冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 04

 シェリルは先程寝そべっていた岩場で悲嘆に暮れていた。
 目を真っ赤にして啜り泣き、先程の男へと思いを馳せる。

  (別に戦うわけじゃないのに……ただ、あの人を間近で見ていたいだけなのに……。
  苦しい……会いたいよ……声が聞きたい、瞳を見たい……一度でいいから……。)

 元より好奇心は強かった。
 人間に憧れを抱いた事もある、見知らぬ陸に上がりたいと思った事もある、
 海の中でも探検と称して色々な場所を見て回った。
 しかし、これ程までに強く惹かれたものは無かった。
 シェリルは一人の人間に恋い焦がれた。まさに、一目惚れである。
 だが、人間と人魚という種族の差は深く、
 シェリルはそれを理解しているが故、諦められなかった。

  (ハクさん……もう意識を取り戻してるのかな……?もう動いてるのかな……?)

 思えば思うほど恋い焦がれる気持ちは募り、心が強く締め付けられる。
 その度に収まっていた涙が溢れ出、シェリルはその涙を止める術を知らなかった。

  (もう一度……会いたい……。)

 シェリルは仰向けに寝転がり、海中から空を見上げる。
 先程見えていた船底はもう見えず、曇り空からは雨が止み、光が差し込んでいた。

  (……二度と会えないのかな……)

 晴れて行く空、暗かった海が青さを帯びる。
 と、その時、シェリルの目の前に、女の顔が現れた。

  「ひゃっ?!」

 体をびくりと反応させ、急いで起き上がり女と距離を取る。
 大きな目をぱちくりさせ、自分の顔を覗き込んだ女をまじまじと見やった。

 痩せ細ったその体、黒くボロボロのローブを纏い、
 灰色で肩につく程のぼさぼさの髪を持つ老女。黒々とした目は虚ろだった。
 足は自分と同じ魚の物。人魚である事は確実である。

  「え……っと……どなたでしょうか……?」

 シェリルは恐る恐る女に声を掛けた。
 女はにやりと気持ちの悪い笑みを浮かべ、シェリルに言った。

  「私は魔女だよ。あんたぁ……えらい暗ぁ~い顔しとるねぇ?
  そんな別嬪さんが……勿体ないねぇ?どうした、私に話してみんか?
  私に協力出来る事なら、一切惜しまんぞぉ?」

 嫌悪感を抱く声だった。

  「え……なんで……」

  「なんで?……ふぉっふぉっ……こんな可愛らしいお嬢さんが悩んでおるのに、
  手を差し伸べぬ奴がおるわけがないじゃろぉ?ほれ、話してみなされ。」

 今すぐこの場から逃げてしまいたい衝動に駆られはしたが、
 洞窟に帰ってもガドットと姉達が迎え入れるであろう事を考えると、
 しばらくこの魔女と名乗る老女に
 話を聞いてもらうのもありかもしれない等と考えてしまったのだ。

  「えっと……私―――…

 シェリルは怪しい老女だと分かりつつも、先程起こった出来事を全て話した。
 15歳の誕生日を迎えた事、人間の男を助けた事、その男に惚れてしまった事、
 父に人間になりたいと伝えた事、そしてそれを断られ、悲しみに打ちひしがれてしまった事……

 魔女はただシェリルの話を聞いていた。
 何度もシェリルの話に頷き、共感し、可哀想にと同情をする。
 次第にシェリルは、この魔女が自分の心を分かってくれている様な気になってきたのだった。

  ……以上が泣いていた理由です……。」

 シェリルがそう言うと、魔女はホロリと涙を零し、シェリルの頭をしわくちゃの手で撫でた。
 そして優しげな声でシェリルに言う。

  「厳しい父親だねぇ……こんな可愛い子の初恋を邪魔するなんて、邪道じゃな。
  よぉし、私があんたの願いを叶えてやろう。」

  「え……本当に?」

  「ああ、本当さ。私は魔女だよ?あんたを人間にしてやることぐらい容易い。
  私からの誕生日プレゼントみたいなもんじゃな。ほら、おいで、私の家へと案内しよう。」

 ひょろりと向きを変え、魔女は自分の家へと泳ぐ。
 ついて行っていいものか、シェリルは少しだけ思案したが、
 魔女に対する好奇心と、人間にしてもらえるかもしれないという期待が勝り、
 ゆっくと魔女の後を追って行った。


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*Comment

魔女登場ッ!! 

祝・魔女登場!……じゃなくて(笑)
待ってました、待ってましたよ~~♪

…いやでも一般に悪者な扱い?ですが、そういえば…と。
魔女ってただ単に【お願い】叶えただけですよね?
最後もちゃんとナイフ?作ってくれるし……

も、もしかして親切がアダになるタイプの人←?
って思っちゃいましたよ(笑)

筱さまワールドの魔女は一体どんな魔女なのか楽しみです♪

しかしシェリルちゃん。一目ぼれをするわ、魔女を信じて簡単について行っちゃうわで、本当に純粋なんだから~♪
きっと見た目も無茶苦茶可愛いんだろうなぁ(ノ´∀`*)

あぁ、見た目も中身も可愛い人魚さん♪いいですねぇ~♪♪
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/18 22:45分 
  • [Edit]

 

もしかしたら、この魔女ついていっちゃダメなタイプかもしれないのに、いっちゃったよぉ('A

筱さんが知っているかどうかはわかりませんが、シェリルっていう名前を聞くと、マクロスを連想しちゃって・・・。

魔女「さぁ、ついておいで」
シェリル「私の歌をきけぇぇええええええええええええ」
↑違う
  • posted by そのちー 
  • URL 
  • 2009.10/19 00:00分 
  • [Edit]

 

魔女・・・

なんとげにおそろしげなヤツがっ!!

シュリルちゃん危ないよっ!!

あ~んなことやこ~んなことされるかもしれないというのにっ!!

つづきまっております♪
  • posted by ネミエル 
  • URL 
  • 2009.10/19 00:14分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

魔女登場しちゃいました☆
でも……鷹の爪痕様のおっしゃられる通り、
魔女って何なのでしょうね……(笑)
本当に願いを叶えてる為だけなら、何だか可哀想過ぎますね(´・ω・`)
私の世界の魔女は……そりゃあもう……ねぇ☆(ぇ?

主人公は可愛くていい子ってのはセオリーですからね!
ほんともう、すぐ騙されてくれそうな女の子ですよ(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/19 19:09分 
  • [Edit]

そのちー様へ 

いらっしゃいませ!

ついて行っちゃダメなのに……ですよね!!
危機感はあるのですが、好奇心が勝る様です(笑)

マクロス……なんか聞いたことが……
何だか、そっちのシェリルは凄そうですね……(´゚д゚)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/19 19:17分 
  • [Edit]

ネミエル様へ 

いらっしゃいませ!

なんて無防備な人魚なのでしょうね(笑)
好奇心強すぎなのも問題がある様です(´・ω・`)

これが吉と出るのか凶と出るのか……
魔女のみぞ知る!ってやつですね!!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/19 19:26分 
  • [Edit]

 

つ、ついて行っちゃダメぇ~~~><
人間は「いけないと思う事程、興味を惹いてしまうもの」なのでしょうか…あ、人魚か(;^_^A アセアセ・・・

このような、【既にある、誰でも知っている物語】をアレンジするって、難しそうですね~^^;
どこまで忠実に再現するか、どこからオリジナリティーを出すか…例によって読むのがどんどん離されて行ってしまってますが、ファイトーー!( ゜ロ゜)乂(゜ロ゜ )執筆~!!(ぇ
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.10/27 21:56分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

やっちゃ駄目よ?って言われると、凄くやりたくなる現象ですね。
あれってなんででしょうね(´゚д゚)
シェリルはその現象に忠実に従う子の様です(笑)

→【既にある、誰でも知っている物語】をアレンジする

これは全然問題がありませんよ!
だってハチャメチャなんですもの☆
使えるとこは使え!使えないとこは切り捨てろ!!
的精神でやると、物凄く楽です(*´д`)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/27 22:25分 
  • [Edit]

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