冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 08

 ネスはシェリルが落ち着いた頃を見計らい聞く。

  「シェリルは何であんな岩場に?」

  「あ、私は人―――…」

  「……人?」

 人魚で……。そう言いそうになって慌てて言葉をつぐんだ。
 魔女の言葉がシェリルの脳内を呪文の様に駆け巡る。

  ― 人魚だとばれれば、足下から腐っていくからね。 ―

 シェリルの体がぶるりと震える。
 その様子を見たネスは優しく微笑み、再びシェリルの頭をわしゃわしゃと撫で回した。

  「言いたくねぇ事もあるわな。いいよ、もう聞かねぇから。」

  「す……すみま……」

  「いいっていいって、女がそんな泣きそうな顔してんの、男としては見てられねぇしさ。
  あっ、それより、これ食うか?俺が今日取ってきた新鮮な魚なんだ!
  いい具合に焼けてるし、どうよ?腹減ってねぇ?」

 シェリルに気を遣わせまいと、満面の笑みを見せ、火に掛けていた魚を手に取る。
 こんがりと焦げ目が付き、いい匂いを漂わせる魚にシェリルのお腹が小さくなった。
 ネスは小さく笑い、魚を皿に乗せ箸と一緒にシェリルへと差し出す。

  「腹が減っては何とやら~ってやつだ。ほら、食いな。」

  「……お魚…………は……その……ちょっと……。」

  「は?」

 人魚であるシェリルからすれば、同族の焼けた姿にすら心が痛む。
 ネスは驚いた様な声を上げた後、小さな声で言った。

  「あ~……もしかして……魚とか肉とか駄目なタイプ……?
  ベジタリアンってやつか?……うー……わりぃ、今ここに野菜なんてねぇんだよなぁ……。
  ちょっと待ってな、何か買って―――…」

 申し訳なさそうなネスの顔に、シェリルはハッと目を見開き、大きく首を左右に振った。
 ネスの言葉を遮り、勢いよく言う。

  「いえっ!!何でもありません!!あっ……お……お魚大好きですから!」

 そう言うと、差し出されていた皿を手に取り、箸を使う事無く魚に食らい付いた。
 その光景を前に、ネスは慌てて止める。

  「ばっ!無理すんなって!!食えねぇなら何か買って来るから!!」

 ネスの言葉を無視し、目を思い切り瞑り魚の身を口の中で噛み砕く。
 ごくりと飲み込み、薄らと涙を浮かべ、ネスへと笑顔を向けた。

  「美味しいです!」

 言葉に偽りは無かった。確かに美味しいと思える味であったのだ。
 だが、同族を食らってしまったという一抹の思いだけがシェリルの瞳に涙を浮かべさせた。
 その綺麗な瞳が潤む様に、ネスの心が痛む。

  「……あのなぁ……無理すんなよ……。食えねぇなら食えねぇで、何か買って来るから……。」

  「いえ、本当に美味しかったです!それに、命を救って頂いただけでも有り難い事なのに、
  これ以上の贅沢は言えません。」

 シェリルはそう言うと、綺麗に焼かれた魚を箸を使い次々に口へと運んで行く。
 綺麗に骨と頭と尻尾だけを残し、シェリルはネスに言った。

  「御馳走様でした。」

  「……。」

 ネスは綺麗に平らげられた魚を見やり、視線を魚からシェリルへと移す。
 と、その瞬間、シェリルはふらつきながらも、ゆっくりと立ち上がった。
 何をするのかとネスは目を見開く。そんなネスを置き、シェリルは深々と一礼した。

  「夕飯まで御馳走して頂いたこと、感謝しています。
  こんなに優しい方と出会えたのは幸運です。本当に有難う御座いました。
  では、そろそろ御暇させていただきますね。」

  「はっ?!」

 驚くネスを置き、シェリルはふらつく足で玄関を目指す。
 ネスは慌ててシェリルの白く細い腕を取った。

  「ひゃっ?!」

 突然ごつい手に腕を掴まれ、シェリルの体が跳ね上がる。
 ネスも掴んだ腕が予想以上に細く、折れてしまうのではないかと慌てて手を離した。
 ネスは焦って言う。

  「すっ……すまねぇ!だけどよ、もう時間も時間だ……夜はアンデッドも変質者も徘徊してる。
  シェリルみたいな綺麗な子はどっちの餌食にもなり易い。
  今日は泊っていきな。どうしても泊れねぇなら、
  俺が目的地まで今から護衛すっから言ってくれ。
  あっ、寝るときゃシェリルに指一本触れねぇから、安心していい!!」

 顔を真っ赤にするネスにシェリルは小さく首を左右に振る。

  「そんな申し訳ない事……。アンデッドがいるなら、ネスさんも危険じゃないですか。
  私は一人でも平気ですので……」

 ネスを気遣いそう言ってはみたが、
 慣れない人間の足では歩く事はおろか、立っているのも危うい。
 それを見透かしたかの様に、ネスはやんわりと微笑む。

  「ばぁか、俺は女一人守れるくらいにはつえぇんだよ。
  何処か行きたい所でもあるのか?言ってみ、可能なら今からでも送り届けてやっからよ。」

 優しい声で言われ、シェリルは反応に困った。
 目的ははっきりとしている。一目惚れをした相手、ハクに会う事。
 だが、ハクという名前以外にシェリルは彼の事を何も知らなかったのだ。

  「あ……目的はあるんですけど……その……」

 しどろもどろになるシェリルを取り合えず元の場所に座らせ、
 もごもごと話す言葉を、ネスは優しい表情で聞いていた。


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*Comment

ネスも優しい(ノ´∀`*) 

>ごくりと飲み込み、薄らと涙を浮かべ、ネスへと笑顔を向けた。

ななな、なんてケナゲなのでしょうッッ・゚・(つД`)・゚・ ウワァァァン
苦手な魚も頑張って食べようとするその姿!!
可愛くてもうッ(*・ω・*)

そりゃあネスでなくとも、「まぁ、泊まっていきなよ」な~んて言っちゃいますよッd(-ω・。)

でもほんとに見つけたのがネスで良かった~……のかな…
いやハクのことを考えると…う~ん、難しい…
いやでも、悪い人に見つからなかっただけで、まずは良しとしましょう、うん♪

意外にこのままネスとくっついちゃった方が幸せかも…でもそうしたら、これで完結してしまうし(笑)
ハクは…優しいのかしら…(;・∀・)

う~ん、どうなるかもうドキドキですよッ!!
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/22 22:02分 
  • [Edit]

 

魚・・・

おいしいです(^q^)

お魚、今はさんまが旬ですよね。

っと、シュリルさんごめんなさい。

僕お魚大好きなんですw

ネスやさしいですね~。

かっこいいですよね。
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.10/22 23:56分 
  • [Edit]

 

 お魚はねwwww食べれるわけ、ないじゃんwwww


なんか、かわいかったですww癒されましたww
  • posted by そのちー 
  • URL 
  • 2009.10/23 00:09分 
  • [Edit]

ネースщ(゚ロ゚щ)! 

『雷帝』のイメージからなかなか抜け出せませんが(笑)
ネス、気さくないいひとで良かったーっ!
『女一人守れるくらいにはつえぇんだよ』という言葉に、どれほどの腕前なのか、いまからワクワク❤ やっぱり『壊滅雷帝』のイメージがあるので、それはすさまじいのではないかと思ったりして(いつまでひっぱる気だ、笑)
それにしても、このままだと、シェリルがネスにドキドキする展開になったりするのでしょうか!?
いや、でも本命のハクも控えているし…なんといっても銀髪だし…ともかくハクー! 早くやって来ないとヒロインとられちゃうよーっ;と、思ったり(笑)
  • posted by 卯月 朔 
  • URL 
  • 2009.10/23 16:31分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

ネスに遠慮するあまり、同族をも食う!!
気合いですね、気合い(*´д`*)
健気過ぎて、可哀想な感じになってます(笑)

ネスとくっついちゃったらここで終わ―――…げふっげふッ
ハクが登場するのが、もしかしたら二章からかもしれないとか、
ちょっとばらしてみる……。
いや、もしかしたら一章ギリギリかもしれないです……。

ネスとくっつけたら……多分、シェリルは一生大切にされるのでしょうね(笑)
かなり幸せかもしれません!
でも……人生上手くいかないってもんですよ★(ぉぃ?
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/23 20:38分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

お魚美味しいですよね~♪
でも、シェリルの前では言わない方がいいですよぉ~?
魔法で瞬殺されちゃうかもしれません!(゚д゚´)

ネスは私の中で、目指せフェミニストです(笑)
思う存分シェリルを甘やかしてもらいましょう(*´д`*)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/23 20:43分 
  • [Edit]

そのちー様へ 

いらっしゃいませ!

共食いですよ、共食い!
シェリルにしたら、初めて食べたんですよ!
美味しかったらしいです(*´д`)

可愛かっただなんて!
純粋さ故ですね(笑)有難う御座いますッ♪
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/23 20:48分 
  • [Edit]

卯月様へ 

いらっしゃいませ!

雷帝のイメージ……多分そのまま引きずっても大丈夫だと思います(笑)
ネスは力押し★なイメージで作った子なので、
彼の戦い方は豪快ですからね(*・ω・*)

ネスとシェリル、いい雰囲気ですよねぇ……。
このまま二人がくっついちゃったら、Battle Mermaid終了ですよ(笑)
そうならない為にも、懸命に引き剥がしてやりたいと思います★
やっぱ銀髪の登場がなければやってられませんよね!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/23 20:54分 
  • [Edit]

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