冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 18

 皇国『リムドア』
 剣や斧、ハンマーや槍等といった武器や防具を作り発展してきた大国。

 国の中央に高くそびえ立つ宮殿の様な建物がある。
 『皇帝』なる者が鎮座し、その他の政府関係者が集い、行政を行う場所、『皇宮』。
 その皇宮を中心に、東は武具や薬品の揃う店が立ち並ぶ。
 南は食糧店が列を成し、西はスラム街。
 最下級の貧民が暮らす、皇国で一番危険な場所である。
 北は一般市民が暮らす住宅街が存在し、さらに北に行けば高級街。
 白い建物が規則正しく建てられ、洗練されたデザインの家が建ち並ぶ。

 そんな皇国『リムドア』の中枢である、皇宮から出て来た美しい男が、
 屈強な鎧に身を包んだ二人の男を後ろに着かせて歩いていた。

  (あぁ……何なんだ、この暑苦しい男共は……。護衛なんていらねぇんだよ……)

 長い白銀の髪を緩くひとつに結び、気怠さを全体で表すような紺色の瞳を、
 疎ましそうに後方の二人へやる。低く、綺麗な声で言った。

  「護衛はいらねぇ。今すぐ俺の前から消えろ。」

 男がそう言うと、二人のうちの一人、銀色の鎧を着る男が何度も首を左右に振る。

  「なりません。ハク様は我等が皇国……『リムドア』の守護者。
  我等の怠慢で、もしもの事があったら取り返しがつきません。」

 黒色の鎧を着る男が言う。

  「その通りです、ハク様。
  再び国を抜け出さない様、監視も兼ねての護衛ですので、一週間は我慢して下さい。」

 ことごとく拒否された美麗な男ハクは、明らかに不機嫌な表情を浮かべて言う。

  「男は皇国の守護者じゃねぇ……てめぇらが勝手にそう呼んでるだけだろ。
  さっきの裁判も何だよ……やれ国の守護者が裏切っただの、やれ職務を放棄しただの……
  俺はギルドに所属してるただの冒険者だ。国の守護はてめぇらの仕事だろうが。
  俺はアンデッドドラゴンを倒す為に冒険者になったのに……。
  国のお守りなんてしてられるかよ。」

  『……。』

 何も答えない二人に、ハクの苛立ちが募る。小さく舌打ちをし、二人へ体を向けて言った。
 真っ黒な長い薄手のコートが風になびく。

  「今すぐ俺の前から消えろ。消えないなら……容赦はしねぇ……。俺は俺の自由に動く。
  それを邪魔するなら……本気で殺すぞ。」

 二人の背筋が凍る。冷たい声と、温度のない瞳。
 本当に殺されるのだと悟った二人は数歩引いた。ハクはにやりと笑って言う。

  「てめぇらの上には、『ハクに、上司を殺すと脅された。』……とでも言っておけ。
  そうすれば肝の小せぇあいつらの事だ、お咎めもねぇだろ。」

  「あ……」

  「ハク様……」

 最後に小さな優しさを見せたハクは、二人の男を起き、ギルドへと向かった―――…



 黒コートに所々破けたズボン、首元がV字の白いシャツを着、
 腰には朱と紺のふたつの剣を携え、茶色の質素な太いベルトを巻く。
 そんなハクの身なりは珍しく、いつも民衆の注目の的だった。

 ごく一般的な剣士と呼ばれる職業の者達は、分厚い鎧を纏い、盾を持ち、自らの防御を高める。
 ハクの装備は剣士というよりは、素早さを生業とする弓師や盗賊のそれだった。
 加えて、盾の持てない双剣使い。

 幾人もの冒険者は、ハクはすぐに死に果てるだろうと高をくくっていたのだが……


  ―――…カランカラン…

  「いらっしゃ―――…ハク?!おまっ……怪我はいいのか?!!」

 今では皇国からも、民衆からも、怖れられ、尊敬される立場にまで成長を遂げた……。

 ハクがギルドに入るなり、カウンターで酒をついでいた店主は顔を青くし、聞く。
 だが、ハクはいつもの淡々とした無表情で一言返した。

  「何がだ?」

  「何がだ?じゃねぇだろ!!お咎めは?!処刑になったりは??!
  頭打ったって聞いたけど平気か?!!
  ハッ、まさか、処刑になる前の自棄酒に来たんじゃねぇだろーな?!!!!」

 ぽんぽんと喋る店主の五月蝿い声に、ハクは左耳を押さえ、煩わしそうに言った。

  「五月蝿い。生憎と頭も平気だ。それに、皇国の連中が俺を死刑に出来るわけねぇだろうが。」

  「ま……まぁ……」

 店主は安心した表情を浮かべ、ハクに店で一番高級な酒をコップに注ぎ、差し出した。

  「……?」

  「退院祝いだ。皇宮は窮屈だったろ?飲みな。」

 店主の心遣いに感謝の念を抱きながらも、何か企んでいるのではないかと、
 酒に手を付けず店主の瞳をじっと見つめる。店主はハクの行動に苦笑した。

  「いつもは取引だが、今日は純粋に祝ってやってんだぜ?いらないなら、俺が飲む。」

  「…………誰がいらないと言った?有り難く頂こう。」

  「あははっ、素直じゃねぇの。」

  「ふん……」

 ハクは酒の入ったコップを手に取り一気に飲み干す。
 酒が渇いた喉を潤し、苛立つ気分をゆっくりと鎮めていった。
 乱暴にコップを置き、ハクは店主に聞く。

  「何か仕事入ってるか?」

 店主は棚から何やら帳簿の様な物を取り出し、ぱらぱらとめくる。そして、小声で言った。

  「ん~……脱走に適した依頼がねぇなぁ……」

 店主の真剣な言葉に、ハクは小さく笑う。

  「構わねぇよ。漁港の依頼なんて滅多に無いのは知ってる。気長に待つから、別の仕事くれ。
  しばらくは皇宮に入り浸る豚共の望むままに動いてやるさ。」

  「相変わらず口が悪いねぇ……まぁいい、それならこれでどうだ?」

 そう言ってハクの前に紙を差し出す。そこには ―――…


  知能を持つ新型アンデッド出現!統率能力を持ち、戦闘能力も相応との報告。
  早急な対応を望む。

                                 依 頼:皇国『リムドア』

                                 場 所:ハールウェンの森

                                 報 酬:―――…



  「150万か……えらく高いな。」

  「上級の冒険者が四人で向かって一人が命からがら逃げる事の出来るレベルだ。
  そりゃあ高いさ。お前の力を侮ってるわけじゃねぇが、誰かと組んで行くことをお勧めするぜ。
  なんせ、新種だからな。」

 ハクは依頼の書かれた紙を雑に折り、懐に入れる。すくりと立ち上がり、店主に言った。

  「酒、美味かった。有難う。……んじゃ、行ってくる。」

 さして何か準備をするわけでもなく、ハクは仲間を集める事もせずに酒場から出て行った。
 ハクの出て行った事を確認した冒険者達が一層に騒ぐ。
 五月蝿い酒場にも係わらず、カランカランと鳴る鈴の音がやけに大きく聞こえた―――…


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*Comment

ハク、登場(≧∇≦) 

出ましたね、ハク!!←そんなオバケみたいに(汗)
あぁ、でももう私の心はネスで占めちゃってるのです…ヽ(;´Д`)ノ

あのネスの優しさには勝てませんよぅッ!!

ハクはぶっきらぼうだけど、最後には男二人に優しさを見せてましたねぇ(ノ´∀`*)
あぁ、でも…でもっ!
ごめんなさい、筱さま、私、ネスが好き~~~ッッ.+゚(○゚ω゚○)゚+.

シェリルちゃんやネスとはいつ会うのでしょう!?
もう少しかしら♪

ドキドキしながら続きを待っておりますね♪♪
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.11/01 16:15分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

出ましたよ!ハクッ!
序章よりご無沙汰で、18にしてやっとです(笑)

ですが……出るのが遅すぎた様ですね……ッ!
鷹の爪痕様のお心は既にネスの物とは……。
ネスは優しいですからねぇ……完全フェミニストでございます(笑)
ハクは……多分かなり性格に問題が……。

シェリルとネスはいつハクと出会うのでしょうかねぇ……。
まだまだな気がします(´・ω・`)
ハクのターンがこれで終わりなのも寂しいです(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/01 22:47分 
  • [Edit]

 

こんにちは!このひとつ前の話でネスとシェリルのやり取りにふおおおお!となっていたのですが(ネスに超はまり中ですw)ハクもやっと出てきましたね!
シェリルとネスとハクの出会いも楽しみにしてますねvv

それにしてもやっぱり……シェリルとネスのやり取りがよかったですぅぅ!
ネスももちろんかっこいいけど、シェリルもかっこいいですね!人は機械じゃありません、とか何でもないことのように言ってしまえるのがすごく素敵だと思います!
「力がないことを、『か弱い』というのなら、その通りだと思いますよ。でも、か弱くても戦えます。」
↑の台詞もも~すごく好きで!あああ、シェリル素敵です!筱様の書かれるキャラは、シエルちゃんもでしたがかわいくてかっこよくて強くて……めちゃ私のツボなのですvv

続きも楽しみにしていますね!^^
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.11/02 20:51分 
  • [Edit]

神田様へ 

いらっしゃいませ!

18にしてやっと出てくるヒーローってどうなんでしょう(汗)
完全にネスにいいとこ取りされてる気がします(´゚д゚)

シェリルに愛を有難う御座います!
神田様に好かれ、さぞや喜んでいることでしょうっ!!
た……確かにシエルに似ているかもしれませんね……!
そういう系の女の子キャラが好きみたいです(笑)
違いをあげるとするならば、
シェリルは、シエルより内気な性格ですが、
シエルより好奇心が強い子です(*´д`)b

いつになったらハクと合流出来るやら……。
一章にいっぱいいっぱい詰め込んじゃったので、
なかなか出会ってくれません(汗)
早く三人揃ったお話しが書きたいものです♪
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/02 21:57分 
  • [Edit]

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