冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 11

  「多分、シェリルが探してる男は……『ハク=リンウェイ』の事だろうな。
  綺麗な白銀の髪に、深海みたいな色した瞳を持つ、背の高い、
  赤と青の色した双剣を持つ男だろ?」

 瞳の色を確認してはいないが、朱と紺のふたつの剣を言い当てられ、シェリルは素直に頷いた。
 ネスは、やっぱりと溜息を吐き、げんなりした様に言う。

  「あのさ……あの男は止めときな……?」

  「え……どうしてですか?」

 ネスの言葉に、不思議そうな表情を浮かべ聞いた。
 ネスは出来るだけ言葉を柔らかくし、シェリルに伝える。

  「……ハクはな、復讐者なんだ。
  アンデッドドラゴンに両親と、自分がこの上ない程に慕っていた兄と姉を殺され、
  さらに数少ない……っていうか、二人しかいなかった友人の片方を殺されたんだ。
  それ以来、あいつの頭の中には打倒アンデッドドラゴンしかない。
  皇国『リムドア』に迫り来るアンデッド達を一人で薙ぎ払い、ギルドではかなりの腕利き……
  皇国の番犬とも言われるハクは、皇国兵にすら余裕で打ち勝てるくらいに強い。」

  「……。」

  「加えてここいら一帯のアンデッド達もあいつを恐れていてる……。
  ……復讐心しか抱かない男が、女を幸せになんて出来るわけがねぇんだ……。
  シェリル、悪い事は言わねぇ……ハクは止めときな。」

 シェリルは険しい顔をしているネスをしっかりと見据え、
 優しい笑顔を浮かべてはっきりと、迷いなく言った。

  「会いたいんです。好きなんです。
  彼がどんな人物であろうと……私は忘れる事が出来ません。
  彼に会いたい。私は……彼に会いたいが為に、右目を犠牲にしたのです。
  少しの間だって構わないんです。彼に私の想いを伝えたいんです。」

 包帯の巻かれた右目を軽く押さえ、痛みを思い出させる。
 痛みと共に、あの勝ち誇った様な高らかな笑い声を上げていた魔女の姿も思い出された。
 身震いしそうな体を必死で抑え、しっかりとした瞳でネスを捉える。
 その瞳のあまりの強さに、ネスは目を見開き、苦笑した。

  「…………そうか、そんな覚悟して来たんだったら、俺には何も言えねぇなぁ……。
  ……あんな男にゃ勿体ねぇくらいのいい女なのに……。

  「え?」

  「あっ、いや!何でもねぇよ!!
  ま……まぁ、あれだな、冷徹非道なハクでも、
  流石に女に手ぇ上げる様な腐れた真似はしねぇだろうしな。
  居るか分かんねぇけど、明日あいつが活動してる拠点でも教えてやるよ。」

 にっかりと笑って言ったネスに、シェリルは満面の笑みと、ふとした疑問を投げ掛ける。

  「有難うございます!!……あ、あのネスさんって、ハクさんと親しいんですか?
  よくご存知だなぁと思ったんですが……」

 シェリルの質問に、あぁと小さく声を出し、緑茶を手に取り言う。

  「俺とあいつは一緒に遊んだりしててな。そこそこ仲良しだったんだよ。
  だが……あいつと一番仲良かった友人がアンデッドドラゴンに殺されたその日から……
  ハクは俺に接するのを止め、復讐者となった。一人の道を歩み始めたんだよ。
  ったく……置いていかれたこっちの身にもなってほしいもんだよな…………
  って、愚痴になっちまったな。すまねぇ。まぁ、俺じゃなくても、皇国に所属する人間なら、
  ハクの名前を知らない奴はいねぇよ。
  あいつはアンデッド達から何度も皇国を守った……言わば英雄だからな。
  まぁ、顔を知らねぇ奴がいるとするなら……皇国から離れて暮らしてる船乗りぐらいだな。」

  「へぇ……凄いんですね……。」

 シェリルはハクがあまりにも高嶺の花的存在なのだと実感し、軽く落ち込む。
 そんなシェリルに、ネスは淡々と言った。

  「あぁ、凄い奴だよ。けどなぁ……凄過ぎなんだ……。」

  「え……?」

 意味深なネスの言葉にシェリルは小さく首を傾げる。
 ネスは言うか言うまいか少し悩み、口を開いた。

  「確かにあいつは英雄だ。皇国の政府関係者も、民衆も、あいつの腕を認め、
  あいつさえ居れば皇国はアンデッドによって滅びる事はないと考えてやがる。
  ……まぁ、実際そうなんだろう。
  けど、あいつには目的が……アンデッドドラゴンを自分の手で殺すという目的がある。
  皇国に縛られてたんじゃあ到底動けない。」

  「……。」

  「昨日の話しだがな……
  あいつ、皇国を抜け出して単身アンデッドドラゴンを討伐しに行こうとしやがったんだ。
  けどなぁ……さっき入った情報なんだが、航海中、アンデッド達に襲われちまったらしくてな。
  海に投げ出されたらしい。
  しばらくして船員達が皇国の番犬だったと気付き、急いで捜した。
  そして幸運な事に、岩場に引っ掛かってたんだとさ。」

  「……岩場に……。」

  (なんか……嬉しいかも……。)

 むずむずする気持ちを落ち着かせ、ネスの話しを大人しく聞く。

  「まぁ、助かったのはいいんだが、頭を強く打ったのか、変な事を言いやがるらしい。」

  「えっ?」

 ネスの言葉に、シェリルは一気に不安に駆られた。ネスはシェリルを落ち着かせて言う。

  「何でも、水中で誰かに助けられた……ってな。
  けど、その日は嵐……そんな荒れ狂う海の中で、『誰か』に助けられるはずはない。
  助けに飛び込んだ奴がいたとすれば、そいつも仲良く溺死体さ。
  皇国の政府連中はハクの脳を徹底的に調べ、しばらく養生させるらしい。
  まぁ、あいつの事だ、養生なんて絶対してねぇだろうし、
  ギルドに行きゃ仕事中でもない限り会えるだろ。」

  「そ……そうですか……。」

 内心どきどきしていた。ハクに薄らと意識があった事に、驚きと、少しの喜びが沸き上がる。
 だが、自分が助けたと言えない苦しみが、その喜びを締め付けていた。

  「まぁ、国を捨てたって騒ぎ立てる政府連中や民衆もいたらしいが、
  ハクが処刑なんてなった日にゃあ自国がどうなるかくらい、馬鹿でも分かるだろうからな。
  それは心配ないだろ。……ってことで、シェリルの聞きたい事は聞けたか?質問とかある?」

 眠たそうに大欠伸をしたネスに、シェリルはひとつだけと言い、聞いた。

  「ギルドってアンデッドドラゴンを退治する為に作られたんですよね?
  具体的にはどういった物なんですか?」

 ネスはその質問に丁寧に答える。

  「簡単に言えば冒険者が集まる酒場だよ。
  アンデッド退治の依頼を受け、仕事をこなし、金を貰い、
  武具を揃える。力をつけ、最終的にはアンデッドドラゴンに挑むんだ。
  ハクは皇国『リムドア』ギルドのトップってわけだな。」

  「お金が貰えるんですか?」

  「あぁ、冒険者は命を賭けて戦う職業だからな。
  加入と同時に少し金を貰えて、後は働きに応じて相応の賃金を貰える。」

 ネスはそこまで話して、ハッとする。訝しげな表情を浮かべシェリルに忠告を施した。

  「冒険者になろう……なぁんて考えんなよ?」

  「えっ……何で分かったんですか?!」

 心底驚いた表情を見せるシェリルに、ネスは深い溜息を吐いた。

  「金が欲しいなら別のバイト紹介してやる。
  何ならしばらくここを拠点にすれば金もいらねぇだろ。
  冒険者なんて女がなるもんじゃねぇよ……女の死体になった様なんて見てらんねぇし、
  アンデッドになっちまったら……心苦し過ぎて戦い辛い。」

 そう言って緑茶を啜るネスに、シェリルは真っ向から反発する。

  「でも、ギルドにはハクさんがいるのでしょう?私は彼の力になりたい。
  ひ弱そうに見えるかもしれませんが、魔法には自信があります!回復魔法だって使えます!」

  「駄目だってば……女を絶対にギルドには入れさせてやれない。
  俺が口挟む事じゃねぇのかもしれねぇが、全力で阻止させてもらうぜ。」

  「……そうですか……」

 シェリルは悲しそうな顔を浮かべる。その表情にネスの心が激しく痛んだが、
 闇夜に放り出せばすぐに死ぬと分かるくらいか弱そうなシェリルを、
 ギルドという血生臭い場所に入れる事には抵抗があった。
 シェリルの悲しそうな顔から目を逸らし、かなくなに拒否を続ける。
 すると―――…


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*Comment

う、うわああああああっ 

『すると―――…』

て、筱さまぁあああああっΣ(´□` )ハゥ 生殺しリターンですかっ!!?(笑)

それにしても、シェリル、けなげで可愛いです(´∀`人)❤ ネスも本当にいい人で……どうしよう、ハクがちょっとフェードアウトしている隙に、ネス株がぎゅんぎゅん高騰中。雷帝さまぁ~~~❤

ネスとハクは友達(元友達?)――シェリルを挟んで再開するようなことがあったら、一体どうなるのか…も、妄想がひろがるぅ~(*ノωノ)キャー
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.10/25 19:54分 
  • [Edit]

おおおぁぁぉっ( ̄□ ̄;) 

「復讐心しか抱かない男が、女を幸せになんて出来るわけがねぇんだ」

筱さま、深い、深いですよ!!
こういう深い言葉を吐けるネスも捨て難くなってきましたよッ!!

しかし、ハクはただの「有名人」ではなく、ネスの「元仲良しさん」でしたか…(-_-;)
これまた何だか「きゃー!!」な展開になりそうな予感☆

ネスのもにょもにょ発言(笑)
やはり惚れたな、ネスよ……( ̄ー ̄)ニヤリッ

すると―― から気になって気になって……
筱さまの罠にまんまとハマっちゃってますよぅ(;つД`)
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/25 20:49分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

これ以上長くすると、果てしなくキリが悪くなってしまうので、
途中できっちゃいました(笑)

シェリルは素直ですねぇ……絶対騙されますって!
いつか!!確実に!!!
ネスは心底シェリルが心配なようですね。
ほんともう、ハクがいない隙にやりたい放題ですよ…。
このまま二人がくっつく~なんてなったらもう……お話終わっちゃうぅ…。

卯月様も妄想族ですね!
仲間ッ仲間ッ!!
私も、Battle Mermaidをぽちぽち書きながら、
あぁ……こうなったらどうしよう……とか妄想しとります(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/25 22:00分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

ネス、なかなかカッコいい事言ってくれるもんです…。
もうほんと、誰がヒーローなのか分かんなくなってきましたね(笑)

ネスとハクは友人でした♪
でも、ネスを失う事を恐れたハクが裏切っちゃいました!
余程心配だったのでしょうが、ネスは傷心気味です(´・ω・`)

もにょもにょ発言はほんともう、シェリルに聞こえてたら大変でしたよ…
ハクからネスに乗り換える~!なんてことはないかと思いますが、
女の心は変わり易いといいますしねぇ(*´д`*)ゥフフ…

むふふ……すると―――…の続きは……
大したことないです(笑)
話しが長引き過ぎちゃったので、ぶちぎっちゃいました(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/25 22:09分 
  • [Edit]

 

>…あんな男にゃ勿体ねぇくらいのいい女なのに…
ここ数話のネスの呟きがツボです♪
惚れましたねぇ~(*/∇\*)キャ

しかしネス…ハクとお友達だったのですね?
とすると、彼もそこそこの使い手だったりするのかな…なんて期待しちゃったり((((o゜▽゜)o))) ドキドキ
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.11/15 02:20分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
ネスは少しずつ少しずつシェリルに惹かれてます♪
呟きは毎回シェリルに届くことなく消えてますけどね(笑)
報われないヒーローって凄く好きです★

ネスとハクはお友達ですよ~!
悪友というか、なんというか(笑)
ネスは凄いですよ~!
戦いの腕はぴかいちです!
彼はとても苦労性な男なので、優しい目で見てやって下さい(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/15 20:23分 
  • [Edit]

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