冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 05

 魔女の家は奇妙な小瓶や、奇妙な生物で溢れ返っていた。
 目玉がぎょっと飛び出した奇形の魚、何の薬なのか分からない真っ赤な血の様な液体、
 ぐつぐつと煮だつ黒くどろどろとした所々固形な奇妙な物。
 そして、耐えがたい程のにおい。

 シェリルは鼻をつまみ、どんどん進んで行く魔女の後を追う。
 鼻をつまむシェリルを見、魔女は小さく笑った。

  「ふへへへ……臭いかね?薬品のにおいだからねぇ……勘弁しておくれ。」

 魔女の言葉に、シェリルは何度も頷いた。
 案内されるがまま、魔女とシェリルは最奥の部屋へと到達する。
 魔女は部屋に置いてある大きな貝殻に座り、シェリルに言った。

  「さぁて、お嬢さん……今からあんたのその魚の足を、人間の足に変えてやるんだが……」

 シェリルは嬉しそうに魔女を見つめ、何度も頷く。
 そんなシェリルに、魔女は含んだ笑みを浮かべ言い放った。

  「代償に、その美しい声を貰いたい。」

  「……え……?」

 シェリルの動きが止まる。魔女はにっこりと笑顔を浮かべこれは仕方がない事なのだと告げた。

  「所詮世の中、物と物の交換で成り立つ。
  本当なら心臓を頂きたいが、誕生日らしいからのぉ?少し譲歩してやろうぞ。
  あんたの望むのは人間の足―――…なら声くらいはいいじゃろう?」

 魔女の言葉に、シェリルは真っ向から反発する。

  「駄目!」

  「ほう、何故?」

  「あの人と会話出来ない!お話したいの!!だから声は駄目ッ!!」

 軽く怒りを込めたその瞳は純粋であり、純粋が故に恐ろしくも感じた。
 魔女はしばし考え、シェリルを品定めするかの様に見回し、言う。

  「じゃあ、人間の足にはしてやれないねぇ?」

 シェリルはびくりと体を震わせた。

  「ぅ……やだ……人間になりたい……。」

  「ふむぅ……我が儘なお嬢さんだ……。……なら―――…そうだね、右目をおくれ。」

  「みぎ……め……?」

  「ああ、見たところあんたは物凄い魔力の持ち主だ。
  それこそ、人魚達の王、ガドット様と薄らとだが似た様な波長をしている。
  魔女は魔力の込められた品物には目が無くてねぇ?
  あんたの美しい声が駄目なら、その右目をおくれ。
  綺麗な海の色をした、青色の宝石の様な瞳……魔力のこもった右目をおくれ……。」

 にたりと笑った魔女の表情に恐怖を感じた。
 シェリルは自分が王の娘等とは一言も言っていない。
 だというのに、シェリルの魔力からガドットの存在を感じ取れる魔女は本物なのだと察せた。
 シェリルは魔女の提示した取引をよく考える。

  (右目かぁ……右目なら無くても左目であの人を見れるし、
  別に目玉ひとつ無くなっても、魔力が無くなるわけでもないし、問題ないかな……?
  でも何で私の魔力を欲しがるんだろう……。)

 ちらりと魔女を確認し、シェリルは聞く。

  「あの……何で私の魔力が欲しいんですか?」

  「ん~?いやぁ、色々と研究したい事があるんじゃよ。
  魔力の強い物を材料にすると、研究は成功しやすいんじゃ。それだけじゃよ。」

 にこりと微笑んだ魔女に、
 シェリルは不信感を抱きながらも魅力的ともとれる取引に、心が揺らいでいた。

  (どうしよう……この人を信じていいの……?やっぱりもう一度父様に交渉した方が……)

  「お嬢さん、見てごらん。この薬……。」

 悩むシェリルに、老婆は小さな小瓶を見せた。
 ピンク色の液体がゆらゆらと瓶の中で揺れている。

  「この薬を飲めば、みるみるうちに魚の足は人間の足へと変わる。
  私は魔女……プライドがあるから嘘は絶対に吐かんぞぉ?
  お嬢さんの右目ひとつで、この小瓶はお嬢さんの物じゃ。……さぁ、早く決めておくれ。」

 シェリルは目の前に差し出された小瓶を前に、胸の高鳴りを感じた。

  (これを飲めば……人間に……ハクさんに会える機会が……?
  会いたい……ハクさんにもう一度……人間になりたい……ッ!)

 大きく深呼吸を繰り返し、シェリルは魔女をしっかりと見つめて言った。

  「交換します。」

 魔女の口元が嬉しそうに吊り上がった。

  「そうかいそうかい、いやぁ、よく決断してくれたぁ。
  私は嬉しいよ……さぁ、お嬢さん、小瓶を受け取りな。」

  「あ……有難う御座います。」

 魔女に差し出された小瓶を受け取る。
 そして ―――…

  「んじゃあ、右目は頂くよ。」

  「!」

 老婆の右手がゆっくりとシェリルの右目へと近付く。
 シェリルは恐怖に腰を抜かし、その場に座り込んでしまった。

  「おやおや、大丈夫かぇ?……安心せぃ、しばらく疼くとは思うが……激痛は一瞬じゃからな。
  ああ、そうそう……言い忘れておったが、この薬の飲み、人間になった場合、
  お主が人魚だと知られてはならぬ。」

  「……え?」

 魔女の言葉に、シェリルは腰を抜かしたまま目を見開く。

  「知られれば、足下から体が腐ってゆくからのぉ……精々ばれぬ様、努めるんじゃなぁ。
  では、約束通り右目を頂くぞ……。」

  「ひっ……」

 小さな叫び声をあげた……その瞬間―――…

  グチャッ… 

  「!!!!!!!!」

 声にならない痛みがシェリルを襲った。
 自分の右目からは見事に目玉がくり取られ、魔女は嬉しそうに高らかな声を上げる。

  「やった……!魔力じゃ……ッ!魔力の源じゃ!!ふぁっ……ふぁっはははははっ!!」

 痛みと恐怖をひしひしと体に感じながら、
 シェリルは小瓶を握り締め、その場から一気に逃げ出した。
 魔女が自分を追って来るのではないかと、何度も後ろを確認するが、
 魔女が追って来る事は無かった―――…


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*Comment

うわぁっ!! 

痛い痛い痛いですよ~~!!
読んでる私まで痛いですようヽ(´Д`;)ノアゥア...

筱さま、描写、お上手すぎですって……(汗)

それに……それに……「知られれば、足下から体が腐ってゆく」なんてっ!!
なるほど、これが筱さまワールドの始まりですね(>_<)

続きを楽しみにまたお邪魔しますね~♪
…あぁ、…目が…←まだ言ってるしw
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/19 22:41分 
  • [Edit]

 

あぁあっ!!

目がっ!!

めがぁあああっ!!

byムスカ


ってかんじでございますねw

痛いです、正直。

自分の目がえぐりとられたような気分になって

うぉおおっ!?

って感じになりました。

では、続き待っております♪
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.10/19 23:46分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

うぉぉ……ふたつもコメント有難う御座います!_(._.)_

このシーンは書いてる私も痛かったです……。
あぁぁぁぁ…目……右目がぁぁぁぁっ!!!
って危うく叫んじゃうところでしたよ……。

シェリルは声と引き換えじゃなかったので、
どうにかして人魚とばらしてはいけない方法をと考えた結果、
足から腐る仕様に(*´д`*)
ばらしちゃったら面白くないですからね☆

シェリルには色々と苦労してもらおうと思います!(最低…
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/20 18:42分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

ムスカ!!ラ……ラピュタでしたっけ!?
あのおかっぱ頭の男ですよね!
大丈夫、あいつは右目もげてないですから★

このシーン、改めて見ても痛い痛い……。
作者って残酷な人ですよねぇ……(ぉぃ?
シェリルはこれからも色々と苦労していく子ですが、
生温かく見守っていてやって下さい(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/20 18:45分 
  • [Edit]

 

あぅわぅ( ┰_┰)

右目もがれるって…読んでて思わず.....Σヾ(;★ω☆)ノギャアアーー!!って叫ぶところでした><
相変わらず私はこういうのが苦手ですが、お話に必要な展開なのだから、仕方ない…(´;ェ;`)ウゥ・・・
【書く】立場から言うと、このような表現が出来るってすごいです!

シェリル…どうか最後には幸せになれますように…( ̄人 ̄)
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.10/28 23:29分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

うぉぉ……心優しきrum様に何と酷いシーンをお見せしてしまったことか……!
作者の首絞めてきますね!!(ぇ?

このシーン、自分で見ても痛いです(笑)
きっともがれたシェリルはもっと痛かったのでしょうね……。
はわゎ……痛い痛い痛い……。(オチツケ…

rum様の願い!ちゃんとシェリルに届けておきますねッ!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/29 19:38分 
  • [Edit]

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