冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 12

 シェリルはしっかりとした強い瞳で、ネスを見据え、きっぱりと言い放った。

  「やっぱり、ここで失礼させて頂きます。私は私の思いがあってここまで来ました。
  恐怖と右目を失った激痛……今もまだ、目をつむればその瞬間が鮮明に呼び起こされます。
  立つ事も危うい程の足の激痛にも襲われました。正直、今もまだ上手く立てません。
  考えれば……ネスさんの言う事を聞くのが一番なのだと思います……。
  でも、それじゃあ私が激痛に耐えてきた意味がない。
  ネスさん、本当に有難うございました……このご恩、生涯忘れません。」

 シェリルは三つ指を着き、深々と頭を下げる。
 そして、目を見開くネスを尻目にゆっくりと立ち上がり、ふらつく足で歩き始めた。

  (今日は野宿でもしよう……。)

 そんな事を考えながら、シェリルが扉へと手を掛けたその瞬間、ふわりと体が浮いた。

  「え……??」

 シェリルの細い体は、ネスのたくましい腕にすっぽりと収まり、再び元の位置に戻される。
 シェリルはネスに困惑の眼差しを向けるが、ネスはその眼差しを無視して言った。

  「ギルドにゃ入れさせてやれねぇ……
  けど、それは今すぐここを出て行かなきゃならねぇ理由にはならないだろ?
  ゆっくりして行け。明日になりゃギルド付近のいいバイト探してやるからさ。なっ?」

  「……私の事は、お気になさらず……」

  「無理、気になる。こんな別嬪さん放置して危険に晒す男なんていねぇだろ。
  夜は危ない、明日の朝、国に行ってみよう。」

  「え……?ここは国ではないんですか?国は遠いんですか?」

  「あぁ~……ここは皇国から離れた場所にある浜辺だよ。国はちょっと遠いな。
  ここから北にあるんだが……40分くらい歩かなきゃならねぇ。」

 申し訳なさそうに言うネスを前に、シェリルは一瞬、目を見開き、
 すぐに優しげな微笑みを見せる。

  「そうですか……それは遠いですね。分かりました、明日にします。」

 素直にそう言うとコロンと床に寝転がり、ゆっくりと瞳を閉じる。
 ネスは慌ててシェリルを抱き上げ、簡素なベッドに寝かせた。
 驚いた表情で自分を見やるシェリルに、苦笑を浮かべる。

  「疲労困憊してる子が床で寝るもんじゃねぇよ。」

 そう言ってシェリルの体にふかふかの温かい毛布を掛けた。

  「……ネスさんは……?」

  「俺はいいの。気にすんな。」

 にっかりと笑顔を浮かべ、シェリルから離れたネスは火を消し床に寝そべる。
 何も言う事無く、ゆっくりと目を閉じた。シェリルもネスの優しさに甘え、その瞳を閉じた―――…



 暗闇。波音が聞こえる以外に音は無く、明かりは窓から見える星だけ。
 そんな中、シェリルはゆっくりと目を開けた。疼く右目を軽く押さえ、床に転がるネスを見やる。
 小さな寝息を立て、よく眠っていた。シェリルは毛布を持ち、ネスの傍に寄り、優しく掛ける。

  (有難うございます、ネスさん。でも私は……彼に必要とされたい……力になりたいんです。)

 深々とネスに頭を下げ、ふらつく足で歩く。
 音を抑え、玄関の扉を開け、静かに外へと出て行った。



 冷たい風がシェリルの肌を撫でる。ぶるりと体を震わせた。
 自分の身を包むたった一枚の薄いシャツが唯一の装備である。

  (寒い……何かお洋服買わなきゃ……何をするにもお金がいる……
  それが外界の鉄則だって教わった。まずは北に……冒険者になってお金を稼がなきゃ。)

 シェリルは音の無い浜辺をひたすら歩いた。
 少し進むと、景色は浜辺から森へと変わる。
 暗く不気味な森に身震いしたが、引き返すわけにもいかず、恐る恐る森へと足を踏み入れた。
 気味の悪い動物の声がシェリルの心を締め付ける。

  (怖い……それに、足……痛い……。)

 靴すら履いていないシェリルは、石やら草やらで足を傷付け、流血させていた。
 真っ赤な血が地面に染み込む。
 痛む足を引きずる様に歩いていたシェリルは、太い蔓に右足を引っかけ、盛大に転んだ。

  「きゃぅっ!!」

 鈍い音を立てて倒れたシェリルは、痛みに耐えながらゆっくりと立ち上がり、体を見やる。
 腕と足を擦り剥き、服は破け白い肌があらわになる。
 引っかけた右足は捻り、痛む頬を擦れば血が出ていた。

  (……休もう……。)

 シェリルは巨大な木に背を預け、つかの間の休息を得る。
 木々の隙間から覗く月だけが、シェリルの痛む心を少しだけ癒した。

  (もうちょっと、足が上手く動けば……左目だけって言うのも視界が悪いなぁ……はぁ……)

 無音という言葉が相応しい静けさの中、小さな溜息を漏らしたシェリルの耳に、
 不自然な程の異音が聞こえた。


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*Comment

こんばんわ! 

歩きなれない&片目視界のシェリルは徒歩移動キツそうで、がんばれ、がんばれ…!て応援したくなりますっ!!
でもシェリルさん、せめて夜明けくらいまではネスの言うことを聞いて、お家でおとなしくしていたほうが良かったと思うよ…?
だって、だって……かわいい女の子が、夜中に、ひと気のない場所を、あんなかっこうで歩いているなんて……全方位から想定しうるあらゆる危険が押し寄せてきそうで、気が気じゃないっっっщ(゚ロ゚щ)キケーン☆
あ、でもシェリルは魔法が使えるから、大丈夫!
なのでしょうか? ああでもやっぱり心配ダ―――――っ(」゚ロ゚)」!
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.10/26 19:38分 
  • [Edit]

 

あの絵を見てからシェリルのファンですwww

片目だと視界が狭いし立体的に物を見れないから不便ですね・・・・・。

特に戦闘とか!!
  • posted by そのちー 
  • URL 
  • 2009.10/26 19:44分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

はわわゎっ!早速のコメントありがとうございます!

シェリルったら、思ったら即行動の女の子なもんで、
どうにも【待て】が苦手みたいです(笑)
危険なんて知らない!愛の為なら!!
とか言わんばかりの突っ走りっぷりです(*´д`)b

Tシャツ一枚で肌寒い夜を歩くだなんて、
現代世界だったら確実に食べられちゃってますよ!!(゚ε゚`)
ってか、そんな服しか着せてないネスもどうよ!?
とか思っちゃったりしましたが、ネスに罪はない。うん……多分……。

→全方位から想定しうるあらゆる危険が押し寄せてきそう

こう聞くと、なんかめっちゃ危なそうですね!!(笑)
はわゎ……シェリル、生きて皇国に着けるのか……
作者ながらに心配になってきましたようぉぅ……(汗)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/26 19:54分 
  • [Edit]

そのちー様へ 

いらっしゃいませ!

うおぉぉっ!!なんと嬉しい事を!!
ギリギリオール年齢OKそうなイラストを気に入って頂けるなんて……
これに勝る喜び無しです!!!

片目ってかなり危ないんですよねぇ……。
しばらく私も目を負傷して片目で生活してましたが、
もう、何度階段を踏み間違えたことか……(汗)
よく死ななかったもんです。

シェリルの戦闘は大丈夫ですよ!
元から飛んだり跳ねたり出来ない子なんで(笑)
足がありながら不自由とかいう可哀想な状況ですしね(*´д`)b
魔法使いだから、きっと大丈夫さ★
って事で、見逃してやって下さい(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/26 19:58分 
  • [Edit]

おひさしぶりです! 

筱様は相変わらず更新ペースがはやくて尊敬します……!
にしてもシェリルちゃん人間にはなれましたが、右目と足が痛そうでかわいそうですっ……特に魔女に右目をとられるところの描写が……ぞぞぞくぞく。
でも、声じゃなくて右目ってところが普通の人魚姫と違ってなんだか面白いですね^^

シェリルちゃん一途ですね~、その想いがハクに通じるといいですね♪でも個人的には何だかネスも気になります(笑)
シェリルちゃんとハクは無事結ばれるのでしょうか?続きもまた読みに参ります!
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.10/26 20:52分 
  • [Edit]

神田様へ 

いらっしゃいませ!

神田様、お久しぶりですぅぅぅっ!!!
目、大丈夫ですか!?お風邪召されてませんか?!
執筆、頑張り過ぎない程度に頑張って下さい(*´д`*)

私の執筆ペースは、一日一更新★ですから!
多分そんなに早いわけでは無いです……ッ。
NIHILISMの時はおかしかったですが、最近は落ち着いてきました(笑)

恋の為なら右目すらも差し出せる……。
恋の為なら足が痛いのだって我慢出来る……。
……恋って偉大ですね……(汗)
右目をもがれるシーンは、私自信読み返しても、いやーん……ってなります(´・ω・`)
可哀想な事をしたものです!

喋れない主人公!は、あまりにも扱い辛いので、右目に変更です♪
扱いやすさ優先ですよね!やっぱり!!

ハクとネス……さてさてどちらが王子様なのやら♪
それは作者も知らない!(ぇ?
ぁ、嘘ですよ!ちゃ……ちゃんと分かってますよ!!(タブン…
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/26 21:52分 
  • [Edit]

あわわ… 

服が…一張羅?の服が…(/ω\)ハズカシーィ

ただでさえぶかぶかだったのに…とソッチの心配をしてしまいました(;・∀・)

お金、稼ぐのはいいけどまず服、ふく~~ッ!!
そのままじゃ悪いおじさんとかに連れ去られちゃいますよぅヽ(´Д`;)ノアゥア...
…あ、でも魔法使えるから大丈夫かなぁ…

う~ん、ケナゲでケナゲでもうッ!!
ただでさえ、目も足も痛いのにあちこち傷だらけになっちゃって…(´;ω;`)ウッ…

もしかして、シェリルちゃんの危機にハクが助けてくれるとかッ!?などと淡い期待を抱いております(ノ´∀`*)
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/26 22:24分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

そうなのですよ……私もそれを心配してます……。
薄手のシャツ一枚しか着ない女の子を、
どこぞの不埒な輩が手玉に取ってしまったと思うと、
恐ろしくて恐ろしくて……(汗)
でも、シェリルの魔法の腕前は確かなので、
返り討ちにしちゃうような気もします(笑)

ほんとに一途な女の子ですねぇ~……
愛の為に傷を負う事すらいとわないだなんて、カッコよすぎます……。
無鉄砲なのもうなずけますが(笑)

シェリルの危機にハクが……?
うふふ……さてさてどうなることやらッですよ♪(*´д`)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/26 23:06分 
  • [Edit]

 

シェリル…その決意の固さはわかるけど…無謀過ぎですぅ><

そ、そんなトコで休んでたら…((o(б_б;)o))ドキドキ

>不自然な程の異音が聞こえた…
「あ、私のカラオケの声…漏れちゃってました?」って、違いますよね><
失礼しました( ┰_┰) シクシク
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.11/17 18:43分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
シェリルは一直線な子ですから(*´д`)b
思ったら即行で行動しちゃいます(笑)
色々な意味で好奇心が旺盛で、なかなか困った子なのですよ……。

カラオケ(笑)
多分私の音痴な歌がお外に漏れて半公害に……。
あ、ありえる……!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/17 19:05分 
  • [Edit]

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