、シェリルは笑顔で返した。
 そして急いでネスへと声を掛ける。

  「ネス、終わりました!!ギルド壊すのやめて下さいぃぃっ!」

 その言葉を待ってましたとばかりに、
 ネスはディードリッヒの体を一気に槍で叩きつけ、失神させた。

  「俺の負け~♪よし、後でジュース奢ってやっからな。」

  「……なんか卑怯ですね。」

  「そうか?まぁ、気にすんな。」

 楽しそうに笑うネスの後方には、ディードリッヒの破壊した元はテーブルであったものや、
 椅子であったもの達が散乱する光景が広がっていた―――…


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*Comment

 

 ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノこんばんわ♪二度目のお邪魔です(o ̄∀ ̄)ノ”ぁぃ
 うう…そういう事情がネスとハクと名無しさんにはあったんですね(泣)
 守れる者ができて冒険者に戻れたネス、ハクは復讐かぁ…
 みなさん壮絶人生歩んでますね(/ー ̄;)シクシク
  • posted by 蘭陵邑 
  • URL 
  • 2009.11/18 20:00分 
  • [Edit]

 

こんばんわ~
ネスが冒険者を辞めたの真実に驚きです!!

はじめは、名無しさんは妹の為に、
続いて、ハクは名無しさんの仇を討つため、
ネスは再び戦うため!
運命が錯綜する中に、
シェリルも入っていくんですね。。。
 
壮大なスケールで進む物語っ
次も楽しみにしてます^^
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.11/18 21:40分 
  • [Edit]

蘭陵邑様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
二度目の訪問、ありがとうございます~♪
ハクと名無しはなかなか可哀想な奴らなのですよ~……
名無しは妹さんを、ハクは家族全員アンデッドに殺されてますからね!
唯一殺されてないのが、ネスの家族ぐらいでしょうか。
家族や大切な人や友を守る為にネスは戦っております♪

なかなか苦しい時代に生きている子達なので、
相応の過去を付けてあげよう!って考えたらこうなりました(汗)
私だったらめげてしまいそうですが、
彼等は何とか頑張ってくれているようです(*´д`)b
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/19 05:17分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
ハクに、『冒険者辞めやがれっ!』って言われて犬みたく落ち込んで、
渋々ながら辞めていったネスです(笑)
気の毒で仕方がないですよ……(´・ω・`)

ネスはハクとシェリルを守る為に再び冒険者になったわけですが、
果たしてハクに受け入れてもらえるのやら(汗)
シェリルもシェリルで、なかなか複雑な人生を歩む男に恋したものです……。

壮大になり過ぎて、まとめられなくならない様気をつけます!(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/19 05:23分 
  • [Edit]

 

こんばんはっ!とりあえずここまでネスがかっっっこよすぎるのですがどうしたらいいですか?(真剣)

ネス……あなたって人は優しくてシェリルとの会話が可愛いだけじゃなく強くかっこよく……あああああもうどんだけ素敵すぎれば気が済むんですか!なんでシェリルはネスに惚れないのでしょう(爆)

それにしても、シェリルとネスとハクが三人揃う日が楽しみなような、色んな意味でドキドキのような……。
シェリル・ネス・ハクの関係は一体どうなってしまうのでしょう?シェリルはネスとくっつくのかハクとくっつくのか……残された(?)方は一体どうしたら……!

気になるので、ドキドキしながらまた読ませて頂きますね^^
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.11/23 22:00分 
  • [Edit]

神田様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
ネス大活躍ですよぉ……!!
この子が活躍し過ぎると、正ヒーローであるはずのハクが、
物凄く影薄くなる気がするんですが、
そんなのお構いなしとばかりに腕を奮っております(笑)

シェリルはネスの事を、
きっと『とても優しい命の恩人さん』くらいにしか思ってないはず……。
ネスとシェリルに愛が生まれる日は来るのでしょうかね~♪

三人が出会う事になったら……見事な三角関係です(笑)
ドロドロしちゃわないか心配ですね★
残された方はすっごい切ないですよねぇ……。
けどまぁ、ハクがシェリルに惚れないかもしれませんし、
そうなったらネスが圧倒的に有利なので、
わくわくしながら書いていきたいと思います(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/24 05:19分 
  • [Edit]

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