冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 20

 森を抜けると薄ぼんやりとだが皇国『リムドア』が見えた。
 シェリルは初めて見る大国に心を躍らせる。
 だが、皇国に辿り着くには眼前に隙間無く広がる砂の海、砂漠を横断しなければならない。
 ネスはシェリルをしっかりと抱え直し、笑顔で言う。

  「もうちょいで着くからな。単調な景色でつまんねぇだろうが、辛抱してくれ。」

 そう言うと、ごつい手でシェリルの頭を一度だけ撫で、砂漠を歩き始める。
 シェリルは辺りを見回し、ネスに聞いた。

  「砂の海ですね。初めて見ました。」

 興味深そうな表情で砂漠を見渡すシェリルに、ネスは複雑な表情を作り上げて言う。

  「確かに、魔国には砂漠なんてなさそうだな。……昔はここも森だったんだがなぁ……。
  皇国の人間が武器や防具、家具や家を作る為に木々を伐採して荒らしちまった。
  その結果がこの砂漠だ。
  魔国の政治を取り纏める人間は有能だが、皇国は馬鹿ばかりだからな。
  途中で止めればいいのにプライドだけで突き進みやがった。」

  「……切ないですね。
  でも、魔国も有能な人物がいながら何故アンデッドドラゴンなんか……。
  アンデッド達が蔓延る様な世界になるって見えなかったのでしょうか……?」

 悲しそうな表情を浮かべるシェリルに、ネスは暗くならない様、出来るだけ声を明るくして喋る。

  「元はと言えば、食糧欲しさに戦争吹っ掛けた皇国が悪い。
  魔国の人間は平和を重んじる奴らが多いと聞いた、それを逆手に話し合おうともせず、
  完全侵略しようとしたんだ。そんな奴らに国を渡したくねぇだろ?
  アンデッドドラゴンも、負けられないって思いから召喚したんじゃねぇのかなぁ。」

  「……戦争なんて、しちゃ駄目ですね。
  戦争で得られるのは、一瞬の歓喜と、永遠に続く絶望と、悲しみと、
  苦しみだけだと聞いた事があります。」

 シェリルの言葉に、ネスは付け加える様に言う。

  「人間だけならまだいいさ。自業自得で済むんだ。
  けど、被害は森や海に生きる動物や魚、大地にだって激しい傷を付ける。
  人間の馬鹿な考えで他の生き物が傷付くなんて、不条理だろ。真面目にあり得ねぇよ。
  そう言った意味でも、戦争はしちゃあならねぇんだ。」

 ネスの微かに怒りを含んだ言葉に、シェリルは温かさを感じた。

  (こういう人間もいるんだって……
  父様も理解してくれれば、人間と人魚は仲良くなれそうな気がするんだけどなぁ……
  私って甘いのかな……?)

 急に黙り込んだシェリルを見、ネスは慌てて話し掛ける。

  「わ、わりぃっ!変に語っちまったな!!今のは聞き流してくれ!」

 訂正の意を述べるネスに、シェリルは首を傾げ、不思議そうに声を出した。

  「どうしてですか?ネスって凄く優しい人なんだなぁって思ったんですけど……。
  カッコいいし、優しいし、面白いし、とても素敵な人ですね。」

 満面の笑みに一瞬で目を奪われたネスは、激しく首を左右に振り、シェリルに忠告する。

  「シェリル……皇国に入ったら、あんま知らねぇ男に笑顔振り撒くなよ……?」

  「え?何故ですか?」

 首を傾げるシェリルに、ネスはもごもごと口を動かした。

  「……可愛すぎるからに決まってんだろ……。襲われでもしたら、どうすんだよ……。
  シェリルみたいな純粋な女は、すぐ騙されて、拉致されて、弄ばれて、売られるのがオチなんだよ……。
  てか、なんだよさっきの笑顔……マジで反則だっつの……あんなの、見せられたら誰だって―――…」


  「あの……ネス、よく聞こえません。」

  「ッ!!なっ、何でもねぇよ!!」

 口から発せられた言葉は小さく、真横で聞くシェリルの耳にすら届かない。
 聞き返したはいいが、ネスは顔を真っ赤にし、そっぽを向いてしまった。
 シェリルは耳たぶまで真っ赤なネスに、思わず笑う。

  「あははっ、本当にどうしたんですか?耳たぶ真っ赤ですよ?」

 分かりきっている事を指摘され、ネスの顔は更に赤く染まる。

  「気にすんなっ!!い……いいから、大人しくしてろ!!」

  「はぁ~いっ!」

 ネスのお叱りに楽しそうに頷き、シェリルは口をつぐむ。
 訪れる静寂、心地好い風がシェリルとネスの肌を撫でていく。

  (なんか……眠くなってきたなぁ……)

 優しく吹き抜ける風、ネスの歩調、単調な振動、静寂が夢の世界へと誘う。
 シェリルはネスの肩に頭を預けた。

  「……?」

 ネスは不思議そうな顔でシェリルを見やった。
 そこにはうとうとと眠気に見を任せるシェリルの顔が。
 ネスは優しくシェリルの頭を撫でてやり、夢の世界へと導いていった……。


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*Comment

 

コメントするのは久しぶりのゆで・たまごです!!

ははぁ~…砂漠…
道のりは長そうですね~。
まだまだハクに会えそうにないですね><
それはそうと、戦争はやっぱりダメですよねぇ…
うんうん、と思わず頷いてしまいます。
ネス、なかなかいいこと言いますね(ニヤリ)

あ、近日中にリレ小スタート出来そうです!!(^^)/
  • posted by ゆで・たまご 
  • URL 
  • 2009.11/03 13:30分 
  • [Edit]

ゆで・たまご様へ 

いらっしゃいませ!

お久しぶりですッ!
砂漠と言ってもそんなに広くはないはずです!
なんせ40分で着いてくれないと困るので!!(爆)
ハク……ハクは……もう、ヒーローの座がそろそろ危うくなるくらい
出番がないです(*´д`)b

戦争はいくないですよね!
その結果アンデッドが生まれたわけですし……。
ネスは心優しい子ですから、
きっと罪のないモノ達が傷付くのは嫌なのでしょうね(笑)

おおっ!リレ小楽しみにしてます~!
はわゎ…初めてなんで、足引っ張らないか物凄く不安ですが、
精一杯頑張ります!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 14:15分 
  • [Edit]

もごもごw 

ネスよ…そこは大声で言わないとっ!!

でも何だかシェリルちゃんは聞いても「ありがとうございます!でも大丈夫ですよ♪」と満面の笑顔で返しそうな…(;・∀・)

っく~、罪な女になりつつあるような(笑)

ネス、振り回されまくりですw
頑張れ、ネス!!
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.11/03 16:36分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

大声で言ってしまえば楽だったかもしれないのに、
恥ずかし過ぎて言えなかったネスでした(笑)
でも、鷹の爪痕様のおっしゃられる通り、
「ありがとうございます♪」で終わりそうですね(´゚д゚)
なんて罪作りな……。

今は左右に振り回されるだけで済んでいるとしても、
時期に縦横無尽に振り回されていきそうで、
ネスを憐れんでしまう作者がここにいます……(汗)
鷹の爪痕様の応援がネスに届くことを祈るばかりです(*´д`)b
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 17:29分 
  • [Edit]

 

ここまで拝読させていただいた、燈 青架です!
ネスとシェリルの会話が、もう可愛くてかわいくて!
シェリルって、ネスの気持ちに鈍いところがあるんですねっ。ネスもネスでハッキリ言えてないっ。そこがまた可愛いぃ!!

わぁーキャア言って、拝読させていただきましたよ!!
続きが楽しみです★
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.11/03 20:33分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

はゎゎゎっ!!
わざわざこちらにコメント下さるとはッ(汗)
ありがとうござます!!_(._.)_

二人に愛をありがとうございます!
今の所、二人以外出てきてないに等しい感じですが、
これから地味に増えていくと思います(笑)

ネスもシェリルも奥手で、なかなか進展してくれないのです…。
まぁ、進展されたらされたで物語が終わってしまうのですが……(汗)
でも、そんなとこにもキャアキャア言って頂けたなら、
これほど嬉しい言葉はありません!

続きも頑張っていきたいと思います!
ありがとうございました!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 21:24分 
  • [Edit]

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