冬鳥の詩

+ 夢と妄想で綴るお話 …

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Battle Mermaid 16

 ネスとハクは荒れ果てた山道をひたすらに登っていた。
 荷物を持つハクはネスの後ろを歩く。
 ネスはシェリルを抱き、軽々と山道を越えて行った。
 そんな様子に、ハクが呆れた様に言う。

  「……お前、本当に足腰つえぇんだな……こんな歩きにくい山道をよくもまぁ軽々と……」

  「あはは、元は山育ちだからな。こういう地形には慣れてる。
  それに、荷物と違ってシェリルは軽いからな。」

 にんまりと笑って意地悪に言うネスに、ハクは不服そうな声を出した。

  「なら、少しくらいこっちの荷物を持ってくれる程度の優しさは見せたらどうだ?」

  「嫌なこった。あぁ……なんならお前がシェリル持つか?」

  「はぁ?何で俺が持たなきゃなんねぇんだよ。」

  「あっそ。ならいいや。近道を選んだのが俺だったから、
  歩きにくくて重たい物持つのもそろそろきついんじゃねぇかと思って
  替わってやろうとしてた俺はお節介だったってわけだな。」

  「……。」

 ネスの説明的な口調に、ハクの言葉が止まる。
 ネスは不機嫌そうなハクの顔を確認し、にやりと笑って最後のチャンスを与えた。

  「どうする?」

  「………………替わる……。」

 少し間を置き、苦々しい顔で一言だけ返した。
 ネスは勝ったとばかりの表情を浮かべ、荷物とシェリルを交換する。
 交換し終えたネスはハクに笑顔で言った。

  「シェリルが起きたら、また荷物持ちな。」

  「マジかよ……。」

 荷物と違い、軽く、持ちやすいシェリルをハクは軽々と抱きかかえる。
 余程荷物持ちが嫌だったのか、シェリル起こさない様に努めた。
 ネスは気持ち良さそうに眠るシェリルに微笑を向ける。

  (起きた時は、俺よりハクの腕の中の方がいいだろうしな。
  ……はぁ、俺ってばお人よし……。)

 自分で思った言葉に自嘲の笑みを浮かべ、ネスはハクの持っていた荷物を軽々と背負う。

  (まぁ、いっか。って、荷物重ッ!!!)

 軽々抱えてはみたが、実際の重さに少しだけげんなりとした表情を浮かべ、
 小さく溜息を吐いて言った。

  「行くぞ?」

  「あぁ。」

 ハクはネスの言葉に頷き、シェリルを起こさない様、ゆっくりと険しい山道を登り始めた。




 日も暮れ、徐々に闇が迫る頃、シェリルは寒さと振動で目を覚ました。

  「ん……」

 ぼんやりとする目を擦り、視界をクリアにしていく。
 一番始めに目に入ったのは、愛しい人の焦った表情だった。

  「ハ…………ク……?」

 小さな声を発したシェリルに、ハクも小さな声で返す。

  「起きるな。寝てろ。」

  「え……?」

  「荷物持ちは嫌なんだよ。いいから黙って寝たふりしてろ。」

 わけのわからないハクの指示に従い、シェリルはゆっくりと目を閉じる。
 と、その時、前方を歩いていたネスが振り返り、ハクに言った。

  「どうした?何か言ったか?」

 その言葉に、ハクは全力で首を左右に振る。

  「何でもねぇよ。ほら、行くぞ。もうすぐ日もくれる……腹減って仕方ねぇんだ。」

  「……はぃはぃ。」

 つっけんどんに言うハクに背を向け、ネスは心の中で楽しそうに笑った。

  (分かりやす過ぎだ馬鹿……。シェリル起きたのもろばれだっつの。
  ……そんなに荷物持ち嫌だったのか?)

 笑いを堪え様にも、ハクの態度が可笑しく、小さく肩が震える。
 それに気付いたハクは、訝しげな表情を作った。

  「何笑ってんだよ……。」

  「いやぁ?別にぃ?ただ、シェリルにおはようって言いたいなと思っただけだよ。」

  「!……ちっ……気付いてやがったか……。」

 ネスとハクの会話の意味が分からず、シェリルはハクの言い付けを守り、
 ひたすら目をつむっていた。ハクはそんなシェリルに言う。

  「もう目ぇ開けていいぞ。ほら、お前も歩け。」

  「あっ、はい!」

 シェリルは再び目を開き、ハクの腕から降りる。
 その刹那、シェリルの体がふわりと浮き、ネスの腕の中に収まった。

  「ふぇ……?」

 予期せぬ出来事に、シェリルぽかんと口を開ける。
 確かに大地へ着いたはずの足は、今は宙に浮いていた。

  「ほら、荷物。」

 シェリルをしっかりと抱え、ネスは持っていた荷物をハクへと押し付ける。
 ハクは納得がいかないのか、ネスに言った。

  「お前も持てよ。そいつ、起きたんだから歩かせりゃいいだろ?」

 その言葉に、ネスは深い溜息を吐く。

  「お前……そんなんじゃ、女にモテないぞ……?」

  「別にモテたいとも思わねぇけど……。
  大体、そいつに荷物持たせろだなんて言ってねぇんだ。自分で歩けって―――…」

  「こんな山道歩かせられるかよ。日も暮れて視界も悪い。
  下手したら足滑らせて落ちちまうかもしれねぇだろ?」

  「お前はその女を甘やかし過ぎなんだよ。」

  「お前はシェリルに厳し過ぎるんだ。」

  「あ……あの……?」

 自分が原因で険悪な雰囲気になっている事を悟ったシェリルは、
 この状況を打開すべく、言葉を紡ぐ。

  「私、歩くよ。荷物も持つから、喧嘩しないで……?
  ハクとネスがいっぱい寝させてくれたから、凄く元気なのッ!」

 満面の笑みを二人に向け、進んでネスの腕から降りる。
 そして、ハクに差し出したはずの荷物を取ろうとシェリルが手を伸ばす。
 が、その手はハクとネスに遮られた。

  「ふぇ……?」

  「シェリルが荷物なんて持つ必要ねぇよ。
  結構重たいし、男が二人もいて、女に荷物持たせるなんざ、邪道だ。
  シェリルは怪我しない様、注意して歩いてくれりゃいいさ。」

  「どうしても持ちてぇなら止めやしねぇが、無駄に体力減らされて翌朝寝坊は困る。
  大体、てめぇが荷物なんざ持ったら、歩行スピードが遅くなるだろうが。
  ただでさえ遅そうなんだから、気合い入れて歩け。」

  「は、はい……。」

 優しい言葉と、優しいのか侮辱されているのかよく分からない言葉に、
 シェリルはたじたじになりながらもコクリと頷く。
 ハクとネスは荷物を半分ずつ持ち、ネスはシェリルの手を取り険しい山道を登って行った―――…


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*Comment

NoTitle 

シェリルちゃんの幸せ者~★
ハクはちゃっかり抱っこしちゃってるじゃないですか~

似たような言葉のはずなのに、
デレデレとツンデレの違いがここにっ!!
三人が可愛くて仕方ないのは、このやり取りのせいですね!!!
  • posted by 燈 青架 
  • URL 
  • 2009.12/19 19:08分 
  • [Edit]

NoTitle 

 ヾ(* ̄ ̄ ̄ ̄▽ ̄ ̄ ̄ ̄*)ノこんばんわ♪
 w( ̄o ̄)w オオー!テンプレ変わりましたね♪
 ハク、素直じゃないなぁ…それが何ともしおないんですけど。もしかしたら、シェリルにはまんざらではないかも知れませんね。
 ハクの抱っこは『お姫様抱っこ』かなぁ(*^o^*)ドキドキ(*゜O゜*)バクバク
  • posted by 蘭陵邑 
  • URL 
  • 2009.12/20 22:30分 
  • [Edit]

燈様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
シェリルは幸せ者ですねぇ……
ハクが捨てればネスが必ず拾ってくれますでしょうし(笑)
ハクは余程荷物が重かったんでしょうね!
こんなくっそ重いもん持つならシェリルを持つ!って感じでしょうか(*´д`)

言ってる事は一緒なはずなのに、性格の違いが如実に表れました(笑)
デレデレとツンデレの境でおろおろしてるシェリルが私は一番好きです(*・ω・*)

これからも三人のやりとりを生温かく見守っててやって下さい!
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/21 18:54分 
  • [Edit]

蘭陵邑様へ 

いらっしゃいませ!

こんばんわッ!
目に優しい黒にしてみました(笑)
歳をとると白い背景が目にくるのです……(´゚д゚)

ハクは素直じゃないですよ~!
何をやるにしても、っち……仕方ねぇな……っていうタイプの人間です!
ツンデレのデレ部分が最近ようやっと出てきだしたので、
書いていてとても楽しいです(*´ω`)

お姫様だっこいいですねぇ♪
二つ折りで肩にかけるように抱こうものなら、
ネスから即効でぶん殴られるでしょうし……。
殴られない程度の持ち方はしてるはずです(笑)
  • posted by 筱 
  • URL 
  • 2009.12/21 19:01分 
  • [Edit]

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