冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 27

 人間達が集中するピーク時を過ぎ、だいぶ人の減った東通り。
 ネスのおかげで洋服を手に入れたシェリルは、
 歩きやすい靴と、ずり落ちないスカートに大満足だった。
 ひらひらのスカートを深緑の髪と共に揺らす。
 無邪気に喜ぶシェリルに、ネスの顔が思わず緩んだ。
 だが、恥ずかしさを隠す為か、心なしつっけんどんにシェリルへ言う。

  「シェリル、あんまはしゃぐとこけるぞ。
  ただでさえ危なっかしい足取りしてんだから。」

 だが、シェリルはそんな言い方を気にもせず、満面の笑顔をネスへと見せる。

  「えへへ、ごめんなさい。何だか嬉しくて!」

 服一つでここまで喜んでくれるのなら安い物だと、ネスは心の中で思った。
 だが、あえて口にはせず、そう。とだけ返す。顔は少し赤らんでいた。
 シェリルは嬉しそうな笑顔のままネスに問うた。

  「ギルドは何処にあるんですか?」

  「ん~、もうちょいかな。その前に武器買って行くぞ。」

 ネスの提案に、シェリルは小さく首を傾げる。何故?と言わんばかりの表情だった。
 ネスは自分の横に付いたシェリルに言う。

  「魔法は詠唱があるからな。武器なら咄嗟の判断で攻撃を受け流す事も出来る。
  ひとつくらい持っておいて損はねぇさ。」

 ネスの提案に、シェリルはなるほどと頷いて見せた。

  「そう言われれば確かにですね!はぅぅ……また借金増えちゃう……。」

  「気にすんな。どうせ俺から借りてるんだしな。のんびりでいい。」

  「……ネスって本当に優しいですね。彼女は凄く幸せなんだろうなぁ。
  ねね、ネスの彼女ってどんな人ですか?」

  「……………………へ?」

  「?」

 シェリルの突然の言葉にネスは詰まる。
 停止した思考を懸命に働かせ、シェリルの言葉をかみ砕いて吸収した。
 そして引き攣った様な表情を浮かべ、言う。

  「なんか、彼女いる設定で進められてるみてぇだが……俺、彼女なんていねぇよ……?」

  「……え、嘘だ。」

  「即否定かよっ!?彼女なんているわけねぇだろ……。ぅ……マジだってば!!
  そんな疑い溢れた眼差しで俺を見るな!!」

 じとーっとした視線を向けられ、ネスは焦る。まるで無実を主張する犯罪者の様であった。
 シェリルはその主張を訝しげに聞いて言う。

  「カッコいい、強い、優しい……三拍子揃って彼女がいないわけがないです。」

  「なんだよその法則!!
  必ずしもそれに当て嵌まると思うなよっ……俺は本当に彼女なんていねぇよ……。
  いたらシェリルの傍なんかにゃいれねぇだろうが。」

  「むぅ……確かに。彼女作らないんですか?ネスカッコいいのに、勿体ないですよ?」

  「作りたくなったら作るさ。それまではいらねぇな。」

 小さな苦笑を浮かべるネスに、ふ~んと素っ気ない返事を返す。
 その素っ気ない返事をさして気にもせず、ネスはさっさと先へ進もうとするシェリルを呼び止めた。

  「ほら、何処に行ってんだ?武器屋着いたぞ。」

  「あ、はいっ。」

 慌ててネスの下に戻りネスと共に煉瓦で出来た武器屋に入る。

 扉を開ければ、そこは別世界の様であった。
 鉄を打ち付ける音、鉄を熔かす炎、熱気に溢れた中、掛け声を飛ばす筋肉隆々の男達……
 今まで海で暮らしてきた為、暑さの苦手なシェリルは武器屋の熱気に立ちくらみを起こした。
 よろめくシェリルの体を、ネスは急いで支える。

  「お、おい!大丈夫か?!……シェリル、もしかして暑いの苦手?外で待ってていいぞ。」

  「う……ん……そうさせて……もらいます……。」

 暑さで朦朧とする意識の中、シェリルはふらふらとした足取りで外へと出た。

  (そんな暑いかな?確かに外よりは幾分暑いが……ふらつく程でもない気が……。
  …………変な女だな、やっぱ。)

 ネスはシェリルの出て行った扉をちらりと確認し、火花散る工房へと足を踏み入れる。
 顔見知りなのか、ネスは作業員達と気軽に挨拶を交わし、一人の男の背に声を掛けた。

  「いよう、おやっさん。」

 声を掛けられた男はゆっくりと振り返り、燃える様な赤い瞳でネスを捉え、低い声で言った。

  「ネス……か。久しいな……。」

  「おう、久しぶり。
  なぁ、おやっさん、早速で悪いが短剣か中剣くらいで、いいの一本作ってくれねぇかな?」

  「……さっきの女が使うのか……?」

 ネスは少し目を見開き、苦笑しながら頷く。

  「見てたのか。あぁ、そうだよ。あの子が使う。」

 その言葉に、男は深く考え、言った。

  「…………強く……美しい短剣なら既にある……。
  だが……魔国『ユグドラ』からの渡来の品だ……癖があるんだ……。」

  「へぇ、興味あるな。見せてもらっていいか?」

 男はその言葉に何も返しはしなかったが、ゆっくりとした足取りで奥の部屋へと消える。
 数分経ち出てきた男の手には短剣くらいなら入れそうな細身の木箱が握られていた。
 男は木箱をネスへと手渡す。

  「開けてみろ。」

 男の言う通り、ネスは木箱の蓋を取る。
 そこには滑らかな布に巻かれた短剣の刃がちらりと見える。ネスは布を外した。

 姿を見せたのは銀と金で出来た短剣。
 所々にサファイアの様な宝石が散りばめられ、きらきらと輝きを放っていた。

  「綺麗……だな……。」

  「だろう。……だが、未だに買い手がつかん。」

  「へぇ……何で?」

 ネスの質問に男は訝しげな表情を浮かべ、小さく溜息を吐いた。

  「持ってみれば分かる。」

 促された通りに、ネスは木箱から短剣を右手に取り、持った。
 だが、その瞬間……

  「!?」

 がくりとネスの右肩が下がる。

  「お……重ッ……」

 地面につくギリギリの瞬間に両手で支え、傷付ける事を防ぎはしたが、
 今にも落としてしまいそうな程である。
 短剣の重さは、体を鍛えているネスと言えどもかなりの重さを感じるものであり、
 シェリルには持てないと容易に想像が付くものだった。

  「おやっさん……こりゃあ女にゃ無理だわってか、男も無理だ……ッ
  ちょ、箱くれ箱!重い!!」

 ネスの言葉に、男は慌ててネスの落した木箱を拾い、差し出す。
 ネスは最後の力を振り絞って木箱へ短剣を戻した。
 その瞬間、探検は重さを失い、静かに木箱の中へと納まった。
 深く溜息を吐き、男へと言う。

  「もうちょっと軽いやつがいいかな……」

 苦笑しながら言うネスに、男はまるで何かを思い出すかの様に話した―――…


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*Comment

 

ですよねー

重いのをシェリルちゃんに持たせるなんて信じられないです。

あぁ、重さによろめくシェリルちゃんが頭に…
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.11/11 00:13分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

ネスが持って地面に着くギリギリで止めたわけですから、
シェリルが持ったら多分軽くガシャーンッ!です(笑)
一生懸命持ち上げようとして、持ち上がらなくて、
半泣き状態ですよ。きっと(*´д`)b
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/11 05:32分 
  • [Edit]

 

 お( ̄ー ̄ )ノ は( ̄ー ̄)ノ よっ(  ̄ー ̄)ノ ございます♪
 思い剣…シェリルには確かに無理ですよ、ネス。
 ただでさえ危ない足取りですから。
 しかし、格好いいのに彼女がいないとは…、うちの清雅もそうですが、どうしてでしょう?
  • posted by 蘭陵邑 
  • URL 
  • 2009.11/11 09:46分 
  • [Edit]

蘭陵邑様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!!
ネスがギリギリ持てるくらいですからね……
シェリルには絶対に無理かと思われます(´・ω・`)

ネスに彼女がいないのは、最低な女としか出会ったことがないからです♪
シェリルと出会ってかなり感動したようですよ?
こんな女もいるのか……って(笑)
女運が凄く悪い様です!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/11 18:26分 
  • [Edit]

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