冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 10

 そこまで語り終え、ネスはちらりとシェリルを見やる。
 シェリルは眠たそうな目を必死に開き、懸命にネスの話に聞き入っていた。
 ネスは苦笑を浮かべシェリルに聞く。

  「眠たいなら、明日でもいいぞ?」

 ネスの気遣いに、シェリルは急いで首を左右に振った。

  「大丈夫です、続けて下さい。」

  「そうか……眠たくなったら言えよ?」

  「はいっ」

 シェリルの頷きを確認し、ネスは数回深呼吸を繰り返し再び話し始めた。


   ―――…アンデッドドラゴンを召喚し、完全勝利を治めた魔国『ユグドラ』。
   国は勝利に歓喜し、お祭り騒ぎだった。

   だが、魔国『ユグドラ』を治める政府の上部は焦りに焦った。
   アンデッドドラゴンを召喚した上位魔法使いの大半が死んでしまい、
   送還が不可能となったからである。
   召喚と同じ程の魔力を必要とする送還は、残った上位魔法使いだけでは魔力不足。
   何度かアンデッドドラゴンを倒す作戦を試みたが、全て無に帰した。

   アンデッドドラゴンの力は、魔国『ユグドラ』だけではなく、皇国『リムドア』へも驚異だった。
   強靭な強さだけではない。アンデッドドラゴンの真なる力、それは……死者の復活。

   幾度となく繰り広げられた戦争で、死体に溢れた大地。
   アンデッドドラゴンにしてみれば、最高の大地に召喚されたと思うに違いない。
   腐りかけの死体に魂を詰め込み、自分の分身を作り上げる。
   皇国『リムドア』、魔国『ユグドラ』関係なくアンデッド達が雪崩込み、
   世界は死者の蔓延る闇と化した。

   皇国『リムドア』と魔国『ユグドラ』はこの不測の事態に対応すべく協定を結び、
   共にアンデッドドラゴンを倒すと誓い合う。

   先に行動を起こしたのは魔国『ユグドラ』。
   皇国『リムドア』に大量の食糧を送り、飢餓から救った。
   皇国『リムドア』も、その誠意に答え、幾つもの強力な軍隊や武器を用意し、
   アンデッドドラゴン討伐へ赴かせる。
   結果は惨敗……魔国『ユグドラ』の魔法使いと協力し挑むも、一人残らず死体となった。

   双方は醜い争いを恥じた。
   だが時既に遅く、アンデッドドラゴンどころか、アンデッド達にすら苦戦する日々。

   いよいよ自国の兵だけでは足りなくなった皇国『リムドア』と魔国『ユグドラ』は、
   国に冒険者ギルドを作り、腕に自信のある者達を集める。そして、こうお触れを出した。

    【 アンデッドドラゴンを討伐した者、
     皇国『リムドア』、魔国『ユグドラ』より報奨金1億Gと、
     願いを叶える権利を与える。 】


   双国の強者達は歓喜した。
   こぞって冒険者ギルドへ加盟し、アンデッドドラゴンの討伐へ赴く。

   そして結果は―――…


  「って……現状見りゃあ分かるよな……。全員仲良くアンデッドの仲間入りってやつさ。」

 残念無念と冗談交じりに言うネスを前に、シェリルは悲しそうな表情を浮かべていた。
 下手を打てば今すぐにも泣いてしまいそうである。
 ネスは慌てて言い訳じみた台詞を言う。

  「あっ……ま、まぁ……アンデッドドラゴンは強いし、仕方ねぇよ。
  それに、倒す方法が無いわけじゃねぇ……確か ―――… えっと……
  何だったか忘れたな……物凄く手に入り辛い物だった気がするが……
  その『ある物』を使えば倒せるらしいんだ。期待がゼロなわけじゃねぇさ。」

 にっかりと笑ったネスに、シェリルも不安そうな顔を拭い、優しく笑い返す。
 ネスもその笑顔に安堵したのか、言い訳じみた言葉をつぐみ、さて……と話を変える。

  「こんな話ばっかもつまんねぇな。
  ……なぁ、シェリルの惚れた男ってどんな奴だ?」

  「え?」

 突如変わった話にシェリルの脳はついて行けず、大きな目をきょとんとさせる。
 ネスは他意はないとばかりに焦って言った。

  「あ、いやっ、その……俺の知ってる奴だったら案内してやる事も出来るだろ?」

 ネスの心の広さと優しさに、シェリルは人間の温かさを感じる。

  (……何て親切で優しい人なんだろう……。
  父様は人間は恐ろしく、残虐で非道だと仰られていたけど……とんだ勘違いだわ。
  人魚にも色々いるから、人間も一概には優しいとは言えないんだろうけど、
  こんなにも優しい人がいる……それが分かっただけでも、人間になってよかったと思う……。)

 人間になれた事を心から喜び、ネスの優しい言葉に甘えた。

  「私が探しているのは、白銀の長髪を持つ、ハクという名の男性です。」

 きっぱりとそう言うと、今まさにお茶を口へ運び一口喉を通そうとしたネスは吹き出した。
 思い切り咳き込み、苦しそうにもがく。シェリルは慌ててネスの傍により、背中を擦った。

  「だっ、大丈夫ですか?!」

  「げほっがほっがほっ……けふっ……
  す……すまねぇ……あまりにも衝撃的な名前だったから……」

  「え……?」

 『衝撃的』の意味が分からず、首を傾げるシェリルに、ネスは何とも言い辛そうに顔をしかめ、
 それでも諭す様に言った。


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*Comment

ザ☆インパクト! 

おおーっ、我が雷帝様ことネスはハクを知っている様子!? ハク、もしかして、かなり有名!?

ともあれ~、ネスが語る皇国と魔国の争いの歴史には、かなり胸が踊りました~(´∀`人)❤
て、そんなのんきな状況ではないんですけども!
でもでも、国と国との戦いの壮大さって好きです。とくにファンタジーだとキュンキュンします☆
て、そんなのんきな状況ではないんですけども!(おちつくために二度言いました、笑)

ネスはどうしてハクを知っているのかっ、次回を待ちますっドキドキ(゚∀゚*)(*゚∀゚)ドキドキ
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.10/24 20:00分 
  • [Edit]

なんとッΣ(o゚ω゚oノ)ノ 

ネスはハクを知っているッ!?
というか、もしや別な意味での色んな人の人気者ッ!?

でもなるほど……
召喚するということは送還をしなければ返せない…
「おぉ~、なるほど」と思いながら読ませていただいておりました!!
(すみません、召喚とかのファンタジー小説って本格的に読んだの筱さまが初めてなんです……(/ω\)ハズカシーィ)
今でこそ、色々な方の小説を読ませて戴いているのですが、分からない事がまだまだたくさんあって…(;・∀・)

なので色んな事に「おぉ!!」と思っている私です(^^ゞ

しかし…やっぱりシェリルちゃんは素直で可愛いですねぇ(ノ´∀`*)
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/24 22:26分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

そうなのですよ~!
ネスはハクを知っているのです!なんてったって雷帝ですから!(ぇ?
ネスとハクの関係……次回明らかにッ!?

壮大な戦いは心躍りますよねぇ♪
NIHILISMもそうでしたが、私はどうにも事を大きくしたいようです(笑)
あちら側では神レベルの戦いでしたからね……。
今回はちょっと落ち着いた……かな……?
火花散り、金属音が響き、業火に燃える国々!!
はわわっ、ドキドキします!!(オチツケ…

ファンタジーは妄想の宝庫ですね。
さぁ、卯月様?一緒にあちらの世界に行きましょうか!!(ヤメロ
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/24 23:29分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

ハクは人気者……と言うより……いなきゃならない存在!ですね(笑)
ハクがいなかったら多分、あ~んなことや、こ~んなことになってます!(ぇ?

召喚と送還は、ゲームにあります
ファイナルファンタジーとサモンナイトの影響です(*・ω・*)
ファンタジー小説はその人の世界観が多く含まれる気がするので
慣れない人からすると読みづらかったりするのかもしれませんね!
んもう、分からない事があったらどんどん聞いてやって下さい!
いつでも答えますから!!

シェリルは素直ですね……。
いつか騙されてしまうんじゃないかと、気が気じゃないです(汗)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/24 23:38分 
  • [Edit]

 

(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」(」゜ロ゜)」オオオオオッッッ
アンデッド達は、アンデッドドラゴンが創り出していたのですねっ!?
しかも、何という悪循環(´;ェ;`)ウゥ・・・

ちなみに『あるもの』って何でしょう((o(б_б;)o))ドキドキ

ネスとシェリルのお話の続きも気になります♪
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.11/10 21:12分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

そうなのですよ……戦争の産物がふたつの国を一応和解させました。
そう考えると、凄く皮肉なもんですね(笑)
戦争でゴロゴロ転がる死者が、アンデッドドラゴンの駒になるんですから、
戦争なんて絶対にやっちゃ駄目ですね(´・ω・`)

『あるもの』は一章後半になれば出てくる!……はずです!
絶望の中での希望って大切ですよね!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/11 05:30分 
  • [Edit]

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