冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 序章 04

 不利だと思われた戦況はあっという間に覆った。
 ハクの剣の腕前は皇国に仕える騎士クラスだと、船員達は褒め称える。
 だが、当の本人はその褒め言葉に全く興味を示さず、ただ迫るアンデッドを淡々と切り刻む。

 紺の剣は防御に。朱の剣は攻撃に。
 朱の剣で切り刻まれたアンデッドは、一太刀浴びたその瞬間、ものの無残に燃え上がり、
 復活する事無く叫び声を上げながら、灰となっていく。

  「兄ちゃん、すげぇじゃねぇか!さっきは侮っちまってすまなかったな!」

  「本当だな、見掛けで判断した事を謝ろう。すまない。
  ハク……と言ったか……?お前はまさか―――… 」

 口々に謝辞を述べる船員達、何かに気付いた船員は、ハクにその『何か』聞こうとしていたが、
 ハクは相変わらずの無表情でその言葉を遮る。

  「油断するな。まだ終わったわけじゃない。」

 ハクの言葉に船員達は身を引き締める。
 残り二体となったアンデッド。船内に近付こうとする一匹の背中をハクは容赦なく切り付けた。
 瞬時に切り口から炎が上がり、アンデッドの体を炎が包み込む。

  (よし、あと一匹……)

 呼吸を整え、船の先端を見やる。そしてそこには ―――…

  「?!」

 先程自分を呼びに来ようとしていた、がたいのよい船員がアンデッドに押され、
 あわや転落の危機であった。

 ハクは即座に先端まで走り、朱の剣をアンデッドへと向け振り下ろした。

  「なっ…!?」

 だが、アンデッドはひらりとハクの放った一閃を交わし、距離を取る。
 命の助かった、がたいのよい船員は肩で激しく呼吸しハクに言った。

  「あいつ……あいつは強いぞ!」

  「……分かった。お前は引いてろ。海に落ちても知らねぇぞ。」

 有無を言わせない程に冷たいハクの瞳に、
 船員はごくりと息を呑み、その場からゆっくりと移動する。
 仲間に温かく迎え入れられ、男の青褪めた表情は少しだけ色を取り戻した。

 辺りを包む静寂。
 甲板に打ち付ける雨は激しさを増し、ばちばちと音を立てる。
 響き渡る雷光と轟音、甲板に溢れる腐臭、全てがハクの癇に障っていた。

  「ああ~…いらつく。てめぇらのせいでのんびりした船旅が滅茶苦茶じゃねぇか。
  おまけにびしょ濡れだし……どう責任取ってくれんだよ……。」

 限りなく面倒くさそうな表情を浮かべるハクに対し、
 何も答えず、ただゆらゆらと揺れるアンデッド。
 まるで今から狙う獲物の品定めをしているかの様な、嫌悪感を感じる目でハクを見やる。

  「……お前さ、あの雑魚共とはちぃと違うな。
  俺とお前の実力差……分かってんじゃねぇの?
  だったら引きな。俺は即行で風呂に入りたいんだ。」

 左目は飛び出、ぎろりとした右目は一瞬たりともハクから離れない。
 ハクは朱の剣を構え、アンデッドに言い捨てる。

  「まぁ、口もグチャグチャみてぇだし、喋れねぇわな。
  引く気もねぇみてぇだし……一瞬で楽にしてやるよ。」

 腰を深く落としたその瞬間、アンデッドが脳に語り掛ける様な声を発した。

  『ハ……グ……。……ヤ……ミ……殺シ……ノ……ハ……グ……。』

 アンデッドの言葉に、ハクは喋れるのかと一瞬驚いた表情を浮かべたが、
 即座に怪訝そうな表情を作り、注意を促す様に言う。

  「……ハクだ、ハク。勝手に人の名前に濁点入れんなよ。」

 呆れた様に言うハクを前に、アンデッドは右目を細め、
 恐れとも使命感ともとれる叫び声を上げた。

  『ハグ……ッ!ハ……グ!!アンデッド……ノ……テ……ン敵!!』

  「!」

 アンデッドは叫び声を上げながら、ハクへ向かい裂けた口を向け、
 鋭く尖った爪を持つ手を振り上げた。ハクは高く跳び、攻撃を回避しようと試みる。
 だが―――…

  「なっ?!……離せ!」

 船員達の倒したはずの一匹が、胴体半分潰された状態で手を伸ばし、
 ハクの右足首を思い切り掴んでいた。

  『ハグ……死……死…………死死死シ死シシ……』

 ぐちゃりとした笑顔を浮かべるアンデッドを思い切り踏み付け、手から逃れる。
 だが、その時にはもう自分に襲い掛かるアンデッドは目の前まで迫っていた。

  (逃げられねぇ!)

 船員達の叫び声がスローで聞こえる。
 ハクは紺の剣と朱の剣を胸の前で交差させ、せめてものガードを取る。
 アンデッドは鋭い爪ごとハクの体を押し、己が身と共にハクを甲板から突き落とした。

  「ッ!!」

 大きな水しぶきを立て、ハクは叫び声を上げる事も出来ず、海に叩き落とされた。
 ハクの手を取ろうと延ばされた船員達の幾つもの手。
 だが、それを掴む暇なく海に落ちたハクは、最後の力を振り絞り、
 紺の剣をアンデッドの胸に差し込む。

  (はぁ……目的地に着く前に死んじまったか……情けねぇなぁ……。)

 ぴきぴきと音を立てて凍っていくアンデッドを見ながらハクはその身を海へと沈めた―――…


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*Comment

おぉっ(; ・`ω・´) 

>紺の剣は防御に。朱の剣は攻撃に。

か、か~っこいいですッ(≧∇≦)b
なるほど、そういう使い方の剣もあるのか、と(゚o゚)

……と思ったら、海へと落ちちゃいましたねッ!!
…ってことはですよッ!?

もしかしたら…もしかするのかしらッッ(*・ω・*)
続きを楽しみにまたお邪魔しに来ますね~~ッ(*゚ω゚)ゞ
  • posted by 鷹の爪痕 
  • URL 
  • 2009.10/14 21:27分 
  • [Edit]

 

こんばんはっ!Battle Mermaidここまで読ませて頂きましたっ!
筱様のファンタジーは相変わらず設定がしっかりしていて、壮大な感じがすごいですー!私はえせファンタジーしか書けないので、本格派ファンタジーの筱様を尊敬しますっ!
戦闘描写もお上手で見習いたいものです……まだ序盤で続きが楽しみですが、ハクが海に落ちたということは、次あたり人魚姫の登場でしょうかっ……!?
楽しみにまた続きも読みに来ます!
  • posted by 神田夏美 
  • URL 
  • 2009.10/14 23:35分 
  • [Edit]

鷹の爪痕様へ 

いらっしゃいませ!

やっと序章が終わりましたよ~!
今回は序章すらも長かったです……。

紺は氷なので、良い防御になってくれるとハクは言います(笑)
敵の攻撃がつるつる滑ったりする時もあるそうですよ!
朱の炎は便利です。
なんてったって、雨の日でも使える優れ物ですから☆
ですが、流石に海に落ちた時は鎮火した様です(笑)

さぁさぁ、いよいよ?やっと?登場かもしれません!
例のお・か・たがっ!!
主人公なのに序章でひと欠片も出てこないだなんて、
あまりにも可哀想な主人公ですが、やっと……やっと……
もしかするかと思われますので、生温かく見守ってやって下さい(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/15 06:08分 
  • [Edit]

神田様へ 

いらっしゃいませ!

壮大……それは毎回自分でも思います……。
壮大過ぎていつも、これ纏められるの?って考えてます……。
NIHILISMは色々と寄り道しましたが、
今回は全て道筋に沿っていこうと、
きっちり大切な箇所大切な箇所で道筋を立ててみました!
が、いつまで守られるか分かったもんではありません★(ぉぃ?!

何をおっしゃいますやら……。
神田様のS・M・L!-lotus-の戦闘シーン、世界観、
そして個性豊かなキャラクター達には感服いたしますよ!
いつもキャーキャーいいながら読ませていただいております(*´д`*)

いい具合にハクが海にドボンしてくれたので、
そう……次は…………やっと主人公が!!
第一章でようやく出てくる主人公に、切なさすら覚えますけども……。
こ……こんな可哀想な主人公を、生温かく見守ってやって下さい!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/15 06:28分 
  • [Edit]

 

読むのが遅いrumは、どんどん離されて行く一方ですが、なんとか序章を読み終えました^^;

ハク…落ちちゃいましたねぇ…(´;ェ;`)ウゥ・・・
けど、コメなどを読む限り…とうとう次のお話でっ!?Σ

(((o(^。^")o)))ワクワクしつつ、また伺いますねっ♪
  • posted by rum_bulion 
  • URL 
  • 2009.10/18 15:05分 
  • [Edit]

rum様へ 

いらっしゃいませ!

遅いだなんて!
むしろ、のんびり読んでやって下さい!

ハク落ちちゃいましたね☆
んもう、第二の主人公はしょっぱなから命の危機です(笑)
第一章からは、rum様の想像通りかと思われますよ!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.10/18 21:53分 
  • [Edit]

こんばんはー^^ 

やっとこさ時間ができましたのでずっと読みたかったこちらの小説を読ませていただきましたv
いやあ、やっぱり筱様のファンタジーは世界観がしっかししていてすごく読みやすいです! テンポよく進む戦闘シーンは読んでいて惚れぼれしてしまいました^^ ハクが華麗に戦っているところが簡単に想像できてこちらまで臨場感が味わえます。
それにしてもハクカッコいいですねー! 氷と炎の二刀流はすごく素敵な設定で、無敵な設定だと思います! どちらも強いエレメンタルだからハクは実は結構強いのではないかと予想していたり^^
さてさて、アンデッドに邪魔はされましたが期待の展開! ここからラブストーリーが動き出す予感がしてわくわくしています^^ シェリルちゃんに想いを馳せつつ、今日はこの辺で失礼しますー^^
  • posted by 朝倉 悠斗 
  • URL 
  • 2009.11/14 19:32分 
  • [Edit]

朝倉様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわっ!
おおおぉぉっ!!読んで頂けるとは……恐れ多いのと感謝でいっぱいです!

世界観ですかっ!!んもう、人魚姫ですけどね(笑)……最初だけ……。
戦闘シーン書くのが大好きなので、そう言って頂けると凄く嬉しいです!
ハクはイケメン担当ですよ★
色々と可哀想なことにもなりますが、一応今の所そういう事に!!
炎と氷を使う事で、無敵イメージにしてみました(笑)
ハクは強いんですよ~!何たって○○ですからね★

ラブストーリー始まっちゃいますよ~!
……色々と問題がありますけどね!

コメントありがとうございました!!_(._.)_
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.11/14 22:35分 
  • [Edit]

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