冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 21

 シェリルがよく眠っている頃、海底では大捜索が始まっていた。
 いつもは静かな海底が、今日ばかりは人魚達が泳ぎ回り、魚達もうろたえている。

  「ガドット様!南西の海はあらかた捜しましたが、シェリル様の行方は見当たりません!!」

  「ガドット様!北の祠と東の祠を捜しましたが、シェリル様のお姿は……」

 ガドットの前にひざまずき、次々と言う人魚達。
 そんな人魚達に向かい、報告を静かに聞いていたガドットが遂に声を荒げる。

  「えぇぃっ!!『見付かった』の報告以外はいらん!!!捜せ……っシェリルを捜せ!!!」

  『はっ、はい!!』

 激怒するガドットに人魚達は怯え、畏怖し、洞窟から飛び出す。
 傍に付いていた長女、リアナがガドットに優しく言った。

  「お父様……落ち着いて下さいまし。シェリルは、きっと無事です。」

  「リアナ……俺は間違っていたのか……?
  シェリルの願いを叶えてさえやれば、こんな事にはならなかったのか……?
  シェリル……無事で……お願いだから、無事でいてくれ……。」

 懇願する様なガドットの声に、気丈に振る舞うリアナの瞳から綺麗な涙が浮かぶ。
 リアナはガドットをそっと抱きしめて言った。

  「シェリルは私達の中で一番魔力の強い子です。
  危険があったとしても、持ち前の魔力と技術力で退けられるはず。
  悲観せず、シェリルの帰りを待ちましょう。」

  「……。」

 リアナにそう言われても、心の晴れないガドットはうつむき、深く溜息を吐く。
 リアナは悲しそうな顔で、だが、冗談の様に呟いた。

  「お父様はシェリルが大好きですもんね。」

 その言葉に、ガドットは急いで顔を上げ、リアナを見て慌てて言った。

  「俺はお前らも好きだ!!家族なんだから、当たり前だろうっ!?」

 あまりにも早い反応に、言われたリアナは一瞬目を見開き、ついつい噴き出す。

  「……ぷっ……あははっ、お父様、慌て過ぎです。」

  「む……むぅ……」

 不服そうなガドットに、リアナは優しく微笑む。

  「大丈夫、皆分かってますから。……シェリルは亡きお母様にそっくりですものね。
  魔力も、顔も……性格も。」

  「……。」

  「お父様のお心は分かっているつもりです。
  ……人間に殺されたお母様を思い出しておられるのでしょう……?
  でも、まだ赤子だったあの子はそれを知りません。
  何をやっているのか知りませんが……戻って来た時は、寛容なお心で接して上げて下さい。」

  「戻って来るなら何でもする……土下座もする、謝辞も述べる……何でも……。
  頼むシェリル……戻って来てくれ……。人間になど……ッ」

  「お父様……」

 ガドットの悲痛な声が洞窟に響く。
 娘が一人欠けた海底に、海王たる人物の悲しみの涙が流れた。
 と、その瞬間、聞き慣れた声がガドットの耳をつく。

  「と~さまぁ!」

  「お父様、ただいま戻りました。」

 四女、リィリアと次女、セリディアが洞窟へと戻ってきた。
 リィリアとセリディアは真剣な瞳でガドットの前にひざまずく。
 セリディアは震える声で言った。

  「……シェリルの居場所……分かりました……。」

 その言葉を聞いた瞬間、ガドットの瞳が力を帯びる。
 だが、ガドットに言葉を発する暇を与えず、リィリアが続けて言った。

  「シェリルはね……外界……陸に上がっちゃったよ……。」

 その言葉に、ガドットとリアナはこれ以上ない程に目を見開き、放心した。
 震える声でガドットは二人に聞く。

  「……な……ぜ……?……何処で……仕入れた情報だ……?」

 ガドットの脳裏には愛しき妻を失った光景が思い描かれる。

 ガドットの妻、姉妹達の母は、大らかで、誰にでも優しい美しき人魚だった。
 だがある日、岩場で歌を歌っている最中、下賤な人間に捕獲され、
 『人魚を食らえば永遠の命が得られる』という迷信を実行に移したのだ。

 その事実を知ったガドットは、悲しみと怒りに暮れ、海を荒らし、うねらせた。
 魚を避難させ、海を赤く染め、徹底的に海の怒りを叩きつけたのだという。

 後にこれが、皇国『リムドア』に飢餓をもたらすと知った上で―――…

 ガドットの脳内では最悪の展開が流れ続けていた。
 愛しい娘が、また人間の手に掛けられるかもしれない事態に、顔面蒼白である。
 目が泳ぐガドットに、セリディアがしっかりとした口調で言う。

  「……情報源はこの者です……ミィディ、連れておいで。」

  「はい。」

 洞窟の外から返事が聞こえる。
 三女、ミィディは鎖で一人の老婆を縛り付けたまま、ガドットの前に差し出した。
 その老婆を前に、ガドットは絶句する。


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