冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 19

 皇国『リムドア』より40分程歩いた場所にある海。
 日が上り、柔らかな日差しの降り注ぐ浜辺を、ネスとシェリルが歩いていた。

 ネスは旅着なのか、胸当てと肩当ての付いた少し丈夫な服を着、
 両手には指の出る黒い手袋をはめ、背に槍を背負う。

  「ネス、カッコいい!」

 無邪気な顔で思ったままを口にするシェリルを前に、小麦色をしたネスの顔が赤く染まった。

  「ありがと……。」

 ネスはシェリルと顔を合わす事無く礼を言う。
 と、いうよりはシェリルを見る事を躊躇っていた。

  (……早く服買ってやらねぇとな……)

 シェリルは今、ネスの服を着用している。
 体格も、身長も異なる為、Tシャツを着せても肩が出、短パンを履かせては何度もずり落ちる。
 だが、当の本人は全く気にしていないのか、
 昨日より丈の短いTシャツはミニ以上に短いスカートになり、
 肩ははだけたまま、短パンは常に下がりっぱなし。
 なおすのはネスの役目となっていた。

  「あっ、あれ昨日の森ですよね!」

 森を見つけ、指を指した瞬間にずり落ちる短パン。

  「うわぁぁっ!!そ……そうだな、昨日の森だ……。
  シェリル……頼むからズボンから手を放さないでくれ……俺の心臓が持たねぇよ……。」

  「あ、ごめんなさい。」

 ネスはシェリルのズボンを上げ、とりあえず心を落ち着けようとするが、
 顔を真っ赤にしたままで、一向に収まる気配を見せない。
 無言で森の中へと入り、ネスを先頭に足早に抜けて行く。
 ネスの大きな靴を履いている為、シェリルは少し歩き辛そうであった。
 恥ずかしさからか歩幅の大きくなるネスに付いて行けず、次第に遅れ始める。

  「あ……ネス、まっ……」

 そこまで言って口をつぐむ。
 迷惑を掛けてはならないという思いが働き、懸命に不慣れな足を動かす。
 だが、合わない靴でシェリルの足は擦れ、じんわりと血が滲み始めた。

  (痛い……でも我慢しなきゃ、ネスにこれ以上心配掛けれない。)

 気合を入れ直し、ネスの後を追おうと前方を歩くネスを見やる。
 が、かなり前を歩いていたはずのネスが目前にいた。

  「ふぇっ?!」

 あまりの距離の近さにシェリルは体を震わせる。
 ネスは犬の様にクンクンと鼻を動かし、じっとシェリルを見つめ、言った。

  「微量だけど血の臭いがする。シェリル、怪我してんじゃねぇ?」

 シェリルは思わず目を見開いた。
 アンデッド達を相手にしてきたネスの敏感な鼻を前に嘘を吐く事など出来はしない。
 シェリルの反応に、怪我をしていると判断したネスはシェリルの体を抱き上げる。

  「わっ!?」

  「わりぃ……急ぎ過ぎたな。怪我したのは足か?……あぁ、靴擦れしてんな……。
  さっさと皇国行って服も靴も揃えよう。シェリルはどんな服が好きだ?」

  「え……どんな服……?」

 服等とは無縁の生活を送ってきたシェリルにとって、
 この質問に対する答えは見付からなかった。
 しどろもどろになっていると、ネスが苦笑して言う。

  「まぁ、実際見るのが一番だよな。」

  「あ、はいっ」

 よく理解出来ないが、とりあえずその言葉が助け舟だとばかりに頷いた。
 会話が無くなって数分、シェリルは辺りをきょろきょろと見回してネスに聞く。

  「アンデッド、いませんね。」

  「ん、そりゃあそうさ。アンデッドは基本的には暗闇でしか活動出来ねぇ。
  明るい所は好まないんだよ。今奴らがいるなら、洞窟や深い森の中かな。
  強いアンデッドは昼間に徘徊してる事もあるけど……それも稀だ。
  それにここは昨日、俺とシェリルが一掃しちまったからな。アンデッドは少ないと思うぜ。」

 ふむふむと頷くシェリル。
 不意に、疑問に思った事をネスへと聞いた。

  「あ、あの……アンデッドドラゴンって、魔国の大陸にいるんですよね?」

  「あぁ、ユグドラシア大陸だな。
  魔国『ユグドラ』を真南に下って行くと、腐った竜の姿が見れるらしい。」

  「……海を隔てているのに、どうしてここにアンデッドが?」

  「そりゃあ簡単だ。海を渡って来たんだよ。」

  「へ……?」

 あっさりと言ってのけたネスに、シェリルは目を丸くする。
 ネスは補足とばかりに少しだけ詳しく話した。

  「ある者は貨物船に乗り込み、ある者は海を泳いだ。
  アンデッドは死者に魂を呼び戻す菌みてぇなのを移す能力があってな、
  こっちにもゴロゴロと死体が転がってやがるから一匹上陸すりゃぁその菌は蔓延し、
  止める方法も無いこちら側としては、呆然と見ているだけで何も出来ず、
  アンデッド大陸の出来上がり……ってわけさ。」

 ネスの腕に抱かれたまま、シェリルは何とも悲しそうな表情を作った。
 その表情にネスが慌てて訂正を加える。

  「ま、まぁ、アンデッドドラゴンを倒せば魂も成仏すんだろ。
  シェリルが悲しむ事じゃねぇよ。」

  「はい……」

 少し微妙な空気が流れたまま、ネスはひたすら歩き続け森を抜けた―――…


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*Comment

手袋も萌え♪ 

前話でやっと「ハクー❤ 銀髪ー❤ ハクー❤」が登場したかと思えば、速攻でネスのターンに!!(笑)
あいかわらずネスは女の子に優しくって、いいですね~(´∀`人)

……はっ、ヤバイ!
なんだかすっかり心の天秤がネスに傾いているっΣヽ(゚Д゚○)ノ

は、は、は、ハクー! がんばってーっ!!
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.11/03 00:02分 
  • [Edit]

やっぱ良い(≧∇≦)b 

>ネスは旅着なのか、胸当てと肩当ての付いた少し丈夫な服を着、両手には指の出る黒い手袋をはめ、背に槍を背負う。

もうこのシーンだけで、脳内にカッコいい男が一人彷徨ってしまってます!!
あぁ、着替える御姿もカッコいい…(〃▽〃)

シェリルちゃんは、元は人魚ですもんね(;・∀・)
服の件で「恥ずかしい」とかいうのはあまり持たないのかも…と(笑)

皇国に行ったらシェリルちゃんはどんな服を選ぶんでしょう♪
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.11/03 00:25分 
  • [Edit]

 

ハク~!

ハ、ハク・・・

おぬしの出番はもう終わってしまったんだねw

でも、ネスかっこいい!

かっこいいよ、ネス!

ハクじゃなくて、もうネスでいいじゃん、シュリルちゃんよb
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.11/03 02:30分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

あぁ……数少ないハク応援派の卯月様もついに……ッ!
ギルドに行こうとするとハクは仕事に行っちゃうし、
とことんシェリルとハクを引き離すのが好きな様です(笑)
第一章にめいいっぱい大事なこと詰め込んじゃったんで、
一章が長い長い……(汗)
おかげで二人がなかなか出会ってくれません(´・ω・`)
困ったもんです……(ぉぃ?

しかし、卯月様が応援して下さっている限り、
きっとハクも諦める事はないでしょう!!
頑張りたまえ、ハク!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 09:30分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

いつもネスに愛を有難う御座いますッ!

ハクがあまりにも軽装だったので、
ネスは少し身を固めた装備にしてみました(*´д`)
槍を使う→手袋!!っていうのが自分の中のセオリーなのだと
これを書いて初めて気付いた所存です★

下手したらシェリルは素っ裸でも町中歩いていそうです(笑)
そして大慌てして自分の服をかぶせるネス……。
……ネスは苦労性なようですね!!

シェリルの選ぶ服は出来ればスカートがいいなぁ♪(ぇ?
あっ、でもジーパンも捨てがたい!!
女の子っぽいのもいいし、男の子っぽいのもあり?
……なんて考えてて全く決まりません(´・ω・`)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 09:39分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

ハクは1ターンで見事に切られました(笑)
可哀想な奴です……ほんとに……。
人魚姫で言えば一応王子様役的存在なのに……。

恋したのがネスになら、Battle Mermaidはもう終わってますね!
末長く幸せに暮らしました。ってなってます(笑)
まぁ、そんな簡単に幸せになんてさせてあげませんけどね!!(サイテイ…
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/03 09:43分 
  • [Edit]

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