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冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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+ ある所に… + 本当の願い +

 『 ある所に… 』 シリーズ第一話


  + 本当の願い +



 ある所に、ボコボコに凹んだ高級車が一台停まっていた。
 黒塗りのその車は、乗り手もなく、鍵も無く、ただ一枚の白い紙が貼られているだけ。
 その紙にはこう書いてあった。


  - 燃やして下さい -


 ある青年の男が、その車の前を通りがかった。
 青年は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「燃やせって……こんな所じゃ無理だろ~……。
  ってか、燃やすなんて勿体なくねぇ?鍵は無いのか……おっ、このエンブレムかっくいい。
  燃やしていいって書いてんだし、貰って行っても構わねぇよな♪」

 青年は高級車のエンブレムをもぎ取り、意気揚々とその場から姿を消した。



 ある中年のホームレス男が、そのエンブレムの無くなった車の前を通りがかった。
 中年は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「燃やせ……ねぇ?
  ん~……何処の車だぁ?……おお、この窓ガラス、外れそうだな。
  段ボールの家に付けて見るか。他の奴らにも分けてやろう。」

 中年は全ての窓とミラーを取り外し、ほくほくとした顔でその場から姿を消した。



 ある中年の開発者の男が、そのエンブレムが無くなり、
 窓ガラスとミラーの外れた車の前を通りがかった。
 中年は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「ふぅむ……燃やすと言っても今のご時世、タダじゃあないからねぇ……。
  それよりボロボロじゃないか……ん?そうだ、このドア……私の未来研究に役立てるとするか。
  燃やせと書いているくらいだからいらないだろう。いやぁ材料がタダで手に入るとはな。」

 中年はドアをこじ開け、破壊し、四枚のドアを持ち、幸せそうな顔でその場から姿を消した。



 ある屈強な青年の男が、
 そのエンブレムが無くなり、窓ガラスとミラーとドアの外れた車の前を通りがかった。
 青年は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「……ボロボロじゃん。粗大ゴミだろ、これ……。
  ん……待てよ、このタイヤ、俺のとこのパンクしたやつと交換出来そうだな。
  にっしし、いっただきぃ♪」

 青年はタイヤを四つ取り外す。それを軽々と担ぎ上げ、満足そうな表情で姿を消した。



 ある中年の主婦女性が、
 そのエンブレムが無くなり、窓ガラスとミラーとドアが外れ、
 全てのタイヤが無くなった車の前を通りがかった。
 中年は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「あら、やぁねぇ……プラスチックは別だって教わらなかったのかしら。
  環境破壊よ。燃やしちゃ駄目よねぇ……。」

 中年は車の中からプラスチックだけを取り出し、中身の液体を全て捨て、
 怒る気持ちを抑え、その場から姿を消した。



 ある小さな薄汚い子供達が、
 そのエンブレムが無くなり、窓ガラスとミラーとドアが外れ、
 タイヤとプラスチックの無くなった車の前を通りがかった。
 子供達は紙を見るなり、黒塗りの高級車をぐるりと見回す。

  「おい!見ろよ!金が転がってるぜ!」

  「おっ、マジだぁっ、鉄だぞ鉄!売りに行こうぜ~!」

  「やったぁ、今日は白いお米食べれる~?」

  「食べれるぞ!一週間くらい食べれそうだ!!」

  「わぁいッ!」

 子供達は両手一杯に鉄を抱え、夕食を思い、嬉しそうにその場から姿を消した。



 あるやつれた青年の男が、
 そのエンブレムが無くなり、窓ガラスとミラーとドアが外れ、
 タイヤとプラスチックも無く、車体すらも無くなってしまった、
 元は車であった物の前を通りがかった。青年は紙を見るなり、カクリと首を傾げる。

  「ん……何だこの紙……水に濡れて読めないじゃないか……。
  ……あれ……この臭い、水じゃない……ガソリン……?」

 青年は大地にぶち撒かれた液体を手に救い、臭いを嗅ぐ。
 それが確かにガソリンである事を確認すると、青年は嬉しそうに満面の笑顔を浮かべた。

  「こ……これは……これは神の思し召しか!!神がっ神が俺を救ってくれる!!
  取引先の相手を殴りつけ、会社に見捨てられ、
  他の女と少し遊んだだけなのに恋人にも見捨てられ、
  むしゃくしゃして凹ました車は何処かへ消える……
  ギャンブルに打ち込んだ俺は家族にすら不必要だと宣告された……。
  そんな可哀想な俺に神が救いの手を差し伸べてくれた!!!!
  ああっ、神よ!俺は貴方の指示に従いますっ!有難う!有難う!!」

 青年はガソリンに体を横たえ、ゴロゴロと体を擦り付ける。
 びしゃびしゃになった体……青年はへらへらと笑いながら懐からライターを取り出す。

  「ひへへ……これで……これで終わる……終わるんだ、終わるんだぁあぁぁぁぁ!」

 青年はそう言うと、勢いよくライターを擦った。
 その瞬間、ライターの火が勢いよく広がり、青年の体を包む。
 青年はゲラゲラと笑い、炎に塗れる体でその場から姿を消した ―――…


 ひらひらとガソリンに塗れた紙が舞う。
 大地へと紙がゆっくりと落ちた。
 何の文字も読み取れなくなったはずの紙に、文字が浮かび上がる。


  - 燃やしてくれて有難う -



                                                   - 完 -

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*Comment

 

サイト改装?おめでとうございます!ラウディやシエルが見られなくなってしまったのは残念ですが、筱様の新しい小説もこれから楽しく読ませていただきますね!

そしてこのお話は、何だか哀しい、でも、最後の有難うという言葉に救いがある気もする、不思議なお話でしたね~……。
車ももう、全てを終わりにしたくて燃やされることを願っていたのでしょうか?浮かび上がった文字が切ないです……><
でも、個人的には、車が最後、色んな人の役に立って(子供たちが嬉しそうに鉄を持って帰ったり)よかったのかなあ、とも思います。

「ある所に~」で始まるシリーズっておもしろそうですねー、これから、ある所にどんなものが出てくるのか楽しみです^^

では、また遊びに参りますね!
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.10/11 15:42分 
  • [Edit]

神田様へ 

いらっしゃいませ!

サイト改装有難う御座います!
ラウディとシエルとキーリには土下座して謝ってきました!!
危うくラウディに半殺しにされそうでしたが、
シエルが助けてくれたので、生きてます……!!
新しい小説の方、頑張っていきますので、
これからも末長く仲良くしてやって下さい_(._.)_

『ある所に…』シリーズ第一段「本当の願い」は、
ふたつの意味が隠されていますよ!
ひとつは神田様の言う通り車が「もう疲れたから燃やしてくれ……」と。
そしてもうひとつは……復讐です。最後の男への♪
ふふふ……男の言葉に、むしゃくしゃして凹ました車…
というのがありますが、それが主人公である車です。

自分を、そして男を、燃やしてくれて有難う。なのです(*´д`*)
あまり目立たせないように書いてみたので、
さぞや分かりにくいだろうと思います!
今後も、こんな風に遠まわしに、
分かりにくく書けていけたらいいなぁと思ってます(ぇ?

性格上、えぐい物が多くなりそうですが、
たまには可愛らしい物も書いてみたいと思います(汗)
いつになるやら知れませんけれども!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/11 21:01分 
  • [Edit]

 

筱さんお久しぶりです。
サイトリニューアルしたんですねっ。
雛ではなくなったのですね♪おめでとうございます☆
不思議なお話ですね。
車が満足したのでしょうか?それとも紙が満足したのでしょうか?ごめんなさい、読み取れませんでした…。
物語の進行の仕方が絵本というか童話のようでとても読みやすかったです。
シリーズなんですよね?これから楽しみです♪

P.S 以前のお話はもう読めないのでしょうか…?
  • posted by 紫桜 凛 
  • URL 
  • 2009.10/14 15:23分 
  • [Edit]

紫桜様へ 

いらっしゃいませ!

お久しぶりです、紫桜様ぁぁぁっ!!
そうなのですよ~ッリニューアルしちゃいました!
雛が巣立ち立派(?)に冬鳥になってくれました(笑)

このお話は、お好きなように取って下さって構いません♪
何が正解かっていうのは何ひとつとないお話なので!
解釈は人それぞれです。
その為にこのお話は淡々に、複雑チックにしています(笑)

以前のお話……一応非表示状態で保存していますので、
長編は無理ですが、もし何か過去ので読みたいのがありましたら
期間限定でオープンしたいと思いますッ。
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/14 19:16分 
  • [Edit]

はじめまして 

はじめまして。
鷹の爪痕様のリンクからやってまいりました。
「三流自作小説劇場」のヒロハルと申します。

先を期待させる始まりといい、最後のオチといいとても面白かったです。
次を楽しみにしております。

ヒロハル様へ 

いらっしゃいませ!

初めまして、管理人の筱と申します!

おおぉっ、ある所にシリーズを読んで下さったのですね!!
面白かったとおっしゃって下さるその広きお心に感謝です(*・ω・*)
このお話は最終的に何が言いたいのか分かりにくい様にしているので、
ヒロハル様がどのように取られたのかも気になります!(笑)
楽しんで頂けたようで、本当に嬉しい限りです!

シリーズ物のはずなのに、
ひとつしかない状況を何とか打開しなければと思ってはいるのですが、
なかなかタイピングが進まないです(汗)
こんなやりっ放しな作者ですが、
もし宜しければ生温かく見守ってやって下さい!

コメント、有難うございましたッ!!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/21 19:29分 
  • [Edit]

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